渦鞭毛藻とクリプト藻とラフィド藻の違いとは?植物プランクトンとしての共通点と大きさ形や耐久性の違い、藻類とは何か?⑦

前回書いたように狭義における藻類である緑藻類紅藻類褐藻類といった植物の種族には分類されずに、広義の意味においてのみ藻類に分類される生物は、

一般的な陸上植物や狭義における藻類とは異なる生物体の構造を持った単細胞生物であり、光合成を行うと同時に、ある程度の運動性も有するといった点において、動物や細菌といった植物以外の生物の種族とも共通点を持つ生物であると考えられることになります。

そして、

こうした広義における藻類に分類される生物の代表的な種類としては、珪藻類藍藻類渦鞭毛藻や、クリプト藻ラフィド藻灰色藻ユーグレナ植物クロララクニオン植物といった生物の種族の名前が挙げられることになるのですが、

こうした広義における藻類に分類される生物の種族たちは、それぞれ具体的にどのような特徴を持った生物であると考えられることになるのでしょうか?

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渦鞭毛藻とクリプト藻とラフィド藻に共通する特徴とは?植物プランクトンと赤潮の原因となる微生物

まず、

冒頭で挙げた珪藻類藍藻類渦鞭毛藻や、クリプト藻ラフィド藻灰色藻ユーグレナ植物クロララクニオン植物という八種類の生物の種族のうち、

渦鞭毛藻クリプト藻ラフィド藻という三つの藻類の種族は、すべて、鞭毛と呼ばれる運動性を持った小器官を備えて運動する鞭毛藻類の一種に分類される生物の種族であり、

そのほとんどすべてが肉眼で見ることは難しい微細な単細胞性藻類であると考えられることになります。

また、

こうした渦鞭毛藻クリプト藻ラフィド藻といった鞭毛藻類は、珪藻類や藍藻類などと共に、水中を浮遊する微細な生物の総称であるプランクトンの中の植物性のもの、すなわち、植物プランクトンにも分類される生物であり、

水面近くで急激に繁殖してしまうことによって、海に変色をきたし、海中の酸素濃度の低下などによって魚介類に大きな害を与える危険性のある赤潮の原因となる主要な微生物の種類でもあると考えられることになります。

それでは、

こうした渦鞭毛藻クリプト藻ラフィド藻という三種類の単細胞性の鞭毛藻類には、それぞれ具体的にどのような特徴の違いがあると考えられることになるのでしょうか?

渦鞭毛藻の具体的な特徴とは?二本の鞭毛の形状と細胞の外側を覆う鎧板の構造および海洋性プランクトンとしてのヤコウチュウ(夜光虫)

まず、

上記の三つの単細胞性の鞭毛藻類の種族のうちの最初に挙げた渦鞭毛藻と呼ばれる藻類の種族は、

鞭(むち)の形状をした鞭毛と、と羽型(はねがた)の形状をした鞭毛という互いに異なる構造を持った二本の鞭毛を用いることによって、

その名の通り、自らの体を渦を巻くように回転させながら泳ぐことを特徴とする藻類の種族であると考えられることになります。

そして、

こうした渦鞭毛藻には、細胞膜の外側鎧板と呼ばれる硬い板状の構造を備えている種族も多く含まれていることからも分かる通り、

渦鞭毛藻は、鞭毛藻類の中でも、特に、多彩な運動能力と耐久性に優れた生物の種族に分類されることになると考えられることになります。

また、

こうした渦鞭毛藻に分類される生物の中でも、特に特徴的な生物の種類としては、ヤコウチュウ(夜光虫)と呼ばれる海洋性のプランクトンの名前が挙げられることになりますが、

通常の渦鞭毛藻の大きさは、だいたい直径10100マイクルメートル(0.010.1ミリメートル)程度であるのに対して、

ヤコウチュウの大きさ12ミリメートルという肉眼でも十分判別可能な大きさにまで大きく成長するほか、

一般的な渦鞭毛藻とは異なり葉緑体は持たず他の生物を捕食することによって生活するという植物よりもむしろ動物の方に近い性質をもった生物であるという点において、

ヤコウチュウは、一般的な植物や藻類から見て比較的異質な性質を持った存在である鞭毛藻類のなかでも、さらに異質で特異的な存在であると考えられることになるのです。

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クリプト藻とラフィド藻の具体的な特徴とは?細胞の大きさと細胞構造の耐久性の違い

次に、こうした鞭毛藻類に対して、

残りのクリプト藻ラフィド藻と呼ばれる二つの藻類の種族には、それぞれ具体的にどのような特徴があるのか?ということについてですが、

まず、

クリプト藻は、細胞の直径は350マイクルメートル(0.0030.05ミリメートル)程度の大きさをした米粒型をした小型の単細胞藻類に分類されることになり、

米粒でいうと胚芽の部分にあたる上部の少しくぼんだ部分から生えている羽型の形状をした二本の鞭毛を用いることによって水中をある程度移動することができると考えられることになります。

また、

こうしたクリプト藻には、細胞膜を内側から裏打ちする形でペリプラストと呼ばれる板状の構造が形成されていて、それによって体自体は小粒でも、耐久性には比較的優れた構造をしていると考えられることになります。

それに対して、

ラフィド藻は、細胞の直径が30100マイクルメートル(0.030.1ミリメートル)という単細胞藻類のなかでは、比較的大きな種族に分類されることになるのですが、

その一方で、

ラフィド藻には、鞭毛藻類における鎧版や、クリプト藻にみられるようなペリプラストと呼ばれる細胞膜を補強する板状の構造などは存在せず、

体自体は大きいものの、細胞構造としての耐久性自体は低く、形態が変化しやすい柔軟な構造を持った生物に分類されることになると考えられることになるのです。

・・・

以上のように、

渦鞭毛藻クリプト藻ラフィド藻という三つの藻類の種族は、共に、細胞の内に二本の鞭毛を持つことによって水中をある程度自由に移動することが可能な植物プランクトンの一種としても分類される単細胞藻類であり、

赤潮の原因となる主要な微生物の種類であるとも考えられるといった点において、互いに共通する性質を持った生物の一群であると考えられることになります。

そして、

こうした渦鞭毛藻クリプト藻ラフィド藻という三つの藻類の種族の具体的な特徴の違いとしては、

渦鞭毛藻は、一般的には、直径10100マイクルメートル(0.010.1ミリメートル)程度の大きさであり、

鞭型と羽型の二種類の形状を持った鞭毛を用いることによって渦を巻くように回転しながら泳ぐことができるほか、

細胞膜の外側鎧板と呼ばれる硬い板状の構造を備えることによって、多彩な運動能力と耐久性に優れているのに対して、

クリプト藻は、直径350マイクルメートル(0.0030.05ミリメートル)比較的小型米粒型の形状をしているほか、

細胞膜の内側ペリプラストと呼ばれる硬い板状の構造を備えることによって、体自体は小粒でも耐久性には優れた構造を持っていて、

それに対して、

ラフィド藻は、直径が30100マイクルメートル(0.030.1ミリメートル)比較的大型の構造をしている一方で、

鞭毛藻類の鎧版や、クリプト藻のペリプラストのような細胞膜を補強する板状の構造などは存在せず、体は大きいものの細胞構造の耐久性は低いといった点に、三者を区別する具体的な特徴の違いが存在すると考えられることになるのです。

・・・

このシリーズの次回記事:珪藻とは何か?ケイ酸質の殻で覆われた単細胞性の藻類の種族、藻類とは何か?⑧

関連記事:ヤコウチュウ(夜光虫)は動物と植物のどちらに分類されるのか?ヤコウチュウとは何か?①

前回記事:植物と動物や細菌との境界線上に位置する生物としての広義における藻類の概念、藻類とは何か?⑥

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