女神アテナがゼウスの頭の中から武装した状態で生まれた理由とは?自分の妻であるメティスを飲み込むゼウスとガイアの予言

前回の記事で書いたように、ギリシア神話の主神であるゼウスの最初の妻となった女神は、のちに神々の女王といった呼び名でも呼ばれていくことになる女神ヘラではなく、メティスと呼ばれる知恵に優れた泉の女神であったと考えられることになります。

そして、その後、

こうしたゼウスメティスの間の結婚生活は、ゼウスに伝えられた一つの予言の言葉をきっかけとして破局を迎えてしまうことになるのですが、ギリシア神話においては、そうした二人の結婚生活が破局へと至るまでの具体的ないきさつは、

知恵を司る女神であるアテナが、男性の神であるゼウスの頭の中から兜をかぶりマントをまとった武装した状態で生まれてくるという奇妙な誕生の仕方をして生まれてくることになる具体的な理由とも深い関係のある出来事として語られていくことになります。

スポンサーリンク

自分の妻であるメティスを飲み込むゼウスと大地の女神ガイアの予言

ギリシア神話の物語においては、

最初の妻となった泉を司る知恵に優れた女神であったメティスの助言と協力によって、自らの父でもあったクロノスを打ち倒して神々の王の座へと君臨することになったゼウスは、

その後、

大地を司る女神であったガイアから、

「お前とメティスとの間には一人の娘が生まれたのちに、一人の息子が生まれることになるだろう。お前はその自分の息子によって天空の支配者となる地位を奪われることになるだろう」

という予言の言葉を下されることになります。

つまり、

かつて、ゼウスが自らの父であったクロノスを打ち倒すことによって天界の支配者となったように、ゼウス自身もまた、メティスの間にうまれる自らの息子の手によって自らが持つ神々の王の座を奪われることになるということです。

そして、

こうした自分の破滅を予言するガイアから下された神託の言葉を恐れたゼウスは、自分の妻であったメティスが子供を生む前に彼女のことを飲み込んでしまおうとして、メティスのことを追いかけていくことになるのですが、

自らの身の危険を察知した女神メティスは、自らが持つ優れた技能を駆使して、様々な生き物や事物の形へと自分の姿を変えていくことによって、自分のことを捕まえようとするゼウスの手から逃れていくことになります。

しかし、

そのようにして、女神メティスが自分の姿を次々に変えていくなかで、彼女は、もともとの自分の姿でもある泉の姿に戻った時にゼウスによって飲み干されてしまったとも、小さなハエに姿を変えた時に捕まえられてパクリと飲み込まれてしまったとも伝えられていて、

いずれにしても、こうして、

ゼウスの最初の妻であった泉の女神メティスは、自らの夫であるゼウスに飲み込まれてしまうことによって、二人の間の結婚生活は破局を迎えてしまうことになったと考えられることになるのです。

スポンサーリンク

女神アテナがゼウスの頭の中から兜とマントを着せられた武装した状態で生まれてきた理由

ちにみに、

ゼウスが自分の妻であったメティスを飲み込んでしまったといっても、そのことによって、女神メティスの存在自体が消滅してしまったというわけではなく

例えば、かつて、

ポセイドンハデスといったオリュンポスの神々が、父であるクロノスに生まれてすぐに飲み込まれてしまっても、クロノスの腹の中で何年にもわたってそのまま生き続けていて、その後、ゼウスによって救い出されることになったように、

不死なる力を持った存在である神々は、他の神々や怪物たちに食べられたり飲み込まれたりしまっても、死んでしまうというわけではなく、相手のお腹の中で生き続けていくことができると考えられることになるのですが、

このようにして、

自らの夫であるゼウスによって飲み込まれてゼウスとの間の子供を身ごもったまま、彼の体の中に入り込んで閉じ込められてしまった女神メティスは、そのままゼウスの体の中に入った状態で、自分の子供を大切に育てていくことになり、

優れた技能をもつ器用な女神であったメティスは、やがて生まれてくる自分の子供ために、せっせと衣服や装具までつくりはじめていくことなります。

そして、この時、

女神メティスは、ゼウスの頭の中へと移動していったうえで、自分の子供のために、なぜか、身にまとうマントだけではなく、までもつくりはじめていくことになるのですが、

その際、おそらくは、自分のことを無理やり飲み込んでしまった夫であるゼウスに対しての怒りもあってか、ゼウスの頭の中で、兜の鋳造を行うために、思いっきりハンマーを振り上げて作業を行っていたため、

ゼウスは、メティスが振り回すハンマーによって、自分の頭の中をガンガンとぶったたかれることによって、激しい頭痛に苦しめられていくことになります。

そして、やがて、

そうしたゼウスの激しい頭痛が頂点にまで達すると、メティスが予め用意していた兜とマントを着せられた武装した状態で、ゼウスの頭の中から女神アテナが誕生することになるのですが、

その際、

アテナは、メティスが兜を鋳造するのに使っていたハンマーを借りて自分自身の力で父であるゼウスの額を打ち割って生まれてきたとも、

激しい頭の痛みに耐えかねたゼウスが、鍛冶の神であったヘーパイストスに頼んで自分の額を斧でかち割ってもらうことによって生まれてきたとも伝えられています。

そして、こうして、

自分の娘である知恵の女神アテナの誕生をしっかりと見届けたメティスは、そのまま彼の頭の中に残ってゼウスと同化してしまうことになったため、

大地の女神ガイアの予言の言葉にあったゼウスメティスの間にアテナの後に生まれることが予告されていたゼウスが持つ神々の王の座を奪うはずの息子が生まれてくることもなくなることによって、天界の支配者としてのゼウスの地位は安泰となり、

このようにして、

知恵の女神アテナの母ともなった知恵に優れた泉の女神であるメティスは、ゼウスと同化したまま彼の頭の中でいつまでも賢明な助言を与え続けていくことができるようになったため、

ゼウスは現在のような優れた知性をもつ全知全能の神として位置づけられていくことになっていったとも考えられることになるのです。

・・・

次回記事:知恵の女神アテナに母親はいるのか?生物学的な母メティスと代理母となったゼウスから生まれたギリシア神話の中性的な女神

前回記事:ゼウスの最初の妻となった女神とは?「いとこ婚」としてのメティスとゼウスの結婚と古代ギリシア語における女神の名前の意味

神話のカテゴリーへ

スポンサーリンク

このページの先頭へ