小反対対当とは何か?対当関係における四つの真偽関係の違い③、直接推論に分類される推論の形式④

前々回前回の記事で書いたように、

①全称肯定命題②特称肯定命題③全称否定命題④特称否定命題という全部で四つの命題形式の間には、

矛盾対当・反対対当・小反対対当・大小対当という全部で四つの種類の対当関係と呼ばれる推論関係が存在すると考えられることになります。

このうちのはじめの二つの対当関係である矛盾対当と、反対対当と呼ばれる推論のあり方については、それぞれ前々回と前回の記事において詳しく考察してきましたが、

今回は、こうした前回までの考察を踏まえたうえで、上記の四つの対当関係のうちの三番目の対当関係にあたる小反対対当と呼ばれる推論関係の定義について、具体的な命題の例を挙げることによって詳しく考察していきたいと思います

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小反対対当とは何か?反対対当の逆方向へと働く一方通行の推論関係

全称肯定・特称肯定・全称否定・特称否定の四つの命題の間だの対当関係

まず、上図の下部において示した小反対対当と呼ばれる対当関係が具体的にどのような概念として定義されることになるのか?ということについてですが、

小反対対当とは、②特称肯定命題④特称否定命題との間に成立する命題同士の普遍的な真偽関係のことを意味する概念であり、

この対当関係は、「あるAはBである」「あるAはBではない」という互いに正反対の意味内容を示す特称命題同士の間で成立する推論関係であると共に、

「ある(一部の)~」を意味する特称命題が、「すべての~」を意味する全称命題よりも狭い範囲を対象とする命題であることから、

全称命題同士の間で成立する反対対当に対して、より小規模な意味内容をもった特称命題同士の間で成立する推論関係という意味で、

小反対」対当と呼ばれていると考えられることになります。

そして、

こうした小反対対当の関係にある命題同士においては、いずれか一方の命題が偽ならば他方は必ず真となるが、それとは反対に、いずれか一方の命題が真であるとしても他方が偽であるとは限らないという真偽関係が成立することになります。

例えば、

「ある人間が不死である」という特称肯定命題が偽であるとするならば、それは、この世界のどこを探してみても、不死である一人の人間も見つけ出すことができないということを意味することになるので、

この命題と小反対対当の関係にある「ある人間は不死ではない」という特称否定命題は真であるということが必然的に結論づけられることになります。

しかし、その反対に、例えば、

「ある人間が男である」という特称肯定命題が真であったとしても、この命題は、この世界に存在する無数の人間のうちのある一人の人間が女性ではなく男性であるということを意味するだけで、

この命題だけからは、それと小反対対当の関係にある「ある人間は男ではない」という特称否定命題は、命題の形式のみによっては真であるとも偽であるとも判別がつかないと考えられることになります。

つまり、

無数に存在する人間のうちのある一人の人間が男であったとしても、そのことと彼とは別のもう一人の人間が男であるか女であるかという問題はまったく無関係な問題であるというように、

小反対対当においては、一方の命題が真であることと、他方の命題の真偽のあり方は、互いにまったく無関係なあり方をしていると考えられることになるのです。

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以上のように、

小反対対当とは、一言でいうと、

いずれか一方の命題が偽ならば他方は必ず真となるが、それとは反対に、いずれか一方の命題が真であるとしても他方が偽であるとは限らないという命題同士の普遍的な真偽関係のことを意味する概念であり、

こうした小反対対当と呼ばれる対当関係は、特称肯定命題(あるAはBである)特称否定命題(あるAはBではない)の間で成立する推論関係として位置づけられることになります。

これに対して、前回の記事では、全称肯定命題(すべてのAはBである)全称否定命題(すべてのAはBではない)の間で成立する推論関係である反対対当においては、

一方の命題が真ならば他方は必ず偽となるが、一方の命題が偽である場合は他方の命題は真であるとも偽であるとも結論づけることができないというように、

それは、真である命題の方からのみ推論が成立して、偽である命題の方からの推論は成立しないという一方通行的な推論関係を意味する概念として捉えることができると書きましたが、

そういう意味では、

特称命題同士の間で成立する小反対対当と呼ばれる推論のあり方は、それが偽である命題の方からのみ推論が成立して、真である命題の方からの推論は成立しないという点において、

全称命題同士の間で成立する反対対当と呼ばれる推論のあり方とは逆方向へと働く一方通行の推論関係のことを意味する概念として捉えることができると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:大小対当とは何か?対当関係における四つの真偽関係の違い④、直接推論に分類される推論の形式⑤

前回記事:反対対当とは何か?対当関係における四つの真偽関係の違い②、直接推論に分類される推論の形式③

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