食中毒の原因となる代表的な五つの病原菌の種類と具体的な症状の特徴とは?②病原性大腸菌とサルモネラ菌とブドウ球菌
前回の記事で書いたように、細菌性食中毒の原因となる主要な病原菌の種類としては、患者数が多い順に、カンピロバクターとウェルシュ菌という細菌の種類が挙げられることになるのですが、
それに次いで多くの食中毒患者を生み出している病原菌の種類としては、以下で述べていくように、順番に、病原性大腸菌とサルモネラ菌そしてブドウ球菌といった細菌の種類が挙げられることになります。
病原性大腸菌によって引き起こされる食中毒の特徴と細菌の具体的な性質
まず、前回の記事で取り上げた
カンピロバクターとウェルシュ菌と呼ばれる食中毒の二大病原菌に次いで感染患者数が多い食中毒の病原菌の種類としては、病原性大腸菌が挙げられることになり、
こうした病原性大腸菌と呼ばれる細菌の種類は、細菌学的には、腸管病原性大腸菌、腸管侵入性大腸菌、毒素原性大腸菌、腸管出血性大腸菌、腸管凝集性大腸菌と呼ばれる五つの細菌の種族へとさらに細かく分類されていくことになるのですが、
日本国内において発生する細菌性食中毒のおよそ18%がこうした病原性大腸菌として総称されることになる細菌群によって引き起こされていると考えられることになります。
そして、
こうした病原性大腸菌は、人間や家畜の腸内などにおいて保菌されていることがあり、そうした様々な動物の排泄物などによって食品が直接汚染される場合や、手や指などを介した二次汚染によって感染が広がるケースなどもあり、
具体的には、牛肉やサラダ、漬物さらには井戸水といった様々な食品や飲料水などを介した食中毒の発生が確認されています。
また、
こうした病原性大腸菌が原因となる食中毒の具体的な症状の特徴は、
詳しくは、上述した病原性大腸菌における五つの細菌の種族の違いに応じて大きく異なってくることになるのですが、
それでも、
こうした病原性大腸菌と呼ばれる細菌群全体に共通するおおよその症状の目安について言及していくとすると、
潜伏期間は短い場合は12時間程度から長い場合には8日程度にまでおよぶこともあり、
主症状としては腹痛と下痢と発熱などの症状が挙げられるほか、吐き気や頭痛といった症状も見られることがあり、
特に、発熱については、38℃から40℃といった高熱を伴うケースが多いといった点が特徴として挙げられるほか、
腸管出血性大腸菌による食中毒の場合には、発症から24~48時間ほど経つと、下痢の症状が悪化して血便あるいは血性下痢と呼ばれる比較的大量の出血を伴う下痢の症状が見られるケースや、
血管中に流れ込んだ毒素によって赤血球が破壊されることによって溶血性貧血や血小板の減少あるいは急性腎不全といったより重篤な全身症状へと進展してしまうケースもあると考えられることになるのです。
サルモネラ菌によって引き起こされる食中毒の特徴と細菌の具体的な性質
そして、
その次に挙げたサルモネラ菌は、鶏や豚や牛といった動物の腸内に常在するほか、川や下水といった自然界にも広く分布している桿菌(かんきん、細長い棒状の細菌)の一種であり、
日本国内において発生する細菌性食中毒のやはりおよそ18%程度がこうしたサルモネラ菌を病原菌とする食中毒であると考えられることになります。
そして、
こうしたサルモネラ菌と呼ばれる細菌は、前回取り上げたウェルシュ菌などとは違って芽胞(がほう)と呼ばれる高い耐熱性を備えた構造体を形成することがないため、比較的熱に弱い性質があり、75℃以上の温度で1分程度といった通常の加熱調理などによって十分に死滅させることができると考えられることになるのですが、
肉や卵といった感染源となる食材に対して加熱処理が十分でなかった場合や、そうしたサルモネラ菌に汚染されている食材に触れた手や指あるいは調理器具などからの二次汚染によって感染が広がってしまうケースがあると考えられることになります。
また、
こうしたサルモネラ菌が原因となる食中毒の具体的な症状の特徴としては、
6時間から72時間程度といった潜伏期間の後に、腹痛や下痢、嘔吐や発熱といった症状が現れることになり、
前述した病原性大腸菌による食中毒の場合と同様に、発熱は38℃から40℃といった高熱に達してしまうケースも多く、
腸管出血性大腸菌の場合ほどの激しい出血ではないものの、下痢の症状が悪化するケースでは、粘血便と呼ばれる微量の血液が混じった粘液を伴うような下痢の症状が現れることもあります。
ブドウ球菌によって引き起こされる食中毒の特徴と細菌の具体的な性質
そして、
最後に挙げたブドウ球菌と呼ばれる細菌の種族のうち、食中毒の原因となるのは黄色ブドウ球菌と呼ばれる細菌の種類であり、
黄色ブドウ球菌は、人間や動物の皮膚や腸内などにおいて幅広く生息する多くの球菌(球形の細菌)同士が互いに連なったブドウの房のような形状をしている常在菌ということになるのですが、
日本国内において発生する細菌性食中毒のおよそ5%がこうしたブドウ球菌、より正確には、黄色ブドウ球菌を病原菌とする食中毒であると考えられることになります。
そして、
こうした黄色ブドウ球菌と呼ばれる細菌自体は熱に弱い構造をしているため、通常の加熱調理などで十分に死滅させることができると考えられるのですが、
その一方で、
黄色ブドウ球菌が増殖していく際に生み出す食中毒の原因となるエンテロトキシンと呼ばれる毒素は、熱に対する耐性が高く、100℃以上の温度で20分加熱しても分解されないため、
調理する人の手や指などに切り傷や化膿している部分などがある場合には、食材に手や指が頻繁に接触する料理、例えば、おにぎりや寿司あるいはサンドイッチといった食品を介して感染が広がっていくケースもあると考えられることになります。
そして、
こうした黄色ブドウ球菌が原因となる食中毒の具体的な症状の特徴としては、
まず、潜伏期間が30分から長くても6時間程度とかなり短いといった点や、
主症状としては、吐き気や嘔吐や腹痛といった点が挙げられ、下痢が伴うことがあるものの、一般的に高熱がでることはないといった点も挙げられることになります。
また、
こうした黄色ブドウ球菌と呼ばれる細菌は、食中毒といった消化器系の症状だけではなく、皮膚上で増殖することによってにきびやおできといった皮膚トラブルの原因菌となることや、細菌性の肺炎を引き起こす原因となる細菌にもなるほか、
さらには、
髄膜炎や敗血症といったより重篤な全身症状を引き起こすこともある細菌の種族として位置づけられることになるのです。
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次回記事:病原性大腸菌の五つの種類と具体的な症状の違いとは?①腸管病原性大腸菌と腸管侵入性大腸菌と毒素原性大腸菌
前回記事:食中毒の原因となる代表的な五つの病原菌の種類と具体的な症状の特徴とは?①カンピロバクターとウェルシュ菌による食中毒
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