食中毒の原因となる代表的なウイルスの種類とは?厚生労働省の食中毒統計と東京都福祉保健局におけるウイルス性食中毒の分類
カンピロバクターやウェルシュ菌、サルモネラ菌や黄色ぶどう球菌、さらには、O157などに代表される病原性大腸菌といった食中毒の原因となる代表的な細菌の種類について詳しく考察してきましたが、
食中毒の原因となる代表的な病原体の種類としては、こうした細菌性の食中毒のほかにも、ウイルスが原因となるウイルス性の食中毒の存在も挙げられることになります。
そして、
そうしたウイルス性の食中毒の原因となる代表的なウイルスの種類としては、以下で述べるような全部で五つのウイルスの種類を挙げることができると考えられることになります。
厚生労働省の食中毒統計におけるウイルス性食中毒の分類とノロウイルス
まず、
厚生労働省の食中毒統計における食中毒事件の病原体となる細菌やウイルスの種類の区分においては、
細菌性の食中毒の原因となる病原菌は、サルモネラ菌やぶどう球菌、ボツリヌス菌といった全部で16種類の病原菌の種類へと細かく分類されていくことになるのに対して、
ウイルス性の食中毒の方は、具体的な病原ウイルスの種類としては、「ノロウイルス」というただ一つのウイルスの種類のみが挙げられていて、
その他のウイルスが原因となる食中毒については、その病原体となったウイルスは、「その他のウイルス」という項目へと一括されてしまう形で分類がなされていくことになります。
実際、
2017年の厚生労働省の食中毒統計における統計データを例にとってみた場合でも、
2017年に保健所への届け出のあった全部で1014件、患者数にして16464人にもおよぶ食中毒事件のうち、
ウイルスが原因となったウイルス性の食中毒の件数は全部で221件、患者数にすると8555人になるのですが、
このうちの件数としては214件、患者数としては8496人にもおよぶ食中毒事件がこうしたノロウイルスが原因となった食中毒として数え上げられることになります。
そして、そういった意味では、
日本国内において発生しているウイルス性の食中毒事件のうち、
件数については、214÷221≒0.968
患者数については、8496÷8555≒0.993
つまり、
食中毒事件の件数としてはおよそ97%、患者数としては実に99%以上のウイルス性の食中毒が、こうしたノロウイルスが原因となる食中毒として位置づけられることになるのです。
東京都福祉保健局の分類に基づく食中毒の原因となる代表的な五つのウイルスの種類
以上のように、
細菌ではなくウイルスが原因となって引き起こされるウイルス性の食中毒のほとんどはノロウイルスによって引き起こされているといっても過言ではないと考えられることになるのですが、
それでも、
ノロウイルスと比べると比較的少数の事例にはなるものの、ノロウイルスのほかにもウイルス性の食中毒の原因となる代表的なウイルスの種類をいくつか挙げていくことはできると考えられ、
例えば、
東京都福祉保健局における食中毒を引き起こす病原性微生物の分類においては、ウイルス性の食中毒の原因となる危険性のある病原性ウイルスの項目において、
ノロウイルスのほかにも、ロタウイルスやサポウイルス、さらには、A型肝炎ウイルスやE型肝炎ウイルスといったウイルス性の肝炎を引き起こすことで有名なウイルスの種族などについても、食中毒の原因となる危険性のあるウイルスの種類として挙げられていくことになるのです。
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以上のように、
今回の記事で取り上げた厚生労働省の食中毒統計における統計データや、東京都福祉保健局における食中毒を引き起こす病原性微生物の分類のあり方などに基づくと、
一般的に、日本国内において発生する食中毒の原因となる代表的なウイルスの種類としては、
ノロウイルスを筆頭に、ロタウイルス、サポウイルス、A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルスという全部で五つのウイルスの種類を挙げることができると考えられることになるのです。
・・・
次回記事:食中毒の原因となる代表的な五つのウイルスの種類と具体的な特徴とは?①ノロウイルスによる食中毒の特徴とウイルスの構造
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