リケッチアという細菌の名称の由来と一般的な細菌との大きさの比較および偏性細胞内寄生菌としてリケッチアの具体的な性質
前回までの一連の記事では、球形や棒状そして螺旋状(らせんじょう)といった細胞の形状によって分類されることになる
球菌や桿菌やらせん菌といった三つの細菌のグループにおける具体的な特徴と、それぞれのグループに分類されることになる代表的な細菌の種類について順番に考察してきましたが、
こうした球菌や桿菌やらせん菌といった一般的な細菌のグループのうちのいずれのグループにも分類することができない特殊な構造をした細菌の種族としてその他にも、
リケッチアやマイコプラズマやクラミジアと呼ばれるような細菌の種族の名が挙げられることになると考えられることになります。
そこで、今回の記事では、
こうしたリケッチアとマイコプラズマとクラミジアという三つの特殊な細菌の種族のうち、はじめに挙げたリケッチアという細菌の名称の由来と一般的な細菌との大きさの比較といった点について詳しく考察していきたいと思います。
リケッチアという細菌の名称の由来と一般的な細菌との大きさの比較
まず、こうした
リケッチア(Rickettsia)と呼ばれる細菌の種族は、生物学的な分類においては、偏性細胞内寄生菌と呼ばれる細菌のグループに分類されることになるグラム陰性の小型の細菌の一種として位置づけられることになり、
リケッチアという細菌の名称自体の由来は、
こうしたリケッチアと呼ばれる微生物の発見者のうちの一人であり、リケッチアを病原体とする細菌感染症の一種である発疹チフスの研究の際にこの感染症に罹患して39歳の若さで命を落とすことになった
19世紀のアメリカの病理学者であるハワード・リケッツ(Howard Taylor Ricketts、1871~1910年)の名前にちなんで付けられた名称であると考えられることになります。
そして、
一般的な球菌の大きさがだいたい直径1マイクロメートルくらいであるのに対して、球形の状態にあるリケッチアの大きさは直径0.3~0.5マイクロメートルくらいであるというように、
リケッチアは一般的な細菌より一回り小さい細菌の種族として位置づけられることになるなるのですが、
その一方で、
こうしたリケッチアと呼ばれる細菌は細長い棒状の形や連鎖状や繊維状の形状へと変形していくケースもあり、
その場合は、幅0.1マイクロメートル、長さは1~4マイクロメートルくらいの長さにまで細胞体が引き延ばされるような形で存在しているケースもあると考えられることになります。
そして、このように、
こうしたリケッチアと呼ばれる細菌は、多形性を示す非常に小型の細菌の一種として位置づけられることになると考えることになるのです。
偏性細胞内寄生菌としてリケッチアの具体的な性質
また、
リケッチアの具体的な特徴としては、その他にも、偏性細胞内寄生菌と呼ばれる細菌のグループに分類されるという点が挙げられることになります。
一般的な細菌の場合は、宿主あるいは感染する対象となる生物の体外の自然環境においても、ある程度自立して生命活動を営むことができると考えられ、
それぞれの細菌が増殖していくことができる環境条件の違いに応じて、好気性や嫌気性といった細菌のグループへとさらに分類されていくことになると考えられることになるのですが、
それに対して、
リケッチアの場合は、宿主となる生物の細胞の内部においてだけしか増殖することができず、生物の体外の自然環境の中ではすぐに死滅してしまうことになるため、
宿主となる生物の細胞内に寄生することによってしか生命活動を営むことができないという偏った性質を持つ細菌であるという意味において、こうした偏性細胞内寄生菌という呼び名が付けられることになったと考えられることになるのです。
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次回記事:リケッチアの具体的な三つの特徴とリケッチアを病原体とする代表的な細菌感染症の種類
前回記事:桿菌に分類される細菌の大きさの比較、全部で36種類の桿菌に分類される代表的な細菌の長径の長さの違い
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