フェルミのパラドックスとインテリジェントデザイン説の関係とは?レアアース仮説の宇宙論的議論から生命論的議論への展開
前回の記事で書いたように、物理学的な思考に基づく統計学的な推論においては、古い歴史を持つ広大な銀河系の内部には人類の文明に先行する数多くの地球外先進文明が存在し、その一部はすでに地球に到達しているはずであると考えることができるにもかかわらず、
実際には地球上においてそうした地球外先進文明との接触の痕跡を発見することができないという根本的な矛盾のことを意味するフェルミのパラドックスと呼ばれる一連の議論からは、
そうした矛盾を解消するために必要な論理的な妥当性を持った解釈として、
①そもそもこの宇宙には人類以外の知的生命体はどこにも存在しない
②宇宙には一定数の地球外文明が存在しているものの彼らは何らかの理由によって太陽系や地球を訪れることを妨げられていている
③宇宙には一定数の地球外文明が存在していて、彼らは実際にこの地球を訪れてもいるが、そうした地球外知的生命体の存在と来訪の事実が一般の人々には秘密にされている
という全部で三つの解釈を挙げることができると考えられることになります。
そして、こうしたフェルミのパラドックスに関する第一の解釈は、さらに、レアアース仮説における宇宙論的な議論やインテリジェントデザイン説といった生命論的な議論へと深く関わっていくことになると考えられることになるのです。
レアアース仮説における宇宙論的な議論からインテリジェントデザインと呼ばれる生命論的な議論への展開
まず、冒頭でも述べたように、
フェルミのパラドックスにおける矛盾を解消する第一の解釈においては、
「この宇宙には人類以外の知的生命体はどこにも存在しない」という地球外知的生命体と地球外文明の存在そのものを否定する主張がなされていくことになるので、
そこでは、はじめに述べた物理学的な思考に基づいて展開された統計学的な推論における帰結である広大な銀河系の内部には人類の文明に先行する数多くの地球外先進文明が存在しているはずだという主張自体が否定されていくことになると考えられることになります。
そして、こうした解釈のあり方は、その代わりに、
広大な銀河系においても地球外知的生命体の存在を見つけ出すことは極めて困難であり、宇宙全体においても人類のような知的生命体の存在は唯一無二であるか、少なくとも極めて希少な存在であると考える
レアアース仮説と呼ばれる宇宙論的な議論へとつながっていくことになると考えられることになるのですが、
こうしたレアアース仮説における生命の誕生と人類のような知的生命体への進化の過程を、広大な宇宙における悠久の時の流れのなかでもほとんど生じることがない極めて稀な現象として捉える考え方は、
さらに、インテリジェントデザインと呼ばれる生命論的な議論へもつながっていくことになると考えられることになるのです。
何らかの知的存在によって意図的に設計されたこの宇宙に存在する唯一無二の知的生命体としての人類の存在
インテリジェントデザイン(intelligent design)とは、一言でいうと、
宇宙や生命の存在は、何らかの知的存在(intelligence)の意志の力によって意図的に設計(design)されたものであるとする考え方のことを意味する言葉であり、
通常の場合、こうしたインテリジェントデザイン説においては、宇宙や生命における精巧なシステムは、物理的な世界における単なる偶然によって生じたものとは考えられないとする考え方から、
そうした宇宙や生命の設計者、すなわち、造物主や創造主としての高度な知性と意志を持ったものの存在が必然的に要請されることになるといった主張が展開されていくことになります。
つまり、
こうした「この宇宙には人類以外の知的生命体はどこにも存在しない」とするフェルミのパラドックスの第一の解釈やレアアース仮説といった天文学や天体物理学の分野における議論は、
それが、そうした極めて稀な存在としての人類や生命の存在を、偶然生じたものではなく、何らかの偉大な知性によって意図的に設計されたものであるとするインテリジェントデザイン説といった生命論的な議論へと結びついていくことによって、
この宇宙に存在する唯一無二の知的生命体としての人類の存在が、宇宙論的な視点と生命論的な視点という両方の視点から改めて捉え直されていくことになると考えられることになるのです。
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次回記事:インテリジェントデザインとは何か?神の宇宙論的証明との関係と生命における秩序の究極の根拠となる設計者としての神の存在
前回記事:フェルミのパラドックスにおける矛盾を解消する三通りの解釈とは?宇宙人の存在と人類との接触可能性の否定と情報の秘匿
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