灰の水曜日の由来とは?四旬節の最初の日が水曜日となる理由と灰色の十字架の印を信徒の額に描くカトリック教会の儀式
前回の記事で書いたように、キリスト教において四旬節と呼ばれる復活祭の前の40日間にわたって行われるキリストの苦難と死を思って行われる祈りの期間は、灰の水曜日と呼ばれる日を最初の日としてはじまっていくことになるのですが、
それでは、こうした四旬節の最初の日がこうした水曜日にあたる日に位置づけられているのには具体的にどのような理由があり、
こうした四旬節の最初の日にあたる水曜日が灰の水曜日と呼ばれていることには具体的にどのような由来があると考えられることになるのでしょうか?
四旬節の最初の日が火曜日ではなく水曜日となる理由とは?
こうした四旬節と呼ばれる祈りの期間の最初の日が水曜日に位置づけられている具体的な理由について知るためには、その前提として、まずは、四旬節の期間を定める基準となる日である復活祭の日が何曜日となるかを知っておくことが必要となると考えられることになります。
そして、
キリスト教の聖典である新約聖書のルカの福音書における記述に基づくと、
イエスが十字架にかけられた日は金曜日であり、イエスはその日から数えて三日目にあたる日曜日に復活したとされているため、そうした聖書の記述に基づいてキリスト教における復活祭は日曜日に行われることになり、
そうした復活祭の日曜日からさかのぼって40日間にわたって行われる祈りの期間が四旬節の期間として位置づけられることになると考えられることになります。
そうすると、
四旬節の最初の日にあたる日は、復活祭の日曜日から数えて40日前、すなわち、5週間と5日前にあたる火曜日がそうした四旬節の最初の日になるようにも考えられてしまうことになるのですが、
キリスト教においてはイエスが復活した日にあたる日曜日は、復活祭の日だけに限らず安息日として、そうしたイエスの十字架の死からの復活を記念する聖なる日として位置づけられることになるため、
そうしたキリストの復活ではなく、キリストの苦難と死を思って捧げられる祈りの期間である四旬節も、そうしたキリスト教の安息日にあたる日曜日は休息日として、日曜日を除く40日間が祈りの期間として位置づけられていくことになります。
したがって、
四旬節の最初の日にあたる日は、復活祭の日曜日から数えて日曜日を除く40日間の祈りの期間が確保されることになる46日前の日、
すなわち、6週間と4日前にあたる水曜日がこうした四旬節やレントと呼ばれる祈りの期間の最初の日として位置づけられることになると考えられることになるのです。
灰色の十字架の印を信徒の額に描くカトリック教会の儀式
そして、
カトリック教会などにおいては、こうした四旬節の最初の日に行われる水曜日のミサ(礼拝)において、
前年の枝の主日(えだのしゅじつ)と呼ばれるキリストがエルサレムに入城したことを記念する聖週間の最初の日の儀式において使用された棕櫚(しゅろ)の枝や木製の十字架などが燃やされて聖なる灰とされたうえで、
イエスの十字架の死と苦難のことを信徒たちの心に深く刻み込むために、その灰を用いて信徒たちの額に灰色の十字架の印を塗り付けていく塗布式と呼ばれる儀式が営まれる習慣があるため、
そうした棕櫚の枝と十字架が燃やされてできた聖なる灰と、その灰を用いて信徒たちの額へと刻印された灰色の十字架のことを記念して、この日が灰の水曜日と呼ばれるようになっていったと考えられることになります。
そして、
こうしたイエスの十字架の死と苦難のことを記念して信徒たちが自らの額に灰色の十字架の刻印を受けることになるこうした灰の水曜日と呼ばれる四旬節の最初の日にあたる日は、
こうした四旬節と呼ばれる祈りの期間の中でも、
断食と禁欲を行ったうえで、キリストの苦難と死を思って自らの罪を悔い改め、心身を清めていくという特に重要な日として位置づけられていると考えられることになるのです。
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次回記事:枝の主日と棕櫚の日の由来とは?新約聖書におけるキリストが通る道に敷き詰められたシュロの木の枝についての記述
前回記事:四旬節(レント)とは何か?英語において春の訪れを意味するキリスト教における40日におよぶ祈りの期間
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