藻類の分類のまとめ、代表的な十一種類の藻類の種族の具体的な特徴と生物学的な区分、藻類とは何か?⑭

このシリーズの初回から、前回までの記事では、

藻類と呼ばれる生物の種族の分類のあり方と、それぞれに分類される代表的な藻類の種族具体的な特徴について詳しく考えてきました。

そこで、今回の記事では、こうした一連の藻類に関する記事の総まとめとして、

最後に、こうした藻類に区分される生物の生物学的な分類のあり方と、それぞれの分類に含まれる代表的な藻類の種族の具体的な特徴について一通りまとめていく形で改めて書いておきたいと思います。

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藻類の分類のまとめと代表的な十一種類の藻類の種族の具体的な特徴

藻類の分類のまとめと代表的な十一種類の藻類の種族

まず、

以前に狭義と広義における藻類の定義の違いの記事で書いたように、

藻類と呼ばれる生物のグループには、日常的な狭義の意味においては、ノリワカメコンブといった肉眼で判別できる一定の大きさを持ち、葉状樹枝状といった一般的な植物のイメージと合致する形態をした海産や淡水性の植物の種族が分類されるのに対して、

生物学的な広義の意味における藻類には、こうした狭義の藻類には当てはまらない様々な性質を持った水中で光合成を行う単細胞性の微細な生物の種族も藻類として分類されることになると考えられることになります。

そして、

こうした藻類の分類のあり方において、

前者の狭義における藻類には、緑藻類紅藻類褐藻類と呼ばれる三種類の藻類の種族が分類されるのに対して、

後者の広義における藻類には、無数と言ってもいいほどの多様な性質を持った雑多な藻類の種族が分類されることになるのですが、

その中でも、特に特徴的な性質を持った藻類の種族を挙げていくとすると、

例えば、これまでの記事で取り上げてきた

渦鞭毛藻クリプト藻ラフィド藻といった鞭毛藻類の仲間に加え、ユーグレナ植物クロララクニオン植物といった生物の種族、そして、灰色植物や、珪藻類藍藻類といった

全部で八種類の藻類の種族をこうした広義における藻類に分類される代表的な藻類の種族として挙げることができると考えられることになります。

緑藻類・紅藻類・褐藻類の具体的な特徴

それでは、はじめに、狭義における藻類に含まれる緑藻類・紅藻類・褐藻類という三つの藻類の種族についてですが、

まず、

上記の図の一番上に挙げた緑藻類(りょくそうるい)と呼ばれる藻類の種族の具体的な特徴としては、

緑藻類は、一般的な陸上植物と同様に、光合成を行う細胞小器官である葉緑体の内に、クロロフィル(葉緑素)と呼ばれる緑色の色素を大量に含んでいるため、全体的に緑色の体色をしているという点や、

生息場所としては、比較的水深の浅い海域に生息するケースが多いほか、池や川などに生息する淡水性の種族も多く存在するといった点が挙げられることになります。

そして、

こうした緑藻類に分類される代表的な海藻の種類としては、アオノリ(青海苔)カサノリ(傘海苔)アオサ(石蓴)ミル(海松)といった藻類の名前が挙げられるほか、

淡水産の藻類としては、カワノリ(川海苔)アオミドロ(青味泥)クンショウモ(勲章藻)イカダモ(筏藻)クロレラといった藻類の名前が挙げられることになります。

・・・

そして、その次に挙げた紅藻類(こうそうるい)具体的な特徴としては、

紅藻類の葉緑体の内には、クロロフィル(葉緑素)の他に、フィコエリトリン(紅藻素)と呼ばれる赤色の色素や、フィコシアニン(藍藻素)と呼ばれる青色の色素も多く含まれることから、紅色や紫色の体色をしている場合が多いという点や、

生息場所としては、より水深が深い海域に生息しているケースが多いといった点が挙げられることになります。

そして、

こうした紅藻類に分類される代表的な海藻の種類としては、アサクサノリ(浅草海苔)フノリ(布海苔)スサビノリ(荒び海苔)、寒天の材料として有名なテングサ(天草)、刺身のつまなどとして用いられることが多いオゴノリやイギス(海髪)といった藻類の名前が挙げられることになります。

・・・

その次の三番目に挙げた褐藻類(かっそうるい)具体的な特徴としては、

褐藻類の葉緑体の内には、クロロフィル(葉緑素)の他に、フコキサンチン(褐藻素)と呼ばれる赤褐色の色素が多く含まれていて、黄褐色や黒褐色の体色をしている場合が多いという点や、

生息場所としては、だいたい中程度の水深の海域に生息しているケースが多く、全長が数メートルから数十メートルにも及ぶような大型の藻体(そうたい)を形成するケースも多いといった点が挙げられることになります。

そして、

こうした褐藻類に分類される代表的な海藻の種類としては、コンブ(昆布)ワカメ(若布)ヒジキ(鹿尾菜)ホンダワラモズク(水雲)ハバノリ(幅海苔)といった藻類の名前が挙げられることになるのです。

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渦鞭毛藻・クリプト藻・ラフィド藻・ユーグレナ植物の具体的な特徴

そして、上記の図において、緑藻類・紅藻類・褐藻類という狭義における藻類に分類される生物の種族の下に示した

渦鞭毛藻・クリプト藻・ラフィド藻・ユーグレナ植物・クロララクニオン植物・灰色植物・珪藻類・藍藻類という全部で八種類の生物の種族はすべて、

生物学的な広義の意味における藻類に分類される単細胞性の微細な藻類の種族であるということになるのですが、

こうした広義における藻類の前半部分に挙げた渦鞭毛藻とクリプト藻とラフィド藻ユーグレナ植物を加えた四種類の生物の種族は、すべて、鞭毛藻類と呼ばれるグループに分類される生物であり、

自らの細胞の内に、鞭毛(べんもう)と呼ばれる運動性を持った小器官を備えた藻類の種族であると考えられることになります。

そして、こうした鞭毛藻類に分類される生物の種族のうち、

はじめに挙げた渦鞭毛藻具体的な特徴としては、

 直径10100マイクルメートル(0.010.1ミリメートル)程度の大きさで、鞭型(むちがた)と羽型(はねがた)の二種類の形状を持った鞭毛を用いることによって渦を巻くように回転しながら泳ぐことができるほか、細胞膜の外側鎧板(よろいいた)と呼ばれる硬い板状の構造を持っているといった点が挙げられるのに対して、

その次に挙げたクリプト藻具体的な特徴としては、

直径350マイクルメートル(0.0030.05ミリメートル)比較的小型米粒型の形状をしているほか、細胞膜の内側ペリプラストと呼ばれる硬い板状の構造を持っているといった点が挙げられることになり、

三番目に挙げたラフィド藻具体的な特徴としては、

直径が30100マイクルメートル(0.030.1ミリメートル)比較的大型の形状をしているほか、ラフィド藻には、鞭毛藻類やクリプト藻に見られるような鎧版やペリプラストといった細胞膜を補強する板状の構造は存在せず、形態が変化しやすい柔軟な構造をしているといった点が挙げられることになります。

そして、それに対して、

四番目に挙げたユーグレナ植物具体的な特徴としては、他の鞭毛藻類と同様に、鞭毛と呼ばれる運動性を持った細胞小器官を備えていることのほかに、

ユーグレナ植物に分類される生物は、感光点と眼点(がんてん)と呼ばれる細胞小器官を持っていて、こうした器官を用いることによって光の強弱や方向性を感じ取ることができる原始的な視覚器官にも通じるような機能を持っているといった点が挙げられることになるのです。

また、こうした鞭毛藻類に分類される生物の中で、比較的日常的にも馴染み深い生物の種類としては、

渦鞭毛藻に分類される代表的な生物としては、夜の海の中で青白い光を発する発光生物として知られているヤコウチュウ(夜光虫)などが挙げられるのに対して、

ユーグレナ植物に分類される代表的な生物としては、動物と植物の両方の性質を持った生物の代表例として有名なミドリムシ(緑虫)といった生物の種類が挙げられることになります。

クロララクニオン植物・灰色植物・珪藻類・藍藻類の具体的な特徴

そして、上記の図における広義における藻類の後半部分に挙げたクロララクニオン植物灰色植物珪藻類藍藻類についてですが、

まず、このうちのはじめに挙げたクロララクニオン植物は、

葉緑体を持って光合成を行う海産性で単細胞性の藻類でありながら、アメーバのように細胞全体を変形させて、クモの巣のように見える糸状仮足を用いることによって移動と捕食を行うという一風変わった特徴を持った藻類の種族であると考えられることになります。

そして、その次に挙げた灰色植物は、

自らの細胞の内に、シアネルと呼ばれるもともとはシアノバクテリアに由来する原始的な葉緑体を持つ藻類の種族であり、

灰色植物は、シアネルに含まれるクロロフィル(葉緑素)フィコシアニン(藍藻素)という緑色と青色の色素によって、全体的に青みがかった緑色の体色をしていると考えられることになります。

また、その次に挙げた珪藻類は、

水中で光合成を行うことによって生活を営んでいる単細胞性の藻類のなかでも、ケイ酸質の硬い殻によって細胞が覆われている生物の一群であり、

葉緑体の内に緑色のクロロフィル(葉緑素)の他に、赤褐色のフコキサンチン(褐藻素)なども含まれているため、黄褐色に近い体色をしていると考えられることになります。

そして、最後に挙げた藍藻類(らんそうるいと呼ばれる生物の種族は、

別名ではシアノバクテリアとも呼ばれるように、それは厳密な意味では、細菌類に分類される生物でもあり、

シアノバクテリアは他の一般的な細菌と同様に、細胞内に核膜や細胞小器官が存在しない原核生物に分類されることになるので、細胞小器官の一つである葉緑体も存在しないのですが、その代わりに、細胞全体が葉緑体の働きをすることによって光合成を行っていると考えられることになります。

そして、

こうしたシアノバクテリアの細胞内には、緑色の色素であるクロロフィル(葉緑素)の他に、青色の色素であるフィコシアニン(藍藻素)も比較的多く含まれているため、全体として青みがかった緑色の体色をしている場合が多いと考えられることになります。

・・・

ちなみに、

そうしたシアノバクテリアと同様に光合成を行う光合成細菌の種類としては、他にも、紅色硫黄細菌緑色硫黄細菌といった細菌の種類も挙げられることになるのですが、

こうした細菌の場合は、光合成とは言っても、シアノバクテリアや通常の植物における酸素発生型の光合成とは異なり、光合成の過程において硫化水素などを用いて硫黄や硫酸などを発生させるタイプの光合成を行うことになるので、

こうした光合成細菌の種族を藻類や一般的な植物のグループに分類するのは少し無理があると考えられることになります。

したがって、

「藻類」という言葉の定義を最も広く解釈した場合でも、植物の一種である藻類に含まれる生物の種族は、

上記の図において示した緑藻類・紅藻類・褐藻類という狭義における藻類の種族から、鞭毛藻類珪藻類などの単細胞性の微細な藻類の種族に、

こうした藍藻類(シアノバクテリア)と呼ばれる酸素発生型の光合成を行う細菌の種族を加えた種族までとなると考えられることになるのです。

・・・

以上のように、

藻類と呼ばれる植物の一種に含まれる生物のグループの生物学的な分類のあり方についてまとめると、

狭義における藻類には、緑藻類紅藻類褐藻類と呼ばれる三種類の藻類の種族が分類されるのに対して、

広義における藻類には、多様な性質を持った単細胞性の微細な藻類の種族が分類されることになり、その中でも代表的な生物の種族としては、

渦鞭毛藻・クリプト藻・ラフィド藻・ユーグレナ植物・クロララクニオン植物・灰色植物・珪藻類・藍藻類という全部で八種類の生物の種族などが挙げられることになると考えられることになるのです。

・・・

初回記事:藻類なのに陸上で生育する植物と陸上植物なのに水中で生育する植物、藻類とは何か?①

前回記事:クロララクニオン植物とは何か?、アメーバや粘菌のような生態を営みながら光合成を行う異形の藻類の種族、藻類とは何か?⑬

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