ヨハネの黙示録の獣とギリシア神話の怪物テュポーンの関係とは?聖書と神話に共通する普遍的な元型的イメージ

以前に「ヨハネの黙示録と旧約聖書の三つの預言書との関係」の記事などで書いたように、キリスト教の聖典である新約聖書の最後の書として位置づけられているヨハネの黙示録において登場する

七つの頭十本の角十の王冠を持ち世界を滅亡へと導いていくとされている黙示録の獣の異形の姿は、直接的には、

旧約聖書ダニエル書において登場する海中から現れる四頭の獣についての幻や、イザヤ書とエゼキエル書において描かれている異形の姿をした天使たちの形象のうちに、

そうしたヨハネの黙示録における獣の姿につながっていくような共通するイメージを見いだいしていくことができると考えられることになるのですが、

その一方で、

こうしたヨハネの黙示録において登場する獣の異形の姿は、旧約聖書や新約聖書といったキリスト教的な世界観の外側の世界

例えば、

古代ギリシア神話において登場する神にも比肩する強大な力を持ったテュポーンといった異形の怪物たちの存在のうちにも、そうした黙示録の獣の異形の姿に通底するような普遍的な元型的イメージを見出していくことができると考えられることになります。

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ヨハネの黙示録における獣の異形の姿と神の敵対者であるサタンとの関係

新約聖書ヨハネの黙示録においては、新約聖書において神の敵対者として位置づけられているサタンすなわち悪魔と呼ばれる存在が、竜と呼ばれる存在に姿を変えたうえで、

そうしたサタンの化身として竜が、深淵なる海の底から異形の姿をした獣と呼ばれる存在を呼び出し、その獣に自らが持つ神にも比肩する強大な力と権威とを与えることによって、世界を破滅へと導いていくことになるのですが、

そうしたヨハネの黙示録における記述においては、具体的には以下のような形で、こうした黙示録の獣と呼ばれる存在の異形の姿が描かれていくことになります。

・・・

わたしはまた、一匹の獣が海の中から上って来るのを見た。これには十本の角と七つの頭があった。それらの角には十の王冠があり、頭には神を冒涜するさまざまの名が記されていた。

わたしが見たこの獣は、豹に似ており、足は熊の足のようで、口は獅子の口のようであった竜はこの獣に、自分の力と王座と大きな権威とを与えた

この獣の頭の一つが傷つけられて、死んだと思われたが、この致命的な傷も治ってしまった。そこで、全地は驚いてこの獣に服従した。

竜が自分の権威をこの獣に与えたので、人々は竜を拝んだ。人々はまた、この獣をも拝んでこう言った。「だれが、この獣と肩を並べることができようか。だれが、この獣と戦うことができようか。」

(新約聖書「ヨハネの黙示録」13章1節~4節)

・・・

つまり、こうした新約聖書ヨハネの黙示録における記述においては、

黙示録の獣と呼ばれる存在は、

神の敵対者であるサタンから力を与えられることによって、深淵なる海の底からその姿を現すことになるとされていて、

そうした黙示録の獣の姿は、具体的には、

その体からは七つの頭が生えていて、その頭から生えている十本の角には十の王冠がかぶせられ、首から下は豹と熊と獅子とが合わさったような姿をしているという異形の姿をした怪物として描かれていると考えられることになるのです。

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ギリシア神話の怪物テュポーンとヨハネの黙示録の獣に共通する普遍的な元型的イメージ

そして、それに対して、

詳しくは、前回の記事で書いたように、ギリシア神話においておいては、天空を司る神であるゼウスを盟主とするオリュンポスの神々と、大地を司る女神であるガイアが率いる巨人たちとの間で行われたギガントマキアと呼ばれる天界と地上の世界の支配権をめぐる神々の戦いの末に

こうしたギガントマキアと呼ばれる神々の戦いに敗れて地上へと堕とされることなった大地の女神ガイアは、自分自身と暗黒や深淵とも呼ばれるタルタロスとの間に生まれたテュポーンと呼ばれるギリシア神話に登場する最大最強の怪物を呼び出すことによって、ゼウスに対して最後の戦いを挑んでいくことになります。

つまり、そういった意味では、

こうしたギリシア神話の物語において登場するテュポーンと呼ばれる怪物の存在は、

天空を司る主神ゼウスの敵対者となった大地の女神ガイアから力を与えられることによって、タルタロスすなわち暗黒や深淵とも呼ばれる地の底からその姿を現すことになるとされていて、

そうしたテュポーンと呼ばれる怪物の姿は、具体的には、

その体からは竜のような姿をした百の頭が生えていて、腰から下は巨大な毒蛇のような姿をした足がとぐろを巻いており、全身には羽が生えていて目と口からは炎を吐き出しながら叫び声を上げて天空へと突進していくという恐ろしい異形の姿をした怪物として描かれていくことになるのです。

ちなみに、

新約聖書におけるヨハネの黙示録の著者であるとされている使徒ヨハネが生きていたのは紀元後1世紀ごろの時代であったと考えられるのに対して、

こうしたテュポーンと呼ばれる怪物やオリュンポスの神々が登場するギリシア神話は遅くても紀元前8世紀ごろの時代には現代にも伝わるようなある程度洗練された形で成立していたと考えられることになるのですが、

そういった意味では、以上のように、

こうした新約聖書ヨハネの黙示録において描かれている世界を滅亡へと導いていくとされている黙示録の獣の姿は、

こうした古代ギリシア神話の物語のなかに登場するテュポーンと呼ばれるような異形の姿をした深淵の怪物の姿などにも象徴されるような

古代世界における神話においても共有されている普遍的な元型的イメージからの深い影響を受けることによって形づくられていったとも捉えていくことができると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:ギガントマキアとティタノマキアの違いとは?二つの神々の戦いにおける大地の女神ガイアと人間の位置づけのあり方の違い

前回記事:テュポーンとは何か?ギリシア神話におけるゼウスとの壮絶な戦いとアダマスの鎌とシチリア島のエトナ火山

関連記事:新約聖書のヨハネの黙示録と旧約聖書におけるダニエル書とイザヤ書とエゼキエル書という三つの預言書との関係とは?

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