令和、平成、昭和、大正、明治の英語での呼び名とは?語源的な意味に基づく五つの元号を表す言葉の英語における解釈
前回の記事で書いたように、2019年4月1日に公表された5月1日の新天皇の即位に合わせて新たに使用されることになる新元号である「令和」という元号の英語での訳し方については、
“order and harmony”(秩序と平和)あるいは“order and peace”(秩序と調和)といった訳し方が一般的な解釈として広がっていったのに対して、
「令和」の「令」という漢字に対しては、そうしたorder (秩序)やcommand(命令)といった解釈のあり方のほかに、good(善)やbeautiful(美)といった英語における解釈のあり方も示されていました。
それでは、
こうした「令和」という新元号のほかに、1868年にはじまった明治時代以降、現代に至るまでに使われてきた明治、大正、昭和、平成という四つの元号は、それぞれ英語においてはどのように訳されることになると考えられることになるのでしょうか?
「明治」という元号の英語での呼び名
まず、
1868年にはじまる明治時代のことを意味する元号である「明治」という言葉は、一般的に、英語においては、
“enlightened government”(エンライテンド・ガバメント)といった言葉として訳されているケースが多く、
英語において、enlighten(エンライテン)とは「啓蒙する」「明るくする」といった意味を表す動詞であるのに対して、government(ガバメント)とは「政府」あるいは「統治」といった意味を表す名詞ということになるので、
こうした「明治」という元号の英訳にあたる“enlightened government”という言葉は、日本語に再び直訳していくと「啓蒙された統治」といった意味を表す言葉であると考えられることになります。
「大正」という元号の英語での呼び名
そして、その次に挙げた
1912年にはじまる大正時代のことを意味する元号である「大正」という言葉は、英語においては、主に、
“great righteousness”(グレート・ライチャスネス)といった言葉として訳されていて、
英語において、great (グレート)は「大きな」「偉大な」といった意味を表す形容詞であるのに対して、righteousness(ライチャスネス)とは「正義」や「公正」、「高潔」といった意味を表す名詞ということになるので、
こうした「大正」という元号の英訳にあたる“great righteousness”という言葉は、日本語に再び直訳していくと「偉大なる正義」といった意味を表す言葉であると考えられることになります。
「昭和」という元号の英語での呼び名
また、その次に挙げた
1926年にはじまる昭和時代のことを意味する元号である「昭和」という言葉は、一般的に、英語においては、
“enlightened harmony”(エンライテンド・ハーモニー)あるいは“enlightened peace”(エンライテンド・ピース)といった言葉として訳されていて、
こうした「昭和」という元号の「昭」という漢字に対して、前述した「明治」という元号の「明」という漢字の場合と全く同じように、enlighten(エンライテン)という「啓蒙」のことを意味する単語が英訳として当てられているというのは、少し興味深いところがあるように思います。
そして、後半の「和」という漢字に対して当てられているharmony(ハーモニー)という名詞は「調和」を、peace(ピース)という名詞は「平和」をそれぞれ意味することになるので、
こうした「昭和」という元号の英訳にあたる“enlightened harmony”あるいは“enlightened peace”という言葉は、日本語に再び直訳すると、それぞれ「啓蒙された調和」あるいは「啓蒙された平和」といった意味を表す言葉であると考えられることになります。
「平成」という元号の英語での呼び名
そして、最後に挙げた
1989年にはじまる平成時代のことを意味する元号である「平成」という言葉は、英語においては、主に、
“achieving peace”(アチービング・ピース)といった言葉として訳されているケースが多く、
英語において、achieve(アチーブ)とは「達成する」「成し遂げる」といった意味を表す動詞であるのに対して、peace(ピース)は「平和」を意味することになるので、
こうした「平成」という元号の英訳にあたる“achieving peace”という言葉は、日本語に再び直訳すると「平和の成就」といった意味を表す言葉として捉えることができると考えられることになるのです。
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以上のように、
こうした明治、大正、昭和、平成、令和という五つの元号は、それぞれの言葉が持つ語源的な意味に基づく英語における呼び名としては、それぞれ、
「明治」は、“enlightened government”(エンライテンド・ガバメント)
すなわち、「啓蒙された統治」、
「大正」は、“great righteousness”(グレート・ライチャスネス)
すなわち、「偉大なる正義」、
「昭和」は、“enlightened harmony”(エンライテンド・ハーモニー)
すなわち、「啓蒙された調和」、
「平成」は、“achieving peace”(アチービング・ピース)
すなわち、「平和の成就」、
「令和」は、“order and harmony”(オーダー・アンド・ハーモニー)
すなわち、「秩序と調和」、
といった意味を持つ言葉として解釈していくことができると考えられることになるのです。
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次回記事:「昭和」「平成」「令和」に共通する一つのイメージとは?三位一体の関係によって結ばれている三つの元号の本質的な意味
関連記事:「令和」の「令」という漢字に込められた二つの意味とは?神聖なる権威と秩序を表す漢字の成り立ちと二つの具体的イメージ
前回記事:「令和」は英語やドイツ語やフランス語ではどう訳されるのか?「善」と「美」を表す言葉としての「令」という字義の解釈
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