原虫が原因となる12の代表的な感染症の種類とは?③その他の原虫感染症の具体的な特徴
前々回と前回の記事では、マラリア、クリプトスポリジウム症、トキソプラズマ症、そして、アメーバ赤痢、トリコモナス症、リーシュマニア症といった代表的な原虫感染症の種類について順番に取り上げてきましたが、
今回の記事では、それに引き続き、
残りのトリパノソーマ症、サイクロスポラ症、ジアルジア症、サルコシスチス症、バベシア症、コクシジウム症と呼ばれるそのほかの原虫感染症の具体的な特徴についても一通り考察していきたいと思います。
トリパノソーマ症
まず、はじめに挙げたトリパノソーマ症は、トリパノソーマ(Trypanosoma)と呼ばれる直径10~70マイクロメートルほどの大きさの縮れた葉っぱのような柳葉状の形状をした原虫の一種によって引き起こされる感染症の総称であり、
こうしたトリパノソーマ症に含まれる原虫感染症のなかでも特に有名なものとしては、アフリカ睡眠病とよばれる感染症の種類が挙げられることになります。
そして、
こうしたアフリカ睡眠病とよばれる感染症においては、病原体となるトリパノソーマがツェツェバエと呼ばれるハエの一種を介して感染を広げていくことになり、
皮膚から人間の体内へと注入されたトリパノソーマは、はじめはリンパ節などにおいて感染を広げていくことによって頭痛や関節痛、発熱といった症状を引き起こしていくことになるのですが、
その後、こうしたトリパノソーマと呼ばれる原虫が人体の中枢神経系へと侵入していくことによって、神経痛や一時的な錯乱といった神経症状が現れることになり、
さらに病状が進行していくと、患者の睡眠周期が乱れることによって昼夜の逆転や夜間の不眠といった睡眠障害が現れたのち、昏睡状態へと陥ることによって死へと至ることになるため、
こうしたアフリカ睡眠病と呼ばれる名称がつけられることになったと考えられることになるのです。
サイクロスポラ症
そして、その次に挙げたサイクロスポラ症は、サイクロスポラ(Cyclospora)と呼ばれる直径8~15マイクロメートルほどの大きさの球形の形をした原虫の一種によって引き起こされる感染症であり、
こうしたサイクロスポラと呼ばれる原虫は、汚染された水や食品などを介して感染を広げていくことになると考えられることになります。
そして、
サイクロスポラ症においては、こうしたサイクロスポラと呼ばれる原虫が、人間の小腸を中心とする消化器官に寄生して増殖していくことによって、
1週間ほどの潜伏期間をおいたのちに、下痢や腹部不快感、軽度の発熱、体重減少といった消化器系を中心とする症状を引き起こされることになると考えられることになります。
ジアルジア症
また、その次に挙げたジアルジア症は、ランブル鞭毛虫あるいはジアルジア・ランブリア(Giardia lamblia)と呼ばれる直径10~15マイクロメートルほどの大きさの洋梨型をした原虫の一種によって引き起こされる感染症であり、
こうしたランブル鞭毛虫と呼ばれる原虫は、汚染された水や食品のなかでも特に生水や生野菜、生ジュースなどなどを介して感染を広げていくことになると考えられることになります。
そして、
ジアルジア症においては、こうしたランブル鞭毛虫と呼ばれる原虫が、小腸や十二指腸を中心とする消化器官に寄生して増殖していくことによって、
7~10日ほどの潜伏期間をおいて、下痢や腹部の痙攣などを特徴とする胃腸炎の症状などが引き起こされていくことになると考えられることになります。
サルコシスチス症
そして、その次のサルコシスチス症は、サルコシスチス(Sarcocystis)と呼ばれる直径10~15マイクロメートルほどの大きさの楕円形または三日月型の形状をした原虫の一種によって引き起こされる感染症であり、
こうしたサルコシスチスと呼ばれる原虫は、人間に対しては、主に、加熱処理や冷凍処理が不十分な馬肉などを介して感染が広がることになると考えられることになります。
そして、
サルコシスチス症においては、こうしたサルコシスチスと呼ばれる原虫が、腸管の上皮細胞に寄生して増殖していくことによって、
食後数時間たってから一過性の下痢やおう吐や腹痛といった消化器の症状が引き起こされることになると考えられることになります。
バベシア症
また、その次のバベシア症は、バベシア(Babesia)と呼ばれる直径2~5マイクロメートルほどの大きさの洋梨型または卵型の形状をした原虫の一種によって引き起こされる感染症であり、
こうしたバベシアと呼ばれる原虫は、マダニなどのダニの一種を介して感染を広げていくことによって、人間の赤血球の内部に寄生して、頭痛や発熱や疲労感といった症状や、溶血性貧血といった症状を引き起こしていくことになると考えられることになります。
コクシジウム症
そして、最後に挙げたコクシジウム症の病原体のことを意味するコクシジウム(Coccidia)という言葉は、直径2~20マイクロメートルほどの大きさの楕円形などの形状をした数十種類にもおよぶ原虫の総称として用いられている言葉であり、
こうしたコクシジウムと呼ばれる原虫の種族は、人間や豚や牛、犬や猫といった様々な動物の消化管の内部に寄生して腸の粘膜細胞を破壊していくことによって、下痢や嘔吐、さらには、食欲不振や脱水症状といった症状を引き起こしていくことになると考えられることになります。
また、
こうしたコクシジウム症と呼ばれる原虫感染症の代表的な種類としては、ペットの犬などに感染する犬コクシジウム症などが挙げられることになるのですが、
犬に対して感染するコクシジウムの種族と、人間に対して感染するコクシジウムの種族は、同じコクシジウムに分類される原虫であっても、互いに系統が大きく異なっているため、
通常の場合、そうした犬や猫などに寄生しているコクシジウムが、人間に対して感染することはないと考えられることになるのです。
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次回記事:原虫と真菌の違いとは?人体に寄生する単細胞性の真核生物としての共通点と両者の具体的な特徴の違い
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