新型コロナウイルスのウイルス検査数を過度に増やすと感染爆発を誘発する三つの理由

新型コロナウイルスの感染が拡大していくにしたがって、自分も新型ウイルスに感染しているかもしれないと恐れる人々が増えていき社会不安が広がっていくなかで、

とにかくウイルスの検査数どんどん増やしていくことによって軽症者も含めて感染の実態を明らかにしていくことで社会不安を払拭すべきとする主張が一部のメディアや医療専門家の間でも広く唱えられている。

もちろん病状が悪化して入院先で肺炎の診断が下されたうえで医師からも検査の必要性が認められた患者に対して、迅速にウイルス検査を行える体制を整えることが必要であることは当然であるが、

その一方で、インフルエンザに対するタミフルのような有効性が確立された抗ウイルス薬などの明確な治療法のない現段階において、

そうした社会不安の鎮静化を図るために、臨床診断においては一般的な風邪との区別がつかないような軽症者に対しても広く検査を行うために、

新型ウイルスの検査数を過度に増やすことによって事態に対応しようとすることは、感染拡大の防止に寄与するどころか、かえって感染爆発を誘発しかねない危険性をはらんでいると考えられる。

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新型ウイルスの検査数を過度に増やすと感染爆発を誘発する三つの理由

新型ウイルスの検査数を過度に増やすことが感染爆発を誘発することへとつながる具体的な理由としては、以下のような三つの理由が挙げられる。

①ウイルス検査を受けに行く際の感染のリスク
②陽性判定を受けた軽症者を入院させることによる医療崩壊
③ウイルス検査における偽陰性の問題

一つひとつの理由について、これから詳しく考えていく。

①ウイルス検査を受けに行く際の感染のリスク

ウイルス検査を受けに行く場所というのは、通常の場合は病院ということになるが、新型ウイルスの検査を実施している病院には、当然、新型ウイルスにすでに感染している患者最も多く訪れることになるので、

軽症でまだ新型ウイルスに感染している可能性が比較的低い人の場合には、そうした病院などの検査場を訪れる際に、かえって自分が本当にウイルスに感染してしまうリスクが高まることになる。

逆説的な言い方にはなるが、

最もウイルスに感染する確率が高まる瞬間というのは、ウイルスに感染していないことを確認するためにウイルス検査を受けに病院に行くという行為そのものにあるということである。

②陽性判定を受けた軽症者を入院させることによる医療崩壊

軽症者に対しても早期にウイルス検査を受けさせることの最大のメリットは、

感染者を早く見つけ出して入院させることによって効率的に隔離できるということと、まだ症状が重くならないうちから患者に手厚い看護を施すことによって感染者の個人個人の救命率が上がるということにある。

しかし、

自宅療養しているだけで自分でも一般の風邪との区別がつかない間に自然に治癒してしまうはずの軽症者に対しても入院のベッドを割り当てていくと、

予想を上回る数の軽症者から陽性判定が出てしまった場合、本来は重症者に割り当てることができたはずのベッドが足りなくなり治療側の受け入れ能力を超えてしまうことによって感染症対策において最も避けるべき事態である医療崩壊を引き起こしてしまう危険性がある。

新型コロナウイルスの発祥地である中国の武漢において、都市封鎖の前後に、

自分も新型ウイルスに感染したのではないかと心配してウイルス検査と治療を求める軽症患者たちが一気に病院へと押しかけたことが一因となって深刻な医療崩壊へとつながってしまったことを忘れてはならない。

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③ウイルス検査における偽陰性の問題

さらに、以前にPCR法における感度と特異度および偽陽性と偽陰性の問題」の記事で詳しく考察したように、ウイルス検査における偽陰性の問題もある。

どんなウイルス検査も完全ではないので、検査を過度に行えば、それだけ多くの偽陰性の判定を受けた患者、すなわち、実際はウイルスに感染しているのにもかかわらず誤って陰性の判定が下されている患者が生み出されることになる。

(特に、現在行われているPCR検査の場合、体内でウイルス量がまだ十分に増えていない軽症患者ほど偽陰性の判定が生じやすくなる。)

ウイルス検査をパスして野に放たれてしまった偽陰性の患者が、自分はウイルスに感染しているかもしれないと悩んでいた不安感から解放されて活発に日常活動を再開してしまうことによって、かえって感染拡大を増悪してしまうリスクもある。

以上のように、

①ウイルス検査を受けに行く際の感染のリスク
②陽性判定を受けた軽症者を入院させることによる医療崩壊
③ウイルス検査における偽陰性の問題

という三つの理由から、

新型ウイルスの検査数を過度に増やすことによって軽症者まで幅広く検査を実施して社会不安の鎮静化を図るという方策は、

一見すると一人一人の患者の立場に立った善良で合理的な施策であるように見えるものの、かえって感染爆発を誘発しかねない危険性をはらんでいるとも考えられるのである。

・・・

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前回記事:新型コロナウイルスの年齢・性別・持病の有無の違いに基づく致死率の概算

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