女王オムパレーの奴隷となるヘラクレスとダイダロスが建てたヘラクレス像、古代ギリシア神話の英雄ヘラクレスの物語⑩
前回書いたように、ヘラクレスの十二の功業と呼ばれる贖罪のための十二の難行を成し遂げた英雄ヘラクレスは、その後、新天地において新たなる人生を築いていくために、
テッサリアのオイカリアの王であったエウリュトスの求めに応じて弓試合をして勝利をおさめることによって、王女イオレーの婚約者としての資格を得ることになるのですが、
それからしばらくして、ヘラクレスは、
女神ヘラによって吹き込まれた狂気によって再び気狂いとなってしまうことによって、自分の友人であったイピトスのことをティリュンスの城壁から投げ落として殺してしまうことになります。
リュディアの女王オムパレーに奴隷として売り渡されるヘラクレス
こうして再び殺人の罪を背負うことになったヘラクレスは、自らの罪を清める贖罪の旅へとまたしても赴いていくことになり、
神託の言葉を得るために赴いていったデルポイの地において、ヘラクレスは、自分の身を売って新たな主人のもとで三年間の間を務めることによって得ることになる代価を、イピトスの父であったエウリュトスに支払うことによって罪の償いがなされることになるという導きを得ることになります。
そして、
こうしたデルポイの神託における神々の導きに従って、ギリシアからは離れた遠い東の異国にあたるリュディアの女王であったオムパレーによってその身を買い取られることになったヘラクレスは、
彼女のもとに仕えてから罪を許されて自由となり、さらにそのしばらく後に死を迎えることになるまでの間に、善いことも悪いことも数多くのことを行っていくことになります。
イカロスの墓を建てるヘラクレスとダイダロスが建てたヘラクレス像
ヘラクレスは、女王オムパレーのもとに仕えている間に、
まずは、エペソスの町の近くで様々な悪ふざけをして人々を困らせていたケルコープスと呼ばれる二匹のいたずら好きの猿を捕らえて、彼らを棒に吊るし上げにして懲らしめることになります。
そして、その後、
近くを通る旅行者たちを捕まえては、彼らを無理やり自分のブドウ園へと連れて行って、彼らにブドウ畑を耕す労働を強いていたシュレウスという名の人物を捕らえると、
見せしめとして彼のブドウ園にあったブドウの木をすべて根元から焼き払ってしまったうえで、シュレウスのことを彼の娘であったクセノドケーと共に殺してしまうことになります。
また、
ヘラクレスがリュディアのイオニア地方の沿岸部に近いドリケーと呼ばれる島に立ち寄った時、
鳥の羽根を蝋で固めてできた翼を使ってクレタ島の迷宮から脱出したイカロスが、太陽の熱によって蝋を溶かされて海へと落ちて行ってしまったのち、
その遺体が海岸に打ち上げられているのを目にしたヘラクレスは、イカロスの遺体を丁寧に葬ってこの地に墓を建てたため、この島はイカロスの名にちなんで、それ以降は、ドリケー島ではなくイカリア島と呼ばれていくことになります。
そして、そののち、
この地においてヘラクレスによって建てられた墓を目にしたイカロスの父であったダイダロスは、このことに深く感謝して、この地にヘラクレスの像を建てることになるのですが、
その像の造りがあまりに精巧で見事であったため、夜中にこの像の近くを訪れることになったヘラクレスが、それが生きているものと思い込んで、
自分の方へと襲いかかってくるかのように迫るこの像に対して思わず石を投げつけてしまったといった逸話も語り伝えられていくことになるのです。
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次回記事:ギリシア世界の王として君臨する英雄ヘラクレスのギリシア全土をめぐる進軍の旅、古代ギリシア神話の英雄ヘラクレスの物語⑪
前回記事:ヘラクレスの二度目の狂気とティリュンスの城壁から投げ落とされたイピトスの死、古代ギリシア神話の英雄ヘラクレスの物語⑨
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