三段論法の形式の妥当性についての具体的な検証作業の進め方とは?デカルトの方法的懐疑に基づく網羅的アプローチ

前回の記事で書いたように、三段論法の形式は、三段論法のうちに含まれている大概念(P)・小概念(S)・媒概念(Mという三つの概念の配置のあり方と、

大前提・小前提・結論というそれぞれの命題における全称肯定命題(A)・特称肯定命題(I)・全称否定命題(E)・特称否定命題(Oという四通りずつの命題形式の区分のあり方に基づいて、

全部で256通りの格式へと分類することができると考えられることになります。

そして、こうした膨大な数の三段論法の形式のなかには、前提が真であれば、論理的な形式のみによって結論も必然的に真となる妥当な三段論法の形式のほかに、

前提が真であったとしても、論理形式自体の内に矛盾や欠陥が含まれているため、反例が示されることによって結論が覆されてしまう可能性がある誤った三段論法の形式が含まれていると考えられることになります。

それでは、こうした256通りの三段論法の形式において、どの形式に基づく推論が反例が示される可能性のある誤った推論であり、どのような形式を用いた推論ならば反論をはさむ余地がまったく存在しない完全に妥当な推論であると認めることができると考えられることになるのでしょうか?

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三段論法の形式の妥当性についての具体的な検証作業の進め方

三段論法の形式の妥当性についての検証のあり方としては、まず、最も具体的で着実検証作業の進め方として、

可能な256通りの三段論法の形式すべてを列挙したうえで、それぞれの三段論法の格式を用いた推論に対して反例を挙げることが実際に可能であるか?ということを一つ一つ順番に検証していくことによって、誤った三段論法の形式をすべて排除し、

正しい妥当な三段論法の形式のみをあぶり出していくというアプローチの方法が考えられることになります。

つまり、

その三段論法の格式を用いた具体的な推論の例の中で、真なる前提からの推論によって得られたはずの結論が反例を挙げることによって覆されてしまうケースが一つでもあれば、それは誤った三段論法の形式として排除することができると考えられることになるので、

デカルトの方法的懐疑と同じように、そうした誤った三段論法の形式を排除していくというすべての検証作業を終えたうえで、最後まで残された三段論法の格式こそが、反例を示すことが論理的に不可能妥当な三段論法の形式であると考えられることになるのです。

例えば、実際に、

三段論法において形式的に可能な256通りの格式のうちの、第一格AAAから第一格AOOまでのはじめの16通りの格式について、

それぞれの格式を用いた推論の具体例を挙げていく形で、それが論理的に妥当な三段論法の形式として認めることができるのか?という三段論法の形式の妥当性についての具体的な検証作業を進めていくとすると、以下のようになります。

・・・

第一格AAA
大前提:すべての哺乳類動物である。=真
小前提:すべての人間哺乳類である。=真
 結論:ゆえに、すべての人間動物である。=真
確かに、すべての人間は動物であるように、このタイプの推論に対して反例を挙げることは論理的に不可能なので、妥当な三段論法の形式として認めることができる。

第一格AAI
大前提:すべての哺乳類動物である。=真
小前提:すべての人間哺乳類である。=真
 結論:ゆえに、ある人間動物である。=真
→このタイプの三段論法の形式を用いた推論は、上記の第一格AAAの推論から必然的に正しいことが帰結するので、妥当な三段論法の形式として認めることができる。

・第一格AAE
大前提:すべての哺乳類動物である。=真
小前提:すべての人間哺乳類である。=真
 結論:ゆえに、すべての人間動物ではない。=偽
実際には、すべての人間は動物なので、これは誤った三段論法の形式と言える。

第一格AAO
大前提:すべての哺乳類動物である。=真
小前提:すべての人間哺乳類である。=真
 結論:ゆえに、ある人間動物ではない。=偽
実際には、動物ではない人間は存在しないので、これは誤った三段論法の形式と言える。

第一格AIA
大前提:すべての鳥類有翼である。=真
小前提:ある動物鳥類である。=真
 結論:ゆえに、すべての動物有翼である。=偽
実際には、翼を持たない動物もいるので、これは誤った三段論法の形式と言える。

第一格AII
大前提:すべての鳥類有翼である。=真
小前提:ある動物鳥類である。=真
 結論:ゆえに、ある動物有翼である。=真
確かに、動物の中には鳥やコウモリといった翼をもった種族がいるように、このタイプの推論に対して反例を挙げることは論理的に不可能なので、妥当な三段論法の形式として認めることができる。

第一格AIE
大前提:すべての哺乳類動物である。=真
小前提:ある人間哺乳類である。=真
 結論:ゆえに、すべての人間動物ではない。=偽
実際には、すべての人間は動物なので、これは誤った三段論法の形式と言える。

第一格AIO
大前提:すべての哺乳類動物である。=真
小前提:ある人間哺乳類である。=真
 結論:ゆえに、ある人間動物ではない。=偽
実際には、動物ではない人間は存在しないので、これは誤った三段論法の形式と言える。

第一格AEA
大前提:すべての鳥類有翼である。=真
小前提:すべての人間鳥類ではない。=真
 結論:ゆえに、すべての人間有翼である。=偽
実際には、すべての人間は有翼ではないので、これは誤った三段論法の形式と言える。

第一格AEI
大前提:すべての鳥類有翼である。=真
小前提:すべての人間鳥類ではない。=真
 結論:ゆえに、ある人間有翼である。=偽
実際には、有翼の人間は存在しないので、これは誤った三段論法の形式と言える。

第一格AEE
大前提:すべての魚類水生である。=真
小前提:すべての哺乳類魚類ではない。=真
 結論:ゆえに、すべての哺乳類水生ではない。=偽
実際には、クジラなどの一部の哺乳類は水生なので、これは誤った三段論法の形式と言える。

第一格AEO
大前提:すべての魚類動物である。=真
小前提:すべての哺乳類魚類ではない。=真
 結論:ゆえに、ある哺乳類動物ではない。=偽
実際には、すべての哺乳類は動物なので、これは誤った三段論法の形式と言える。

第一格AOA
大前提:すべての鳥類有翼である。=真
小前提:ある人間鳥類ではない。=真
 結論:ゆえに、すべての人間有翼である。=偽
実際には、すべての人間は有翼ではないので、これは誤った三段論法の形式と言える。

第一格AOI
大前提:すべての鳥類有翼である。=真
小前提:ある人間鳥類ではない。=真
 結論:ゆえに、ある人間有翼である。=偽
実際には、有翼の人間は存在しないので、これは誤った三段論法の形式と言える。

第一格AOE
大前提:すべての魚類水生である。=真
小前提:ある哺乳類魚類ではない。=真
 結論:ゆえに、すべての哺乳類水生ではない。=偽
実際には、クジラなどの一部の哺乳類は水生なので、これは誤った三段論法の形式と言える。

第一格AOO
大前提:すべての魚類動物である。=真
小前提:ある哺乳類魚類ではない。=真
 結論:ゆえに、ある哺乳類動物ではない。=偽
実際には、すべての哺乳類は動物なので、これは誤った三段論法の形式と言える。

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・・・

このように、実際にそれぞれの三段論法の格式を用いた様々な推論の具体例を挙げていくことによって、三段論法の形式の妥当性についての検証作業を進めていくと、

こうした三段論法の様々な格式の中には、

見るからに誤っているとわかるような意味不明な推論になってしまうものもあれば、一見妥当そうに見えてもよく考えてみると誤っている推論もあり、

その反対に、誤りとされた格式と似ていても実際は妥当な推論を形成する格式となっている場合もあるといったことが次第に明らかになっていくと考えられることになります。

そして、以上のような形でそれぞれの格式における三段論法の形式についての網羅的な検証作業を進めていくと、結論としては、

今回の検証によって得られた第一格のAAAAAIAIIという3通りの妥当な三段論法の格式を含む

第一格のAAAAAIEAEEAOAII式、EIO
第二格のEAEEAOAEEAEOEIO式、AOO
第三格のAAIEAOIAIAIIOAO式、EIO
第四格のAAIAEEAEOIAIEAO式、EIO

という全部で24通りの格式妥当な三段論法の形式として導き出されていくことになると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:256通りの格式に基づく三段論法のすべての形式の具体例と検証①、第一格に分類される64通りの三段論法の格式の検証

前回記事:正しい三段論法と誤った三段論法の違いとは?反例を示すことが論理的に不可能な形式と反例によって結論が覆される形式

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