コペルニクス革命とコペルニクス的転回の違いとは?科学史におけるコペルニクス革命と認識論におけるコペルニクス的転回

「コペルニクス的転回の二つの意味とは?」の記事で書いたように、コペルニクス的転回という言葉の解釈のあり方については、

近代ヨーロッパにおける科学革命の端緒を開くことになった16世紀のポーランドの天文学者であるコペルニクスによる天動説から地動説への天文学理論の転回のあり方のことを意味する場合と、

そうした天文学におけるコペルニクス革命のことを念頭に置いたうえで、18世紀のドイツの哲学者であったインマヌエル・カントによって新たに唱えられた認識論における対象の側から主観の側への人間の認識の原理のあり方の転回のことを意味する場合という二通りの解釈のあり方が存在すると考えられることになります。

そして、

こうしたコペルニクス的転回という言葉と非常に意味が似通った表現としては、コペルニクス革命という言葉が用いられることもあるのですが、

今回の記事では、こうしたコペルニクス革命コペルニクス的転回という二つの言葉の具体的な意味の違いについて、もう少し整理して考えておきたいと思います。

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英語のrevolution(レボリューション)という単語の訳し方の違いから生まれた二つの言葉

冒頭でも述べたように、

コペルニクス的転回という言葉は、学問的な文脈の違いに応じて、近代の天文学における天動説から地動説への転回のことを意味する場合と、

カント哲学の認識論における対象の側の原理から主観の側の原理への転換のことを意味する場合という二通りの解釈が存在するのに対して、

そうした近代科学における天動説から地動説への転回のあり方を含む近代ヨーロッパにおける科学革命の進展のことを意味する言葉としては、コペルニクス革命という言葉が用いられる場合もあるのですが、

そもそも、

こうしたコペルニクス革命コペルニクス的転回といった言葉は、どちらの言葉も英語においては、Copernican Revolution(コペルニカン・レボリューション)という言葉で表現されることになります。

そして、

こうした英語におけるrevolution(レボリューション)という言葉は、

日本語においては、政治的あるいは歴史的な意味における変革のことを意味する「革命」と、数学的な意味における回転のことを意味する「転回」という二つの言葉のどちらの訳語にも対応することになると考えられることになるのですが、

そういった意味では、

コペルニクス革命コペルニクス的転回という二つの言葉は、こうしたCopernican Revolutionという英語の表現における”Revolution”という単語が、日本語の訳語において、

歴史的な意味合いを含む「革命」という言葉と、単に数学的な意味における180度の回転のことを意味する「転回」という言葉のどちらの意味で解釈することができるのか?という

言葉の訳し方の違いによって分かれていった言葉であると考えられることになるのです。

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科学史におけるコペルニクス革命と認識論におけるコペルニクス的転回

そして、こうした観点から考えていくと、

コペルニクス革命コペルニクス的転回という二つの言葉のうち、

まず、

前者のコペルニクス革命という言葉については、

それは、近代科学史における革命的な転換、すなわち、16世紀のポーランドの天文学者であるコペルニクスによる天動説から地動説への天文学理論の革新的な転換のことを意味する言葉であり、

さらには、

広義の意味においては、こうしたコペルニクス革命という言葉は、コペルニクスによる地動説の再発見を端緒としてはじまるガリレオからケプラーそしてニュートンへと至る近代科学理論の革命的な展開の全体の流れのことをも意味すると考えられ、

そういった意味では、

いわば、近代ヨーロッパにおける科学革命の同義語として、こうしたコペルニクス革命と呼ばれる言葉を用いることもできると考えられることになります。

そして、それに対して、

後者のコペルニクス的転回という言葉については、

前述したように、この言葉には、学問的な文脈の違いに応じて、近代の天文学における天動説から地動説への転回のことを意味する場合と、カント哲学における認識論的転回のことを意味する場合という二通りの解釈が存在すると考えられることになるのですが、

この言葉には、前者のコペルニクス革命という言葉に含まれているような科学史における歴史的な革命のことを表す意味合いが含まれていないことを考え合わせると、

前後の文脈において、その言葉がコペルニクス革命と同様のことを意味する言葉として用いられると解釈しうるような特段の理由などが存在しない場合には、

こうしたコペルニクス的転回という言葉は、一義的には、カントの認識論哲学における人間の認識の原理のあり方の対象の側から主観の側への転換のことを意味する言葉として解釈する方がより妥当な解釈であると考えられることになります。

そして、つまりは、以上のような点において、

こうしたコペルニクス革命コペルニクス的転回という二つの言葉の具体的な意味の違いを見いだしていくことができると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:コペルニクスの原理とコペルニクス的転回の違いとは?宇宙全体の構造における地球中心的な宇宙観を否定する宇宙論的転回

前回記事:天動説と地動説の違いとは?人類の歴史における二つの天文学理論の変遷のあり方のまとめ

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