ゼウスの最初の妻となった女神とは?いとこ婚としてのメティスとゼウスの結婚と古代ギリシア語における名前の意味
ギリシア神話における主神ゼウスの妻としては、ゼウスと共にオリュンポス十二神のうちの一柱として位置づけられていて神々の女王とも呼ばれるような絶大な権威と権力を持つとされる女神ヘラの存在が有名ですが、
ギリシア神話の物語においては、ゼウスが現在において知られているような天界の支配者として君臨する前に、まだ、成人して間もない若き日のゼウスがはじめに自らの良きパートナーとなる相手として選んだゼウスの最初の妻となった女神としては、
メティスと呼ばれる知恵に優れた女神として名高かった泉の女神の名が挙げられることになると考えられることになります。
古代ギリシア語におけるメティスという女神の名前の意味と「いとこ婚」としてのゼウスとの関係
まず、ギリシア神話においては、
メティス(Metis)と呼ばれる泉の女神は、古代ギリシア人の世界観において、人間が住んでいる円形の平たい大地を取り囲んでいると考えられていた巨大な大河の存在が神格化された存在である
オケアノス(Okeanos)と呼ばれる古代の海洋神の娘にあたる存在として位置づけられていて、
ちなみに、
こうしたオケアノスと呼ばれる海の神は、ゼウスの父であったクロノスの兄にあたる神でもあり、ゼウスの伯父にあたる存在でもあったため、
そういった意味では、
こうしたゼウスの伯父にもあたるオケアノスの娘であるメティスとゼウスの結婚は、人間でいうところの「いとこ婚」にあたるような婚姻関係として位置づけられることになると捉えることができると考えられることになります。
そして、
こうしたメティスと呼ばれる女神は、
メティス(μῆτις)というその名前自体が古代ギリシア語においては、「技能」や「知恵」あるいは「助言者」といった意味を表す言葉であったと考えられるように、
若き日のゼウスに対して、自らが持つ知恵や技能を生かして適切な助言を与えていくことによって、彼を天界の王の座へと導いていくことになる、ゼウスの良き助言者および良き協力者としてギリシア神話の物語のなかに登場していくことになるのです。
ギリシア神話におけるゼウスの良き助言者および良き協力者としてのメティスの姿
ギリシア神話の物語においては、
若き日のゼウスは、生まれてすぐにゼウスの父でもあるクロノスによって飲み込まれてしまったポセイドンやハデスといった、のちにオリュンポスの神々と呼ばれていくことになる自分の兄弟たちをクロノスの腹の中から救い出そうとして思い悩んでいくことになるのですが、
そのようななか、
ゼウスの良き協力者となった泉の女神メティスは、自らの優れた技能を用いて、ゼウスのために薬を調合したうえで、クロノスのことをだましてその薬を飲ませることによって、兄弟たちを吐き出させるという策を思いつくことになります。
そして、
こうしたメティスの助言の言葉の通りに、クロノスに薬を飲ませることによって、その腹の中からポセイドンやハデスといった自分の兄弟たちを救出することに成功したゼウスは、
こうしたポセイドンやハデスといった兄弟たちと共に、暴政を行ってきた自らの父であるクロノスを打ち倒すことによって、クロノスに代わって天界を司る神々の王の座へと君臨していくことになり、
その後、ゼウスは、
自分のことを優れた技能と適切な助言によって神々の王の座へと導いていてくれた良き助言者にしてパートナーでもあるメティスと結ばれることによって、両者は、しばしの間、幸せな結婚生活を営んでいくことになっていったと考えられることになります。
しかし、その一方で、
こうしたゼウスとメティスの幸せな結婚生活はあまり長い間は続かず、詳しくはまた次回の記事で改めて書いていくように、
二人の運命は、神々の王の座についたゼウスへと伝えられた一つの予言の言葉と、二人の間に授かった女神アテナの存在をめぐって、大きく動き出していくことになるのです。
・・・
次回記事:女神アテナがゼウスの頭の中から武装した状態で生まれた理由とは?自分の妻であるメティスを飲み込むゼウスとガイアの予言
前回記事:ギガントマキアとティタノマキアの違いとは?二つの神々の戦いにおける大地の女神ガイアと人間の位置づけのあり方の違い
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