世界の言語におけるI love youの表現とロマンス諸語とゲルマン語派の分類に沿った文法的説明
詳しくは、ロマンス語の語源とは?で書いたように、
ヨーロッパ系の言語は、大きく分けて
ラテン語を源流に持つロマンス諸語とゲルマン祖語を源流に持つゲルマン語派という二つの言語系統に分けられます。
そこで、今回は、
こうした世界の代表的な言語、そしてロマンス諸語とゲルマン語派のそれぞれに属する個々の言語において、日本語の「私はあなたを愛しています」、英語のI love youにあたる表現はどのようになるのか?ということについて、
主語や動詞の意味の対応関係といった簡単な文法的説明を付記する形で、まとめて書いていきたいと思います。
ロマンス諸語におけるI love youの表現、aimeとamo
ロマンス諸語に該当するヨーロッパの代表的な言語としては、フランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語といった言語が挙げられることになりますが、
これらの言語のそれぞれにおけるI love youの表現と、その源流にあるラテン語における愛の表現についてまとめて書いていくと以下のようになります。
まず、フランス語で英語のI love youにあたる表現は、
Je t’aime.(ジュ・テーム)となります。
簡単な文法的説明としては、Je(ジュ)=「私は」、te(トゥ)=「あなたを」、aime(エム)=「愛する」を意味することになり、
「あなたを愛する」の部分にあたるte+aimeの部分がフランス語のエリジオンと呼ばれる発音規則に従って結合してt’aime(テーム)と表記されることによって、上記のJe t’aime.という文が完成することになります。
次に、イタリア語で英語のI love youにあたる表現は、
Ti amo.(ティ・アモ)となり、
文法的な説明としては、Ti(ティ)=「あなたを」、amo(アモ)=「私は愛する」を意味することになります。
ちなみに、詳しくは前回書いたように、ラテン語を源流とする言語では、動詞の活用語尾の内にすでに主語が組み込まれているので、改めて主語にあたる単語を書き加える必要はなく、amoという動詞一単語で「私は愛する」を意味することになります。
そして、それと同様に、I love youの表現は、
スペイン語では、
Te amo.(テ・アモ)※Te(テ)=「あなたを」、amo(アモ)=「私は愛する」
ポルトガル語では、
Te amo.(チ・アモ)※Te(チ)=「あなたを」、amo(アモ)=「私は愛する」
※アルファベット表記上はスペイン語と同じだが、“Te”の発音の仕方がスペイン語とは若干異なる。
となり、
これらのロマンス諸語の源流にあるラテン語においては、
Te amo.(テー・アモー)※Te(テー)=「あなたを」、amo(アモー)=「私は愛する」
と表現されることになります。
このように、上記のフランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語といったロマンス諸語に分類される言語は、どの言語も同じくラテン語を源流にもつ言語ということになるので、
上記のどの言語についても、程度の差こそあれ、どこか似通った表現になっていることが分かると思います。
ゲルマン語派におけるI love youの表現、loveとliebeと hou van
次に、ゲルマン語派に該当するヨーロッパの代表的な言語としては、英語の他には、ドイツ語やオランダ語などが挙げられることになりますが、
これらの言語のそれぞれにおけるI love youの表現は以下のようになります。
まず、ドイツ語で英語のI love youにあたる表現は、
Ich liebe dich.(イッヒ・リーベ・ディッヒ)となります。
文法的な説明としては、Ich(イッヒ)=「私は」、liebe (リーベ)=「愛する」、dich(ディッヒ)=「君を」を意味することになり、
同じゲルマン語派に属する英語との対応関係では、ドイツ語のIchは英語のIに、ドイツ語のliebeは英語のloveに、ドイツ語のdichは英語のyouにそれぞれ対応することになります。
そして、次のオランダ語では、英語のI love youにあたる表現は、
Ik hou van je.(イク・ホウ・ファン・イェ)となり、
Ik(イク)=「私は」、hou van(ホウ・ファン)=「愛する」、je(イェ)=「君を」を意味することになります。
ここで、ドイツ語と英語の方はともかく、オランダ語の方の表記はいきなりIk hou van jeという四単語の表記になってしまうので、
一見するとドイツ語や英語といった他のゲルマン語派に属する言語との関連性が薄い表記になっているようにも見えてしまうことになります。
しかし、
オランダ語のhou(ホウ)(原形はhouden(ホウデン))は、ドイツ語のhalten(ハルテン)、英語のhold(ホールド)(※共に「持っている」という意味)にあたる単語であり、
オランダ語のvan(ファン)もドイツ語のvon(フォン)、英語で言うとfromやbyにあたる単語ということになるので、
全体として、オランダ語で「愛する」を意味するhou vanは、ドイツ語のhalten vonや、英語のhold by(~に固執する、同意するといった意味の熟語になる)といった表現に対応する表現であると考えられることになるのです。
その他の言語におけるI love youの表現の例
ちなみに、ロマンス諸語やゲルマン語派に属する言語以外の世界の代表的な言語における”I love you”の表現としては、
例えば、ギリシャ語では、
Σ‘ αγαπώ(サガポー)となり、
Σ‘ (サ)=「あなたを」、αγαπώ(アガポー)=「私は愛する」を意味することになります。
※Σ‘は小文字ではσ‘となり、ギリシア語の二人称単数の人称代名詞対格(目的語)の弱形であるσε(セ)の結合形を表します。
また、ロシア語では、英語のI love youにあたる表現は、
Я люблю тебя(ヤ・リュブリュー・ティビャ)となり、
Я(ヤ)=「私は」、люблю(リュブリュー)=「愛する」、тебя(ティビャ)=「あなたを」を意味することになります。
さらに、中国語では、我=「私は」、愛=「愛する」、你=「あなたを」で
我愛你(ウォ・アイ・ニー)
韓国語では、사랑해요(サランヘヨ)
アラビア語では、話し手が男性の場合はأُحِبُّكَ(ウヒッブキ)
話し手が女性の場合は、أُحِبُّكِ(ウヒッブカ)
となります。
ただし、アラビア語の場合は、同じイスラム圏の国々でも、国や地域によって発音の仕方がかなり異なってくるので、上記のアラビア語の表記も、例えば、ウヘッブックやオハッボッガというように、様々な形で発音されることになります。
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初回記事:I love youはドイツ語では何て言うの?文法的構造と敬称のSieと親称のduの使い分けの問題
前回記事:I love youはラテン語では何て言うの?文法的構造とデカルトの『方法序説』と『哲学原理』における主格のegoの表記の違い
関連記事:ロマンス語の語源とは?西ヨーロッパ系言語のロマンス諸語とゲルマン語派への分類と恋のロマンス
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