接触感染の感染機会を減らすための予防対策とは?ノロウイルス対策⑦
ここからは、3つの感染ルートのそれぞれに対応するノロウイルス予防対策の具体案を考えていきます。
まず、今回は、第1感染ルートの「接触感染」についてです。
接触感染による感染機会を減らすための予防対策とは?
ノロウイルスの第1感染ルートは、
患者やウイルスが付着した物に触れた手で、自分の口や鼻を触ってしまうことによる接触感染です。
そして、そうした接触感染による感染機会を減らすためには、
やはり、まず、
隔離とまでは言わないまでも、
発症してしまった人には、症状が治まるまでは、
自分の部屋とトイレなど、ある程度限られた空間に、
なるべく長くいてもらうことが必要となります。
そして、
食事や飲み物、着替えなどを運んだり、体温を測ったりと、
患者の部屋に入って、看護をするときについてですが、
この場合、患者と直接接触することになるので、
最低限の予防対策として
マスク、ビニール手袋の着用をする必要があります。
ただ、
完璧なウイルスの排除ではなく、
無理のない範囲での感染機会の低減という観点に立てば、
必ずしも、
一度使ったマスクやビニール手袋を、外すたびに新しいものに取り替えることまではしなくてもいいかと思います。
その代わりに、
患者の部屋のすぐ外に、マスク、手袋用のビニール袋を置いておき、
部屋に入るときは、その都度、そこからマスクとビニール手袋を取り出して着用してから入室し、
看護を終えて部屋から退出したら、再びマスクと手袋をそのビニール袋に戻して、袋の口を結んで一度保管してから、すぐにしっかり手洗いする、
というようにしていれば、
感染機会の低減としては十分な予防効果があるでしょう。
このとき、特にマスクの方は、
ビニール袋の中で顔が触れる面にウイルスが付着しないように、
顔が触れる面を内側にしっかりときれいに折りたたむような形で、
一時保管しておくことが必要です。
次に、
ドアノブや蛇口の取っ手を介した接触感染についてですが、
ウイルスの完全排除のためには、
患者がトイレなどに行くたびに、毎回のように次亜塩素酸ナトリウムを使って除染する必要があるわけですが、
これではやはり、手間も労力もかかり過ぎてしまい、
生活に無理のない予防対策とは言えないように思います。
したがって、
目に見えて汚染物が飛散している場合などは、
当然すみやかに除染作業を行うことが必要となりますが、
そうでない場合は、いっそのこと、
トイレは患者の部屋と同様の危険地帯と割り切ってしまい、
トイレに入ってから手洗いを済ませるまでは、決して手で顔の周りなどに触れないよう注意したうえで、
トイレを出てから、しっかり手洗いをすることで、
ある程度、予防効果が得られると考えられます。
この考え方に立つと、
トイレの中は、患者の部屋と同様に感染リスクのある危険地帯ということになるので、
トイレに入るときは、患者の部屋に入るときと同様に、できればマスクを着用して入るようにするとよいでしょう。
患者の部屋に入るときに使用するマスク・ビニール手袋を入れていたビニール袋から、
マスクを取り出して、着用してからトイレに入れば、
トイレの中で塵と一緒に漂っている可能性のあるウイルスを吸い込むこともなくなり、
より感染機会を減らすことができます。
もちろん、マスクをつけてトイレに入った場合は、
トイレから出たら、まず、マスクを外して、ビニール袋の中に戻してから、手洗いに向かう、という流れになります。
家の中の危険地帯・境界地帯・安全地帯の区分けとは?
このように、家の中を、
危険地帯とそうではない場所に区分けして捉える考え方を推し進めていくと、
家の中全体は、次の3つのゾーンに区分けして考えることができます。
それは、
患者の部屋とトイレ=危険地帯のレッドゾーン
洗面台と蛇口=境界地帯のイエローゾーン
それ以外の部屋や居間など=安全地帯のグリーンゾーン
という3つの区分けです。
このように、家の中を感染リスクの高さで区分けして考えることで、
感染しないよう注意する場所と、
リラックスしていてよい場所を、明確に分けることができます。
その結果、緊張のオン・オフをしっかり使い分けられるようになり、
心身の消耗を防ぐことができますし、
うっかりミスによる感染機会を減らすことにもつながることになるでしょう。
まとめ
ノロウイルスの第1感染ルートの、接触感染による感染機会を減らすためには、
患者の部屋に入る時は、マスクとビニール手袋を着用する、
トイレに入るときも、マスクを着用して入る、
ということで、ある程度十分な予防効果が得られると考えられます。
家の中を、患者の部屋とトイレ(危険地帯のレッドゾーン)、洗面台と蛇口(境界地帯のイエローゾーン)、それ以外の部屋や居間など(安全地帯のグリーンゾーン)、という3つのゾーンに区分けして考えることで、不必要な緊張による心身の消耗を防ぐことができ、感染機会を減らすことにもつながるでしょう。