バイオセーフティーレベルと日本における感染症の分類規定の違いとは?

前回書いたように、

世界的なウイルス分類の基準であるバイオセーフティーレベルにおける最高レベルであるレベル4のウイルスには、

ラッサウイルスマールブルグウイルスクリミア・コンゴ出血熱ウイルス、そしてエボラウイルスといった出血熱ウイルスが並ぶことになりますが、

こうしたウイルスの危険度を表す基準としては、世界的な基準であるバイオセーフティーレベルの他に、日本独自の基準である一類感染症から五類感染症までの

感染症の分類規定も挙げられることになります。

こうしたバイオセーフティーレベル日本における感染症の分類規定には、互いにどのような基準の違いがあり、それぞれの基準におけるウイルスの区分には、具体的にどのような種類のウイルスが分類されることになるのでしょうか?

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バイオセーフティーレベルの本来の意味とリスクグループとの関係

 バイオセーフティーレベルBiosafety level、略称:BSL)とは、本来、

世界保健機関WHO)の保安規定に基づいて定められているウイルスや細菌などの病原体を取り扱う実験室や施設に求められる設備の厳重さについての基準であり、

直接的には、ウイルス自体というよりは、ウイルスを扱っている実験室や施設に対するランク付けを表す基準ということになります。

そして、

レベル1からレベル4まで施設のバイオセーフティーレベルに対応して、それぞれの国がある程度独自の基準で定める病原体のリスクグループに基づいて、

例えば、リスクグループのグループ3に分類されるウイルスは、バイオセーフティーレベル3以上の保安設備を持った施設でしか取り扱うことはできないと規定されることになります。

このように、

WHOの規定に基づいて各国が定める病原体のリスクグループの分類は、世界共通の基準であるバイオセーフティーレベルの分類にそのまま対応することになるので、

直接的にはウイルスを取り扱う施設に関する分類であるバイオセーフティーレベルが、実質的にはウイルス自体の危険性を表す指標としても用いられることになるのです。

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バイオセーフティーレベルと日本における感染症の分類規定の違い

それに対して、

日本における一類感染症から四類感染症までの感染症の分類規定の方は、ウイルスによって引き起こされる感染症自体の危険性を直接表す指標であり、

その感染症が国民の生命や健康に対して与える影響の強さ度合いに応じて、一類感染症から五類感染症までの五段階の等級に分類がなされることになります。

例えば、

日本において、最も危険性が高く、国民の生命と健康に「極めて重大な」影響を与えるおそれがある一類感染症を引き起こすウイルスには、

エボラウイルスなどの出血熱ウイルスや、天然痘ウイルス(バリオラウイルス)といったバイオセーフティーレベルにおいても最高ランクレベル4に位置づけられるウイルスが分類されていますが、

このように、

ウイルスの危険度のランク付けとしては、バイオセーフティーレベルにおいてはレベル4に分類されるウイルスが一類感染症の原因となるウイルスに、レベル1に分類されるウイルスが五類感染症の原因となるウイルスに概ね対応していると考えられることになるのです。

しかし、

五類感染症を引き起こすウイルスには、バイオセーフティーレベルでは比較的危険度が低いレベル1やレベル2のウイルスのほかに、

感染力自体は低いものの、感染してしまった場合には免疫不全という重大な疾患をもたらすウイルスであるHIVウイルスなどのバイオセーフティーレベルではレベル3に分類されるウイルスも一部含まれているように、

厳密に言うと、両者の基準はピタリと一致しているわけではなく、

どちらかというと、バイオセーフティーレベルの方が、致死率や回復不能な障害といった病原体がもたらす症状の重さをより重視する指標であるのに対して、

日本の一類から五類までの感染症の分類規定は、症状よりも病原体自体が持つ感染力の強さの方をより重視する指標であると考えられることになります。

・・・

以上のように、

バイオセーフティーレベルが、本来、細菌やウイルスなどの病原体を取り扱う施設に関するランク付けを表す基準であるのに対して、

一類感染症から五類感染症までの分類規定の方は、感染症自体の危険性を直接表す指標ということになります。

そして、

バイオセーフティーレベルにおいては、レベル4に分類されるウイルスが最高レベルの危険性を持つウイルスであり、そこからレベル3、2、1と数字が小さくなっていくにつれて危険度が下がっていくのに対して、

感染症の分類規定の方では反対に、一類感染症を引き起こすウイルスが最も危険性が高いウイルスであるとされ、そこから二類、三類、四類、五類と数字が大きくなるにつれて危険度が下がっていくという点、

そして、バイオセーフティーレベルに比べて、感染症の分類規定の方が、症状の重さよりも病原体が持つ感染力の強さを重視する指標であるといった点に両者の基準の具体的な違いがあると考えられることになるのです。

・・・

次回記事バイオセーフティーレベル1とレベル2に分類されるウイルスや細菌の代表的な種類とは?

前回記事:レベル4に分類される出血熱ウイルスの種類と致死率、RNAウイルスの代表的な種類⑤、DNAウイルスとRNAウイルス⑨

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