「意識・前意識・無意識」と「自我・超自我・エス」という心理学的な階層構造のモデルの間の具体的な共通点と相違点とは?

このシリーズの前々回の記事で書いたように、フロイトの精神分析学における心理学の理論においては、

はじめは、意識・前意識・無意識という三つの心の領域へと区分されていく形で、人間の心の階層構造のあり方が捉えられていくことになるのですが、

それに対して、前回の記事で書いたように、フロイトにおける後期の心理学理論においては、こうした人間の心の三層構造のあり方は、

自我・超自我・エスという三つの心の部分へと区分されていく形で、新たに別の視点から捉え直されていくことになると考えられることになります。

それでは、

こうした意識・前意識・無意識と呼ばれる心の階層構造のあり方と、自我・超自我・エスと呼ばれる階層構造のあり方には、それぞれ互いにどのような共通点と相違点があると考えられ、

両者の階層構造の間には、具体的にどのような対応関係を結ぶことができると考えられることになるのでしょうか?

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意識・前意識・無意識と自我・超自我・エスの間の共通点と相違点

まず、

こうした意識・前意識・無意識、および、自我・超自我・エスと呼ばれる心の階層構造の捉え方においては、

どちらの場合も、人間の心のあり方が、全体としては一つに統一された心の状態を保っていながら、その内部においては、一定の領域や部分へと分割されていく形で捉えられていて、

そうした心の各部分や各領域は、一定の特徴や役割を持ったある程度独立した心の働きを担う存在として捉えられているといった点が挙げられることになります。

そして、その一方で、

こうした人間の心の三層構造の捉え方は、意識・前意識・無意識という心の構造の捉え方においては、

意識は現実において実際に自覚されている心の領域であるのに対して、前意識は現在は自覚されていないが注意を向ければ自覚することが可能な心の領域無意識は直接的な形では自覚することが不可能な心の領域として位置づけられているように、

当人にとって自覚することができる意識の領域であるか否かという人間の精神における自覚のレベルに応じて三つの心の領域の区分けが進められていくことになります。

そして、それに対して、

自我・超自我・エスという心の構造の捉え方においては、

自我は心の働きの全体の統制を図りながら現実における行動や選択を決定づける役割を担う心の部分であるのに対して、超自我道徳的な命令や規範を司る心の部分、エスは人間の心の基底部分に存在する本能的な欲求や衝動を司る心の部分として定義されているように、

そこでは、それぞれの心の部分が持つ具体的な心の働きや役割のあり方により焦点が強く当てられていく形で三つの心の部分の区分けが進められていくことになるといった点に、

こうした「意識・前意識・無意識」「自我・超自我・エス」と呼ばれる心の階層構造の捉え方の具体的な違いのあり方を見いだすことができると考えられることになるのです。

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静的な階層構造のモデルとしての「意識・前意識・無意識」と動的な階層構造のモデルとしての「自我・超自我・エス」の違い

以上のように、

フロイトの精神分析学における人間の心の階層構造の捉え方は、

前期の心理学理論における意識・前意識・無意識という三層構造の捉え方から、後期の心理学理論における自我・超自我・エスという三層構造の捉え方へと徐々に変化していくことになると考えられることになるのですが、

こうした「意識・前意識・無意識」「自我・超自我・エス」という心の三層構造の捉え方の間の具体的な共通点と相違点としては、

どちらの心の階層構造の捉え方の場合においても、人間の心のあり方は、全体としては一つに統一された存在でありながら、内部においては、一定の特徴や役割を持ったある程度独立した心の領域や部分が存在すると捉えられているという点に、

両者の心理学的な階層構造のモデルの間の具体的な共通点を見いだすことができると考えられることになります。

そして、それ対して、

前者の「意識・前意識・無意識」のモデルにおいては、人間の心の階層構造のあり方は、人間の精神における自覚のレベルに応じて領域の区分がなされていくという局所論的あるいは静的な観点から捉えられているのに対して、

後者の「自我・超自我・エス」のモデルにおいては、人間の心の階層構造のあり方は、それぞれの心の部分が持つ具体的な心の働きや役割の方に基づいて区分がなされていくという力学的あるいは動的な観点におい捉え直されていくことになるといった点に、

両者の心理学的な階層構造のモデルにおける具体的な相違点を見いだすことができると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:意識・前意識・無意識と自我・超自我・エスの具体的な対応関係とは?①両者の概念同士の間の最もシンプルで直接的な一対一の対応関係

前回記事:自我と超自我とエスという人間の心の三つの部分の具体的な特徴と性質とは?フロイトの精神分析学③、深層心理学とは何か?⑤

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