肝蛭(カンテツ)が蛭(ヒル)に分類されない理由とは?扁形動物である肝蛭と環形動物である蛭の具体的な特徴の違い
以前に「吸虫による寄生虫感染症の原因となる代表的な12種類の吸虫の種類」の記事などにおいて取り上げたように、
寄生虫感染症の中には、肝蛭(カンテツ)と呼ばれる寄生虫によって引き起こされる肝機能障害などを特徴とする感染症の種類が挙げられることになるのですが、
こうした肝蛭と呼ばれる寄生虫は、その名前の中に「蛭(ヒル)」という漢字が含まれてはいるものの、
水中や沼地あるいは湿度の多い森林などに生息する吸血生物としてのイメージが強いヒル類には分類されることがない互いに似て非なる特徴を持った生物の種類であると考えられることになります。
吸虫の一種である肝蛭の具体的な特徴と肝蛭症の症状
まず、
こうした肝蛭(カンテツ)と呼ばれる寄生虫は、成虫の大きさが体長2~3センチメートルくらいに成長する楕円形または樹葉状の形をした扁形動物に分類される吸虫の一種であり、
中間宿主にあたるヒメモノアラガイといった淡水性の巻貝の体内で成長した幼虫が、水中を泳いで近くの水草などに付着し、
そうした肝蛭の幼虫が付着したクレソンなどの水草や、ミョウガやパセリといったハーブなどを生食の形で体内へと取り入れてしまったケースや、
そうした汚染された水草などの植物を飼料として与えられていた牛などの家畜の体内に寄生していた肝蛭がレバーの生食などを体内へと取り入れてしまった場合などに、人間に感染を広げていくケースがあると考えられることになります。
そして、
こうした肝蛭の感染によって引き起こされる肝蛭症と呼ばれる寄生虫感染症においては、前述した肝吸虫の場合と同様に、人間の体内に侵入した肝蛭が、肝臓や胆管内に寄生することによって、
腹痛や下痢、黄疸や貧血といった消化器系の症状や肝機能障害が引き起こされていくことになると考えられることになるのです。
扁形動物に分類される肝蛭と環形動物に分類されるヒルの具体的な特徴の違い
そして、
こうした寄生虫の一種である肝蛭が分類されることになる扁形動物(へんけいどうぶつ)と呼ばれる生物の種族は、
その名の通り、体全体が平たい形をした楕円形または細長いひも状の形状をしているのですが、そうした平たい体の内部には、複雑な体節構造は一切存在せず、体全体が一つにつながった一体的な構造をしていて、
心臓や血管といった循環器系すら存在しないという非常に単純な構造をした原始的な形態をもつ生物の種族として位置づけられることになると考えられることになります。
そして、その一方で、
こうした肝蛭という名称の内に含まれている「蛭」という漢字が直接的に指し示すことになる人間などの動物の体表面に取り付いて血を吸う吸血動物としてのイメージが強い蛭(ヒル)と呼ばれる生物の種族は、
肝蛭が分類されている扁形動物ではなく、環形動物(かんけいどうぶつ)と呼ばれる生物の種族に分類されることになります。
そして、
こうした環形動物と呼ばれる生物の種族は、細長い円筒状あるいはやや扁平な形状をしているため、前述した肝蛭が分類される扁形動物に外見上はよく似た形状をしているものの、その内部構造は扁形動物とは大きく異なっていて、
環状すなわち輪のような円い形をした体節が直列に並んでいく体節構造によって体全体の構造が形づくられて、その内部には血管などの循環器系や、腎菅といった排出器官なども備えた複雑な構造をもった生物の種族として位置づけられることになるのです。
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以上のように、
肝蛭(カンテツ)と呼ばれる寄生虫の名前には、「蛭(ヒル)」という漢字が含まれているものの、
こうした人間の肝臓や胆管に寄生する寄生虫の一種である肝蛭と、人間などの動物の体表面に体表面に取り付いて血を吸う吸血動物としてのイメージの強い蛭(ヒル)と呼ばれる生物の種族は、
前者の肝蛭(カンテツ)は、複雑な体節構造は一切存在せず、体全体が一つにつながった一体的な構造をしていて、心臓や血管といった循環器系すら存在しない非常に原始的で単純な構造をした生物の種族である扁形動物に分類されるのに対して、
後者の蛭(ヒル)は、環状すなわち輪のような円い形をした体節が直列に並んでいく体節構造によって体全体の構造が形づくられていて、その内部には血管などの循環器系や、腎菅といった排出器官なども備えた複雑な構造をもった生物の種族である環形動物に分類されるというように、
生物学的には、こうした肝蛭(カンテツ)と蛭(ヒル)と呼ばれる二つの生物の種族は、互いに全く異なる生物のグループに位置づけられることになると考えられることになるのです。
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次回記事:脱皮動物に分類される代表的な生物の種類とは?節足動物を筆頭とする八つの生物の部門に分類される多様な生物の種類
前回記事:環形動物と線形動物の具体的な特徴の違いとは?「環形」と「線形」という名前の由来と両者に分類される代表的な生物の種類
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