コペルニクスの原理とコペルニクス的転回の違いとは?宇宙全体の構造における地球中心的な宇宙観を否定する宇宙論的転回

前回の記事で書いたように、コペルニクス的転回とは、一義的には、近代ヨーロッパにおける科学革命の端緒を開くことになった天文学におけるコペルニクス革命のことを念頭に置いたうえで、

 18世紀のドイツの哲学者であったインマヌエル・カントによって新たに唱えられた認識論における対象の側の原理から主観の側の原理への転回のことを意味する言葉であると考えられることになるのですが、

こうしたコペルニクス的転回という言葉と同様に、コペルニクスが天動説から地動説の転換を行ったことに由来して後世において新たに用いられるようになった概念としては、そのほかにコペルニクスの原理と呼ばれる言葉も挙げられることになります。

それでは、こうしたコペルニクスの原理コペルニクス的転回という二つの言葉の間には、具体的にどのような意味の違いがあると考えられることになるのでしょうか?

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コペルニクス的転回における認識論的転回とコペルニクスの原理における宇宙論的転回

冒頭で述べたように、

コペルニクス的転回においては、コペルニクス革命とも呼ばれる16世紀のポーランドの天文学者であるコペルニクスによる天動説から地動説への転回のあり方が念頭に置かれたうえで、

人間の認識が客観的に統合された秩序立った認識として成立するためには、認識の対象となる事物の側だけではなく、認識の主体となる主観の側の条件の方がより重要であり、

客観的に統合された認識を成立させている人間における認識の原理は、対象の側ではなく、それを受け取る主観の側の普遍的な認識の形式に基づいて構成されているとする認識論的転回が行われていくことになります。

そして、それに対して、

コペルニクスの原理においては、コペルニクス的転回の場合と同様に、コペルニクスによる天動説から地動説への転回のあり方が念頭に置かれたうえで、

そうした地球を宇宙の中心として位置づける天動説から、太陽の方を宇宙の中心として位置づけたうえで地球は他の天体と同列に太陽の周りを回っているに過ぎないと捉える地動説への転回という天文学における世界観の大きな転換のあり方が、

宇宙全体の構造のあり方を問題とする宇宙論へとそのまま適用されていくことによって、言わば、宇宙論的転回が行われていくことになると考えられることになるのです。

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コペルニクスの原理とは何か?地球中心的な世界観を否定する客観的な宇宙観

コペルニクスの原理Copernican principle、コペルニカン・プリンシプル)という言葉自体の命名は、

20世紀のオーストリアの数学者にして天体物理学者でもあるヘルマン・ボンディHermann Bondiによって、だいたい1940年代頃に提唱されるようになった概念であると考えられることになるのですが、

前述したように、こうしたコペルニクスの原理の原点は、16世紀のポーランドの天文学者であるコペルニクスによる天動説から地動説への転回のうちに求められることになります。

コペルニクスによる天動説から地動説への転回においては、前述したように、天動説における地球を宇宙の中心として位置づける宇宙観が否定されたうえで、地球も他の天体と同じように太陽の周りを回っている一つのありふれた天体に過ぎないということが明らかにされていると考えられることになるのですが、

コペルニクスの原理においては、こうした考え方が地球と太陽との関係についてだけではなく、宇宙全体の構造に及ぶ問題として捉え直されていくことによって、

宇宙全体においても、地球は宇宙のなかでどこか特権的な位置を占めるような特別な場所や条件などが整えられた特別な星でもなければ、

そうした地球の上に暮らす人間自身についても、何らかの特権的な地位を与えられた特別な観測者であるというわけでもないという宇宙観が提示されていくことになります。

つまり、

こうしたコペルニクスの原理に基づく宇宙観においては、

天動説に基づくような人間中心的な世界観あるいは地球中心的な世界観が否定されたうえで、

宇宙全体の大規模な構造のなかでは、太陽系やその内にある地球さらにはその上に暮らしている知的生命体としての人間といった存在は、

どれも特権的な位置や地位を占めない平凡でありふれた一般的な存在として位置づけ直されていくことになるのです。

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以上のように、

こうしたコペルニクスの原理コペルニクス的転回と呼ばれる二つの言葉の具体的な意味の違いについて一言でまとめると、

コペルニクスの原理においては、コペルニクスによる天動説から地動説への転回のあり方が宇宙全体の構造へと適用されていくことによって、

人間中心的な宇宙観あるいは地球中心的な宇宙観が否定されたうえで、より客観的に宇宙全体を俯瞰する立場から、この宇宙にはいかなる意味においても宇宙の中心といった特別な位置を占めるような天体も、特権的な地位を与えられた特別な観測者も存在しないとする宇宙論的転回が行われていくことになるのに対して、

コペルニクス的転回においては、人間の認識が客観的に統合された秩序立った認識として成立するためには、認識の対象となる事物の側だけではなく、認識の主体となる主観の側の条件の方がより重要であり、

客観的に統合された認識を成立させている人間における認識の原理は、対象の側ではなく、それを受け取る主観の側の普遍的な認識の形式に基づいて構成されているとする認識論的転回が行われていくことになるという点に、

両者の概念の間の具体的な意味の違いを見いだしていくことができると考えられることになるのです。

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次回記事:宇宙原理とニュートン力学およびコペルニクスの原理との関係とは?現代物理学における基本原理としての宇宙原理の位置づけ

前回記事:コペルニクス革命とコペルニクス的転回の違いとは?科学史におけるコペルニクス革命と認識論におけるコペルニクス的転回

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