ベロ毒素とは何か?ベロ細胞の名前の由来となったエスペラント語における二重の意味とアフリカミドリザルの腎臓との関係

ベロ毒素とは、O157などに代表される一部の腸管出血性大腸菌が生産する人体に対する有害性の高い毒素のことを意味する言葉であり、

具体的には、腸管出血性大腸菌感染症においては、こうしたベロ毒素と呼ばれる毒素の働きによって、大腸の粘膜細胞が破壊されることで出血性の下痢などの消化器系の症状が引き起こされるだけではなく、

この毒素が腸壁から血管内へと侵入して腎臓の毛細血管へと流れ込むことによって、急性腎不全溶血性貧血血小板減少症といった重篤な全身症状が引き起こされる危険性が生じていくことになります。

そして、

こうしたベロ毒素と呼ばれる毒素のことを意味する言葉は、その名前の由来となった細胞自体のさらなる名前の由来にまでさかのぼって考えていくと、それは日本人とも非常に深い関わりのある言葉であるとも考えらえることになります。

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ベロ毒素とアフリカミドリザルの腎臓に由来するベロ細胞との関係

そもそも、

こうしたベロ毒素(verotoxin、ベロトキシン)と呼ばれる言葉に含まれている「ベロ」(veroという単語は、

医学実験などの際の細胞培養において用いられる

ベロ細胞(Vero cell、ベロ・セル)と呼ばれるアフリカミドリザルの腎臓上皮細胞に由来する人為的に生体外で培養されている細胞のことを意味する言葉であり、

ベロ毒素と呼ばれる毒素は、こうしたベロ細胞と呼ばれる培養細胞に対して、極めて強い毒性を示すために、ベロ細胞に対する致死性を発揮する毒素といった意味で、こうしたベロ毒素という名前が付けられることになったと考えられることになります。

そして、

こうしたベロ細胞と呼ばれる培養細胞は、細胞の機能がガン細胞化することないままの状態で劣化することなく何世代にもわたって培養し続けていくことができるように調整された細胞株、

すなわち、

細胞分裂を無制限に繰り返すことによって、永遠に生存し増殖し続けていくことが可能となった人為的に培養された不死なる細胞として位置づけられることになるのです。

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ベロ細胞の名前の由来となったエスペラント語における二重の意味

そして、

1962527に、

こうしたベロ細胞と呼ばれる不死なる培養細胞をつくり出した日本の細菌学者として知られる千葉大学医学部安村教授は、

この細胞を命名するにあたって、世界共通の国際的な人工言語であるエスペラント語において「緑色の腎臓」を意味するverda reno(べルダ・レノ)という言葉の略語としてそれをベロ細胞(Vero cell、ベロ・セル)と命名したのですが、

こうしたベロ細胞のベロ(veroという言葉自体は、同じエスペラント語において「真理」や「真実」といった意味を表す言葉でもあると考えられることになります。

つまり、そういった意味では、

こうしたベロ細胞と呼ばれる培養細胞の生みの親である安村教授は、

この細胞を新たにつくり上げていく際の大本の母体となった細胞アフリカミドリザルの腎臓の細胞に由来するという細胞自体の物質的な由来と、

そうして新たに創り上げられた細胞が、生物本体の身体から切り離されてもガン細胞化することも劣化することもなく無限に増殖し続けていくことができるという完全なる不死性を獲得した細胞であり、

さらには、そうした不死なる細胞を様々な医学実験に利用することによって、細胞生物学や医学の分野における学問探究や科学技術の発展に大きく貢献していくことができるという、ある意味では生命の「真理」をも解き明かすような可能性を秘めた偉大な細胞でもあるという二重の意味において、

そうして新たに創り上げられた不死なる培養細胞のことをベロ細胞と名付けたとも考えられることになるのです。

・・・

次回記事:妖怪人間ベム・ベラ・ベロの名前の由来とは?アメリカなどの海外のSF作品とカマキリのような肉食昆虫の姿との関係

前回記事:世界におけるO157を病原菌とする食中毒事件の歴史とは?アメリカとヨーロッパにおける代表的な事例、O157の病原体史②

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