吸虫による寄生虫感染症の原因となる代表的な12種類の吸虫の種類とは?④ウェステルマンなどの肺吸虫とその他の腸管吸虫
このシリーズの初回と前回の記事では、横川吸虫、肝吸虫、肝蛭(かんてつ)、そして、日本住血吸虫、ビルハルツ住血吸虫、マンソン住血吸虫、メコン住血吸虫、インターカラーツム住血吸虫といった
吸虫によって引き起こされることになる寄生虫感染症の原因となる代表的な吸虫の種類について順番に取り上げてきましたが、
今回の記事では、それに引き続き、
残りのウェステルマン肺吸虫や宮崎肺吸虫といった肺吸虫に分類される代表的な吸虫の種族や、肥大吸虫や異形吸虫といったその他の腸管吸虫の代表的な種類についても、
それぞれの病原体の具体的な特徴や、寄生虫の感染経路、引き起こされる感染症の具体的な症状のあり方といった点について一通り考察していきたいと思います。
ウェステルマン肺吸虫
まず、はじめに挙げたウェステルマン肺吸虫とは、体長7~16ミリメートルほどの大きさの卵円形の形状をした吸虫であり、
中間宿主であるサワガニやモクズガニ、あるいは、待機宿主にあたるイノシシやシカ肉の生食などによって感染を広げていくことになると考えられることになります。
そして、
ウェステルマン肺吸虫症においては、食道から胃を通過して小腸へと移動した吸虫が、腹壁を食い破っていく形で、横隔膜から胸腔内へと侵入し、肺を中心に寄生を広げていくことによって、
咳や胸痛、暗褐色の血痰などを特徴とする呼吸器系を中心とする症状が引き起こしていくことになると考えられることになります。
宮崎肺吸虫
そして、その次に挙げた宮崎肺吸虫とは、体長7~8ミリメートルほどの大きさの卵円形の形状をした、前述したウェステルマン肺吸虫よりもやや小型の吸虫であり、
主に、中間宿主であるサワガニの生食を介して感染を広げていくことになると考えられることになります。
そして、
宮崎肺吸虫症においては、前述したウェステルマン肺吸虫の場合と同様に、吸虫が肺を中心に寄生を広げていくことによって、
咳や胸痛といった呼吸器系を中心とする症状が引き起こされていくことになると考えられることになるのですが、
こうした宮崎肺吸虫と呼ばれる寄生虫の種族は、肺の内部において吸虫が成虫の段階にまで成長することはほとんどないと考えられていて、肺の内部を幼虫が移動していくことによって、気胸や胸水の貯留といった症状が引き起こされることはあるものの、
血痰などの症状が現れることはほとんどないといった点に、ウェステルマン肺吸虫症との具体的な症状の違いを見いだしていくことになると考えられることになるのです。
肥大吸虫
また、その次に挙げた肥大吸虫とは、体長20~75ミリメートルほどの大きさにまで達することのある舌状の形状をした吸虫類において最大の大きさを誇る大型の吸虫の種族であり、
主に、東南アジアや中国などにおいて、水場や湿地などに生息する菱の実や蓮の根などの水生植物に付着していた吸虫を経口摂取してしまうことによって感染するケースがあると考えられることになります。
そして、
肥大吸虫症においては、口から体内へと侵入した吸虫が小腸に寄生して増殖していくことによって、
腹痛や下痢といった消化器系を中心とする症状が引き起こしていくことになると考えられ、
重症化したケースにおいては、腸管内で増殖した吸虫によって小腸の消化吸収作用が大きく妨げられることによって栄養不良へと陥る場合や、腸閉塞といった症状が引き起こされる場合もあると考えられることになります。
異形吸虫
そして、それに対して、最後に挙げた異形吸虫とは、体長1~2ミリメートルほどの洋ナシ形の形状をした小型の吸虫の種族であり、
ナイル川流域などのエジプトを中心とするアフリカや中東などの地域において、中間宿主にあたるタテマキガイやボラといった貝類や魚類の摂食を介して感染するケースがあると考えられることになります。
そして、
異形吸虫症においては、口から体内へと侵入して小腸に寄生した小型の吸虫が、さらに、小腸の粘膜の深部へと潜り込んでいくことによって、
小腸内の寄生虫性の慢性的な炎症に起因する腹痛や下痢、さらには、腸管内におけるびらんや潰瘍の形成といった消化器系を中心とする症状が引き起こされていくことになると考えられることになるのです。
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