原子論とパルメニデスの関係とは?①エレア学派と原子論の三つの相違点

パルメニデスの存在の哲学から
デモクリトスの原子論アトミズム)への展開は、

レウキッポスやデモクリトスといった原子論者たちが、

パルメニデスに始まるエレア学派の
存在への問いを引き継ぎつつ、

その問いに新たな形で答えることによって
進んでいったと考えられます。

そうした

パルメニデスの存在の哲学、エレア学派、から
レウキッポスとデモクリトスの原子論atomismアトミズム)への
哲学的理論の展開は、

より具体的には、
どのような構図として捉えることができるのでしょうか?

この問題について、
これから二回にわたって考えていきたいと思います。

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不動性と数的一性から運動性と多数性へ

レウキッポスの哲学の概要」でも書いたように、

レウキッポスとデモクリトスにおける
原子atomaアトマ、分割できないもの)の概念は、

基本的には、

エレア学派において探究されてきた
真なる実在としての「あるもの」(to eonト・エオン)の概念を
受け継ぎつつ、その一部を変容させていくことによって
形づくられていったと考えられます。

エレア学派において、
真なる実在としての「あるもの」(ト・エオン)は、

不生不滅不可分性自己同一性不動性数的一性
といった本性を持つものとして捉えられますが、

レウキッポスとデモクリトスのにおいては、
その内の、

不生不滅不可分性自己同一性

といった基本的な規定は受け継がれつつ、

不動性数的一性という
二つの規定が否定される形で、

原子論アトミズム)の理論が組み上げられていったと考えられます。

そして、

不動性の反対は、運動性
数的一性の反対は、多数性

ということになるので、

原子アトマ)の概念は、

エレア学派における「あるもの」(ト・エオン)の概念が、
運動性と多数性を有するものとして捉え直されることによって
成立した概念ということになるのです。

空虚の非存在から存在への転換

また、

これは、詳しくは、「空虚ケノンから原子論アトミズム
の記事で書いたことですが、

宇宙の中に無数に存在する原子が運動するためには、
その前提として、

原子が運動するためのとしての空虚kenonケノン)、
すなわち、一定の大きさを持った空間が必要となります。

そこで、

エレア学派の特にメリッソスの議論においては、
非存在として切り捨てられていた空虚の概念が、

レウキッポスやデモクリトスの原子論においては、

原子が運動するためのとなる
一種の論理的存在として捉え直されることになり、

空虚という概念の
非存在から存在への転換が行われることになるのです。

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マクロからミクロへの視点の転換

そして、先ほど述べたように、

真なる実在
数として一であるのか?それとも多であるのか?

という問題については、

エレア学派においては、
真なる実在としての「あるもの」(ト・エオン)は、
数として一であるとされたのに対して、

レウキッポスとデモクリトスの原子論においては、
世界を構成するそれ以上は分割不可能実在の基本単位である原子アトマ)は、
数としては無数と言っていいほど多数存在することになります。

このとき、

エレア学派においても、原子論においても、
世界全体の大きさ自体は変わらないので、

原子論において、
世界を構成する基本単位である実在
一ではなく、であると捉えられたということは、

別の捉え方をするならば、

であり、無数にあるとされた実在の一つ一つは、
大きさとしては、かなり小さいということも意味します。

つまり、

パルメニデス、エレア学派においては、
宇宙全体が一なる存在として、
一挙にマクロ巨視的な視点において捉えられていたのに対して、

レウキッポスとデモクリトスの原子論においては、
世界を構成する最小単位として原子へと視点が向け変えられ、
真なる実在のあり方がミクロ微視的な視点から捉え直されている

ということです。

このように、

エレア学派から原子論への議論の展開においては、
真なる実在の捉え方における

マクロ的な視点からミクロ的な視点への
視点の転換が行われていると考えられるのです。

・・・

以上のように、

パルメニデスに始まるエレア学派から
レウキッポスとデモクリトスの原子論へと至る哲学的理論の転換のあり方は、

不動性と一性から運動性と多数性へ

空虚の非存在から存在への転換

マクロからミクロへの視点の転換

という三つの相違点において捉えることができると考えられます。

そして、

この三つの相違点の中では、

特に、三番目のマクロからミクロへという構図が、一番イメージしやすく、
より本質的な議論であるとも考えられるのですが、

それについては、次回、
さらに詳しく考えていきたいと思います。

・・・

このシリーズの次回記事:原子論(アトミズム)とパルメニデス②マクロコスモス(大宇宙)からミクロコスモス(小宇宙)への転換

パルメニデス」のカテゴリーへ

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