吸虫とは何か?扁形動物に分類される心臓も血管もない単純な構造をした「ジストマ」や「二口虫」とも呼ばれる平たい生物
このシリーズの前回までの一連の記事では、原虫と呼ばれる単細胞性の原始的な構造をした寄生虫の種族について取り上げてきましたが、
今回の記事では、それに引き続いて、
吸虫と呼ばれる多細胞性の寄生虫の種族においてみられる生物学的な観点からみた具体的な特徴について詳しく取り上げていきたいと思います。
扁形動物に分類される心臓も血管もない単純な構造をした平たい生物
そもそも、
吸虫と呼ばれる寄生虫の種族は、前回までの記事で取り上げてきた原虫といった単細胞性の寄生虫とは異なり、多細胞性の扁形動物の一種として分類されることになるのですが、
こうした扁形動物(へんけいどうぶつ)という言葉に含まれている「扁」という漢字は、
例えば、土踏まずがほとんど見られないような平たい足の裏の形のことを指して「扁平足」(へんぺいそく)といった表現が用いられることがあるように、
基本的には、「薄く平たい形」あるいは「小さくて平たい姿」などのことを意味する漢字であると考えられ、
こうした扁形動物という言葉は、その名の通り、多細胞性の動物の中でも、平たい形をした非常に単純な構造をした生物の種族が分類されることになると考えられることになります。
そして、
扁形動物と呼ばれる生物の種族には、心臓や血管といった循環器系の構造も存在しなければ、肺やえらといった呼吸器系の構造も一切存在せず、
そうした扁形動物に分類されているほとんどの生物は、他のより複雑な構造を持った動物の体内に寄生したうえで、そうした別の生物の体内において自らのもとに自然に運ばれてくる栄養分に依存する形で自らの生命を維持していると考えられることになるのです。
吸虫が別名では「ジストマ」や「二口虫」とも呼ばれる理由とは?
そして、
こうした扁形動物に分類される生物の種族の中でも、吸虫(きゅうちゅう)と呼ばれる生物の種族は、魚類、鳥類、両生類、爬虫類そして人間を含む哺乳類といった様々な種類の脊椎動物の体内に寄生することによって自らの生命を維持していると考えられていて、
こうした吸虫と呼ばれる寄生虫の種族は、通常の場合、体の前端にあたる口の部分と腹部に吸盤をもっていて、
こうした口吸盤と腹吸盤と呼ばれる二つの吸盤を使って宿主となる生物の体内の特定の部位に吸着することによって、安定的な寄生生活を営んでいるため、
こうした生物の種族のことを指して、「吸虫」という言葉が用いられるようになったと考えられることになります。
ちなみに、
かつては、こうした吸虫と呼ばれる寄生虫の種族は、ジストマ、あるいは、二口虫という呼び名でも呼ばれていたのですが、
こうした「ジストマ」(Distoma)という言葉は、ギリシア語において「2」を意味する数詞であるdi(ジ)と、「口」(くち)のことを意味するstoma(ストマ)という言葉が結びついてできた言葉であり、
かつては、こうした吸虫と呼ばれる寄生虫の種族についている二つの吸盤の形が両方とも口のような形に見えたために、
こうしたジストマ(Distoma)や二口虫(にこうちゅう)といった呼び名が用いられていたと考えられることになるのですが、
前述したように、
現在では、こうした吸虫の口と腹の部分にある二つの口のような形をした構造は、実際には吸盤であることが分かってきたため、
こうしたジストマや二口虫といった呼び名は徐々に使われなくなっていったと考えられることになるのです。
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次回記事:吸虫による寄生虫感染症の原因となる代表的な12種類の吸虫の種類とは?①横川吸虫と肝吸虫と肝蛭の具体的な特徴
このシリーズの初回記事:原虫が原因となる12の代表的な感染症の種類とは?①マラリア原虫やクリプトスポリジウム、トキソプラズマの具体的な特徴
前回記事:カリニ肺炎の病原体が原虫ではなく真菌に分類し直された具体的な理由とは?
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