ナグビブリオとコレラ菌の違いとは?血清型に基づく両者の区別とナグビブリオという病原菌の名称の由来、らせん菌に分類される代表的な細菌の種類とは?④

前回の記事では、らせん菌と呼ばれる細菌のグループに分類される代表的な細菌の種類のうち、

コレラと呼ばれる激しい下痢重度の脱水症状を主症状とする伝染病の原因となるコレラ菌と呼ばれる細菌の種類の具体的な特徴症状や治療法のあり方について詳しく考察してきましたが、

こうしたコレラ菌と呼ばれる細菌と非常によく似通った特徴を持つ細菌の種類としては、その他にも、ナグビブリオと呼ばれる細菌の種類の名が挙げられることになります。

それでは、

こうしたナグビブリオコレラ菌と呼ばれる二つの細菌の種族は、それぞれどのような点に具体的な特徴の違いが見いだされることになると考えられ、

ナグビブリオという病原菌の名称の由来はどのようなところに求められることになると考えられることになるのでしょうか?

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ナグビブリオとコレラ菌というビブリオ属に分類される二つの細菌の種族

まず、前回の記事でも書いたように、

コレラ菌と呼ばれる細菌は、ラテン語における正式な学名においては、ビブリオ・コレラエ(Vibrio choleraeと呼ばれているように、生物学における分類においては、

ビブリオ属と呼ばれる細菌のグループに分類される細菌の種類として位置づけられることになるのですが、

今回の記事で新たに取り上げることになった

ナグビブリオ(NAG Vibrioと呼ばれる細菌の種族も、前回取り上げたコレラ菌と同じようにビブリオ属と呼ばれる細菌のグループに分類されることになり、

細胞の大きさ形状、あるいは、薬剤への反応といった生化学的な特性もほとんどコレラ菌と同じ特徴を示すことになります。

それでは、

こうしたナグビブリオコレラ菌と呼ばれる二つの細菌の種族は、それぞれどのような点において具体的に区別されることになるのか?ということについてですが、

それについては、重度の脱水症状を引き起こすコレラの原因となるコレラ菌を他のビブリオ属に分類される細菌の種類から区別する一つの基準となる血清型の違いに基づいて区別がなされていくことになるのです。

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ナグビブリオという名称の由来と血清型に基づく細菌の種族の分類

一般的に、

細菌やウイルスなどの病原体は、人体の免疫細胞が反応して抗体と呼ばれる免疫物質をつくり出す対象となる細菌の細胞ウイルス粒子の表面などに存在する抗原のタイプの違いに応じて、複数の血清型へと分類されていくことになると考えられることになります。

そして、

上述したコレラと呼ばれる伝染病の原因となるコレラ菌の種類は、O1またはO139と呼ばれる血清型に分類されることになるのですが、

その一方で、

ナグビブリオと呼ばれる細菌の種族は、そうした、O1またはO139コレラ菌に対する抗体を含む血清、すなわち、抗血清に対して凝集反応と呼ばれる抗原が一か所に固まって塊状になる抗原抗体反応を示さないため、

血清型に基づく病原体の分類という観点からは、コレラの原因となるコレラ菌とは別の種類の細菌の種族として位置づけられることになると考えられることになります。

そして、

こうしたナグビブリオと呼ばれる病原菌の名称の由来としては、

 コレラ菌とほぼ同じ細胞構造をしているにもかかわらず、コレラの原因菌の判別基準となるO1またはO139抗血清に対して凝集性を示さないビブリオ属に分類される細菌という意味において、

英語で「凝集性のない」を意味するnon-agglutinable(ノン・アグルチナブル) という単語と「ビブリオ属」を意味するVibrio(ビブリオ)という単語を合わせて、

Non-Agglutinable Vibrio、すなわち、ナグビブリオ(NAG Vibrioという名称が用いられることになったと考えられることになるのです。

ナグビブリオを原因とする感染症の具体的な症状とコレラの症状の比較

そして、

こうしたナグビブリオと呼ばれる細菌の種族によって引き起こされる細菌感染症においては、通常の場合、コレラの症状とよく似た激しい下痢やおう吐といった消化器系を中心とする症状が引き起こされることになるものの、

そうした下痢やおう吐などの症状は、本家となるコレラの症状と比べると比較的軽症の症状にとどまるケースが多いと考えられることになります。

しかし、その一方で、

ナグビブリオに分類される細菌のなかにも、コレラ菌と同様に、小腸の粘膜における水分や電解質の吸収を著しく妨げることによって重度の脱水症状などを引き起こす危険性のあるコレラ毒素と呼ばれる毒素を生産するタイプの細菌の種類も含まれているため、

そういった意味では、

こうしたナグビブリオと呼ばれる細菌は、感染予防適切な治療の判断といった点において、前回取り上げたコレラ菌と同等の注意を払うべき細菌の種類として位置づけられることになると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:スピロヘータという名称のラテン語と古代ギリシア語における由来と細長い螺旋状の形状をした菌体の構造の仕組み、らせん菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑤

前回記事:コレラ菌の具体的な特徴と経口補水液や輸液療法を用いたコレラの治療法の確立、らせん菌に分類される代表的な細菌の種類とは?③

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