実験心理学と応用心理学の違いとは?狭義と広義における実験心理学の定義と両者に分類される代表的な心理学の分野の種類
生物の意識や行動、そのなかでも特に、人間の心と行動のあり方とその仕組みについて科学的な手法によって研究する学問である心理学(psychology)は、
その専門とする探究の分野や、研究手法の違いなどに応じて、認知心理学や臨床心理学、比較心理学、社会心理学、教育心理学、さらには、スポーツ心理学、災害心理学、犯罪心理学、動物心理学といった多種多様な学問分野へと細分化されていくことになります。
そして、
こうした心理学の多様な部門を大きなグループへと分けていく最も一般的な心理学の分類のあり方としては、
まずは、実験心理学と応用心理学と呼ばれる心理学における分類のあり方を提示することができると考えられることになります。
狭義と広義における実験心理学の意味の違いとブントの内観法
実験心理学(experimental psychology)とは、
19世紀後半から20世紀初頭のドイツの生理学者にして心理学者でもあったヴィルヘルム・ヴント(Wilhelm Wundt、1832年~1920年)に確立された
心理的な事象の研究に対して、物理学や生理学において用いられるような実験的方法を適用する心理学のあり方のことを指す言葉であり、
具体的には、人為的に一定の条件が整えられた実験室などの研究施設において、被験者となった人間に対して、様々な条件変化を加え、
それに対応する対象者の反応や行動の変化などを観察し、それを数量的に記述することによって、人間の心の仕組みを研究する手法のことを指して、こうした実験心理学という言葉が用いられることになると考えられることになります。
そして、
「実験心理学の父」とも称されているブントは、具体的には、
内観法(ないかんほう)と呼ばれる自分の心の状態を自分自身で観察する手法を人間心理の実験と観察の手法として用いたうえで、
そうした内観法などによって得られる人間の感覚や意志や感情などの直接経験としての心的要素を分析するとによって、人間の心の内部における心理過程を明らかにしていこうとすることになるのですが、
そういう意味では、
狭義の意味においては、こうしたブントによって提唱された内観法と呼ばれる自己観察の手法を中心に行われる心理学的な実験と観察の手法のあり方のことを指してこうした実験心理学という言葉が用いられることになると考えられることになります。
それに対して、
広義の意味においては、こうしたブントによって提唱された内観法だけにとどまらずに、
知覚や感覚、記憶や学習、感情といった人間や動物における心理的事象一般を、行動観察などのより客観性の高い実験手法を用いることによって理論的・法則的に解明していこうととする心理学のあり方全般のことを指して、
こうした実験心理学という言葉が用いられることになると考えられることになるのです。
実験心理学と応用心理学の違いと両者に分類される具体的な心理学の分野の代表的な種類
以上のように、
一般的な心理学の分類のあり方の一つとしての広義における実験心理学には、
人間や動物における様々な心理的現象を、行動観察などの科学的で客観的な実験手法を用いることによって理論的・法則的に解明する心理学のあり方全般が含まれることになり、
具体的には、例えば、
冒頭で挙げた心理学の部門のなかでは、認知心理学や比較心理学と呼ばれる心理学の分野が、その他にも、知覚心理学や生理心理学、発達心理学などの分野についても、こうした広義における実験心理学の内に含めることができると考えられることになります。
それに対して、
冒頭で挙げたもう一つの心理学の分類のあり方である応用心理学においては、こうした実験心理学の各部門において得られた心理学的な研究の成果が、臨床や教育、産業や司法といった様々な実用的な分野へと応用していき、
心理学的な研究成果を現実の社会の内で実際に役立てていくことを目的とする心理学のあり方が含まれることになります。
そして、具体的には、
臨床心理学や教育心理学、産業心理学や犯罪心理学、さらには、スポーツ心理学、災害心理学、動物心理学、家族心理学といった
現実の社会の内の様々な分野に対応する多種多様な実践的な心理学の分野が、こうした応用心理学と呼ばれる心理学のグループの内に含められることになると考えられることになります。
・・・
つまり、
実験心理学と応用心理学の違いと、両者に分類される具体的な心理学の分野の代表的な種類について一言でまとめると、
実験心理学は、人間や動物における様々な心理的現象を、行動観察などの科学的で客観的な実験手法を用いることによって理論的・法則的に解明する心理学のあり方のことを意味する言葉として定義され、
具体的には、
認知心理学、比較心理学、知覚心理学、生理心理学、発達心理学などの心理学の各分野が含まれるのに対して、
応用心理学は、そうした実験心理学などにおいて得られた心理学的な研究成果を、実用的な分野へと応用していくことによって、現実の社会の内で実際に役立てていくことを目的とする心理学のあり方を意味する言葉として定義され、
具体的には、
臨床心理学、教育心理学、産業心理学、犯罪心理学、スポーツ心理学、災害心理学、動物心理学、家族心理学といった心理学の各分野が含まれることになると考えられることになるのです。
・・・
次回記事:基礎心理学と応用心理学の違いとは?両者に分類される代表的な心理学の分野の種類と基礎心理学における「基礎的」の意味
前回記事:アシモフの心理歴史学と社会心理学および集合心理学との共通点とは?心理歴史学とは何か?⑥
「心理学」のカテゴリーへ
「語源・言葉の意味」のカテゴリーへ