桿菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑪チフス菌とパラチフス菌の具体的な特徴とサルモネラ菌との関係
前回の記事では、桿菌と呼ばれる細菌のグループに分類されることになる代表的な細菌の種類のうち、赤痢菌と呼ばれる粘血便を伴うような出血性の大腸炎を引き起こす原因となる細菌の種類の具体的な特徴について詳しく考察してきましたが、
そうした腸管出血を伴うような重症の細菌性腸炎を引き起こす原因となる代表的な細菌の種類としては、その他にも、チフス菌やパラチフス菌といった桿菌の種類の名が挙げられることになると考えられることになります。
チフス菌の具体的な特徴とパラチフス菌やサルモネラ菌との関係
まず、はじめに挙げた
チフス菌(Salmonella enterica serovar Typhi、サルモネラ・エンテリカ・セロヴァール・タイフィ)とは、幅0.5マイクロメートル、長さ2マイクロメートルほどの大きさをした周毛と呼ばれる細胞の表面に複数の鞭毛が生えた構造をした棒状の形状をしたグラム陰性の嫌気性桿菌の一種であり、
こうしたチフス菌と呼ばれる細菌は、後述するパラチフス菌と共に、以前に、食中毒を引き起こす代表的な細菌の種類のうちの一つとして取り上げたサルモネラ菌と同じサルモネラ属に分類される病原菌の種類として位置づけられることになり、
主に、チフス菌を保有する患者の排泄物などを介して汚染された飲食物などを通じた経口感染によって感染を広げていくことになると考えられることになります。
そして、
こうしたチフス菌を原因とする細菌感染症である腸チフスにおいては、チフス菌が小腸の大腸と連結する終末部分にあたる回腸の腸管膜のリンパ節において増殖していったうえで、
リンパ管から血管内へと侵入した細菌が血流を介して全身へと広がっていくことによって、腹痛や発熱、関節痛や頭痛、肝臓や脾臓の腫大といった様々な症状が引き起こされていくことになるほか、バラ疹様皮疹と呼ばれる腹部や胸部にピンク色の斑点が現れる特徴的な症状が現れることになり、
その後、再び腸管内へと戻ってきたチフス菌がそこを拠点として増殖を進めていくことによって、腸内出血や腸穿孔、高熱の持続による全身衰弱などといった重症の細菌性腸炎の症状が引き起こされてしまうことになると考えられることになるのです。
パラチフス菌によって引き起こされる細菌感染症の症状の特徴と細菌性胃腸炎の病原菌としての危険性の位置づけ
そして、それに対して、その次に挙げた
パラチフス菌(Salmonella enterica serovar Paratyphi、サルモネラ・エンテリカ・セロヴァール・パラタイフィ)によって引き起こされるパラチフスと呼ばれる細菌感染症においては、
腹痛や頭痛、高熱の持続による全身衰弱といったチフス菌に感染した場合と同様の症状が見られていくことになるほか、一部の患者には皮疹やバラ色の斑点といった腸チフスに特徴的な症状も現れることになります。
このように、こうしたパラチフスと呼ばれる感染症は、一般的には、比較的軽症の腸チフスによく似た経過をたどる細菌感染症として位置づけられることになるのですが、
パラチフス菌の感染においても、抗生物質の投与といった適切な治療がなされていないケースや、重症の腸の合併症が引き起こされてしまうケースなどにおいては、命に関わるような重篤な症状へと進行していってしまう場合もあるため、
こうしたパラチフス菌と呼ばれる細菌は、前述したチフス菌や、前回の記事で取り上げた赤痢菌などと同様に、
その他のより一般的な細菌性胃腸炎の原因となるサルモネラ菌や腸炎ビブリオ、セレウス菌、ボツリヌス菌、ウェルシュ菌、腸管出血性大腸菌以外の病原性大腸菌、カンピロバクターといった一般的な病原菌の種類などと比べても、
特に注意することが必要な危険な病原菌の種類として位置づけられることになると考えられることになるのです。
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次回記事:炭疽菌の具体的な特徴と「炭疽」という病名の由来と三つの病態の区分、桿菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑫
前回記事:桿菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑩赤痢菌の具体的な特徴とO157などの腸管出血性大腸菌のベロ毒素との関係
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