統計データで見るじゃんけんで一番強い初手は?①めざましテレビとサザエさん
じゃんけんをするときに、グー、チョキ、パーのどの手をだすのが最良の選択なのでしょう?
特に、じゃんけんの初手で何を出すのが最善の選択なのか?
このシンプルな問題は、子供の頃に、友達との勝負の中などで、誰しも一度は考えたことがあるテーマだと思います。
今回のシリーズでは、このじゃんけんの初手問題について、
実際のじゃんけんで初手に出された手の統計データ、
そして、じゃんけんの初手を選択する個人の心理的傾向の分析、から迫っていきたいと思います。
それではまずは、世間に広く公開されている、いろいろなじゃんけんでの初手(つまり、一回限りの単発の勝負としてのじゃんけんの手)の記録のデータを集めて、
単純にどの手が一番多く出されているのか?
そして、そのデータにしたがえば、
統計上、どの手を出せば一番勝てる確率が高いのか?
ということについて見ていきましょう。
サザエさんじゃんけんで一番勝つ確率が高い手は?
「サザエさんじゃんけん」とは、日本の国民的アニメ「サザエさん」で、1991年の秋以降、毎回の放送後の予告編最後でおこなわれている、
グー、チョキ、パーの三つの棒付き札を持ったサザエさんが、その中から一つの札を選んで出す、という形で、
サザエさんと視聴者がじゃんけんをするというテレビ企画です。
サザエさんとの一発勝負の単発で行われるじゃんけんなので、じゃんけんの初手問題の研究のためにはもってこいの分かりやすいデータということになります。
そんなサザエさんじゃんけんについて、
「サザエさんの過去の手 一覧」に載っている1991年10月から2016年1月24日までの、じゃんけんが行われた全1223回の記録によると、
サザエさんが出したすべての手の回数はそれぞれ以下の通りです。
グー:394回、チョキ:424回、パー:405回
これをパーセンテージに直すと以下のようになります。
グー:32.2%、チョキ:34.7%、パー:33.1%
見ての通り、僅差と言えば僅差ですが、サザエさんの手は、
パーがグーよりは0.9%多い、
さらにパーよりもチョキが1.6%多いので、
サザエさんはチョキを出すことが一番多く、
したがって、一番多いチョキに勝つために、
サザエさんじゃんけんでは、こちらがグーを出すのが一番勝つ確率が高い。
つまり、サザエさんじゃんけんの統計データにしたがえば、
じゃんけんの初手では、グーが一番強い手、
ということになります。
めざましじゃんけんで一番勝率が高い手は?
「サザエさんじゃんけん」と同じくらい、テレビのなかで有名な「じゃんけん」というと、
フジテレビの朝番組「めざましテレビ」で行われている「めざましじゃんけん」ということになるかと思います。
「めざましじゃんけん」も、めざましテレビに出演しているゲスト芸能人やアナウンサーとの一回勝負で行われる単発のじゃんけんなので、
そのデータは、一回限りの単発勝負としてのじゃんけん、すなわち、
じゃんけんの初手の研究のためには有用な統計データになると考えられます。
「めざましじゃんけん」については、あまり公式に近い形では、長期にわたるデータの記録をとっているサイトを見つけることはできなかったのですが、
それでも、調べた中では、「めざましじゃんけん攻略」というサイトで、2013年4月から2014年12月の1年と9か月という、比較的長期にわたる連続した記録が掲載されていました。
その21か月、全1319回にわたる、じゃんけんで出されたすべての手の回数について、集計したところ、以下のようになりました。
グー:403回、チョキ:422回、パー:494回
パーセンテージに直すと、
グー:30.5%、チョキ:32.0%、パー:37.5%
です。
これは、「サザエさんじゃんけん」のときとは、かなり違った結果になってしまいましたね。
しかも、見ての通り、突出して、パーが多い。
チョキがグーより1.5%多い、
さらにチョキよりもパーが5.5%多い、
という結果です。
つまり、めざましじゃんけんの統計データにしたがえば、
じゃんけんの初手では、チョキが一番強い手、
ということになります。
1000回以上の試行回数を経て、なお、
一番少ないグーと、一番多いパーとの間に7%もの開きがあるということは、
単なる誤差の範疇ではなく、統計データ上は、
実際に、初手に(単発勝負のじゃんけんで)パーを出すことが好まれる傾向がある
可能性が高いと考えられます。
それが、日本人全体に、あるいは人類全体にある程度普遍的に適応できる傾向なのか、
それとも、テレビの朝番組という番組の性質上、じゃんけんの手を出す人に、芸能人やアナウンサーといった職業上などの偏りがでてくるせいで生じている傾向なのかは微妙なところですが・・・
めざましじゃんけんでの同じ手の最多連続回数は?
余談ですが、このめざましじゃんけんのデータの中で、同じ手が連続して出されたのは、
2014年1月20日の1、2、3回戦から21日の1、2、3回戦までの6連続グーが最多ですが、
じゃんけんで同じ手が6連続して出る確率は、
(初回はグーチョキパーのどれでもよく、あとは初回に出た手がそのあと5連続続いて出ればトータルで6連続同じ手が続いたことになるので、分母は3の6乗ではなく、3の5乗になります。)
同様に、同じ手が7連続して出る確率は、
なので、1319回もの試行回数の場合、同じ手が7連続続くケースくらいまでは出てきてもよさそうにも思えます。
しかし、そうしたケースが排除されているということは、同じ手があまりに連続し過ぎる場合などに、テレビ局の制作サイドが介入してじゃんけんの手を決めている可能性があるとも考えられるでしょう。
しかしその場合は、そもそも6連続もしてしまう時点で、ちょっと同じ手が続きすぎという見方もあるので、
「めざましじゃんけん」で、じゃんけんを実際に出している当人が、どの程度、自律的に手を決めているのかは、統計データ上だけで外から分析する限りでは、ちょっと判然としないところがあります。
まとめ
いずれにせよ、ここまでの結論としては、(「最初はグー」などのバイアスがかかる可能性が高い掛け声なしの)通常のじゃんけんの初手においては、
全1223回の「サザエさんじゃんけん」の統計データにしたがうと、チョキが少し多い(一番少ないグーと比べて+2.5%)ので、
じゃんけんの初手ではグーを出すのが一番勝率が高い選択。
全1319回の「めざましじゃんけん」の統計データにしたがうと、パーがかなり多い(一番少ないグーと比べて+7.0%)ので、
じゃんけんの初手ではチョキを出すのが一番勝率が高い選択。
ということになります。
両方ともテレビ番組の中での企画なので、選択する手に偏りが出てくる場合などはテレビ局の制作サイドからの介入がある可能性も否定できませんが、
「サザエさん」がアニメのキャラクターなので、出す手が一人か比較的少数のスタッフによって選択されている可能性が高いのに対し、
「めざましじゃんけん」では、芸能人やアナウンサーなど比較的大勢の人が関わって手が選択されている可能性が高い点、
また、「サザエさんじゃんけん」の統計データでは、最大値と最小値の差が2.5%と比較的僅差の偏りで、単なる誤差の範疇に収束する可能性があるのに対して、
「めざましじゃんけん」の統計データでは、最大値と最小値の差が7.0%もあり、
元データが全1319回、21か月間の記録であることも考え合わせると、かなり有意義なデータになっている可能性が高い点、
について考慮すると、
通常のじゃんけんの初手に出す一番勝率が高い手について、
どちらかと言えば、「めざましじゃんけん」の統計データの分析結果の方が、比較的信頼度の高い傾向を示していると考えられるように思います。
・参考記事
「サザエさんの過去の手 一覧」
<http://www.asahi-net.or.jp/~tk7m-ari/sazae_ichiran.html>
「めざましじゃんけん攻略」
<https://ameblo.jp/mezamashijyanken>
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このシリーズの次回記事:「統計データで見るじゃんけんで最強の初手は?②ゲーム理論と大学の研究データ」