酵母とカビとキノコの違いとは?生物学的な広義の意味における酵母の定義と、単細胞・群体・多細胞の違い、酵母とは何か?②
前回書いたように、酵母という言葉は、それが日常的な狭義の意味において用いられるときには、ビールやパンなどを製造する際のアルコール発酵の母体となる真菌類のことを意味すると考えられることになるのですが、
生物的な広義の意味における酵母の定義に基づくと、そうした醸造酒や発酵食品の製造の過程において利用される人間にとって有用な菌類だけではなく、病気などを引き起こす人間にとって有害な菌類の種類も酵母の内に含まれることになると考えられることになります。
それでは、
こうした生物学的な広義の意味における酵母の定義とは具体的にどのようなものであり、酵母とカビとキノコという真菌類に区分される三つの生物の種族の間にはどのような特徴の違いが存在すると考えられることになるのでしょうか?
酵母とカビとキノコの違いと、生物学的な広義の意味における酵母の定義
生物学的な広義の意味における酵母の定義は、人間の生活に役立つかどうか?といった利用法の観点よりも、生物体自体の構造や機能といった点に重きが置かれることになり、
一言でいうと、
運動性を持たずに、細胞壁を持ち、光合成を行わずに、植物や動物などの他の生物体への寄生または共生関係を営むことによって生活する真核生物であるという菌類の定義を満たす生物のうち、
球形または楕円形の形態をした個々の細胞が単独の単細胞の状態で一つの生物体を形成している菌類のことを指して、酵母という言葉が用いられることになると考えられることになります。
以前に「カビとキノコの違い」の記事で書いたように、
カビやキノコといった他の真菌類に属する生物の場合、個々の細胞は菌糸と呼ばれる一つながり細胞列を形成していくことになり、
そうした菌糸の集合体が互いに緩やかな連携を保ちながら平面的な形で円形に広がっていき、コロニーと呼ばれる細胞集団や群体のようなものを形成する場合はカビと呼ばれ、
同様の菌糸の集合体がより密に集合し、立体的な厚みも持った複雑で大規模な構造へと発展して、胞子形成のために特化した子実体と呼ばれる組織を形成する場合には、今度はキノコと呼ばれることになると考えられるのですが、
それに対して、
同じ真菌類に分類される生物である酵母の場合には、個々の細胞は、他の細胞と結合することなく、単独の単細胞の状態で活動し、
生殖のあり方も、カビやキノコのように胞子を飛ばして増殖していくような形式ではなく、
細胞の一部分にできた芽状の突起が次第に大きくなっていって新しい個体が形成される出芽と呼ばれる生殖の形式や、細胞分裂によって増殖していくといった点に、
カビとキノコ、そして、酵母という真菌類に分類される三者を分け隔てる具体的な特徴の違いがあると考えられることになるのです。
・・・
以上のように、
酵母の定義とは、生物学的な広義の意味においては、
球形または楕円形の形態をした個々の細胞が単細胞の状態で一つの生物体を形成している真菌類のことを意味することになると考えられることになります。
そして、こうした生物学的な分類のあり方に基づくと、
酵母とカビとキノコという真菌類に区分されている三つの生物の種族の具体的な特徴の違いとしては、
酵母は、個々の細胞が単独の状態で生活する単細胞生物に分類され、出芽や細胞分裂によって増殖するのに対して、
カビやキノコは、個々の細胞が菌糸と呼ばれる細胞列を形成する多細胞生物に分類され、胞子を飛ばすことによって増殖していくことになり、
さらに、カビの場合は、そうした個々の菌糸は、互いに緩やかな連携を保ちながらコロニーと呼ばれる細胞集団や群体のようなものを形成して平面的な形で円形に広がっていくのに対して、
キノコの場合は、個々の菌糸がより密に集合し、胞子形成のために特化した子実体と呼ばれる組織を形成することによって立体的な厚みも持った複雑で大規模な構造を形成していくといった点に、
酵母とカビとキノコの三者を区別する具体的な特徴の違いがあると考えられることになります。
つまり、一言でいうと、
こうした酵母とカビとキノコという三つの菌類の形態は、
生物学的な分類においては、
単細胞・群体・多細胞といった個々の細胞が生物体を構成していく際の三つの構造の違いに基づいて分類がなされていると考えられることになるのです。
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次回記事:病原体となる酵母とは?真菌性の日和見感染症の原因となる酵母の種類、酵母とは何か?③
前回記事:酵母とは何か?①日本語の「酵母」と英語の「イースト」の語源と、日常的な狭義の意味における酵母の定義
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