ロマンス語の語源とは?西ヨーロッパ系言語のロマンス諸語とゲルマン語派への分類と恋のロマンス
英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、オランダ語、デンマーク語といった
現在、西ヨーロッパで使われている主要な言語は、
そのすべてがインド・ヨーロッパ語族に属する言語であり、
こうした西ヨーロッパ系の言語は、さらに、
ロマンス諸語とゲルマン語派という二つの言語系統に大別されることになります。
そこで、今回は、
ロマンス語という言葉の語源はどこにあるのか?という問いを中心に、
ロマンス諸語とゲルマン語派のそれぞれに分類される具体的な言語と
それぞれの言語系統を表す概念の由来について考えていきたいと思います。
西ヨーロッパ系言語の分類とゲルマン民族
まず、はじめに、
ロマンス諸語(Romance languages)とは、
古代ローマ人が用いていた言語であったラテン語から分派した言語の総称であり、
冒頭に挙げた西ヨーロッパ系の言語としては、
フランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語といった
いわゆるラテン系言語がロマンス諸語に分類されることになります。
それに対して、
ゲルマン語派(Germanic languages)とは、
4世紀から5世紀にかけてのゲルマン民族大移動によって西ローマ帝国の滅亡を招き、その後の中世ヨーロッパを築く礎となったゲルマン民族が用いていた言語に由来する言語の総称であり、
英語、ドイツ語、オランダ語、デンマーク語といった言語が
ゲルマン語派に分類されることになります。
ロマンス語の語源とは?ローマ風を表す単語と恋のロマンス
以上のように、
ゲルマン語派の「ゲルマン」(German)という言葉が
ゲルマン民族(Germanic peoples)に由来する言葉であるというのはいいとして、
それでは、
ロマンス諸語における「ロマンス」(Romance)という言葉は、
どのような概念に由来する言葉だと考えられることになるのでしょうか?
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ロマンス諸語の起源となる言語であるラテン語では、
ローマ人のことは、”Romanus“(ロマヌス)と呼ばれますが、
この”Romanus“から派生した単語の一つに、
“Romanicus“(ロマニクス)という言葉があります。
“Romanicus”は、「ローマで作られた、ローマ風の」
という意味を表す形容詞ですが、
この形容詞”Romanicus”の副詞形である
“romanice“(ロマニケ)という言葉が直接的な語源となって、
“Romance“(ロマンス)という言葉が生まれたと考えられることになるのです。
ラテン語と英語では発音の仕方が大きく異なるので、
発音だけで比べると、「ロマニケ」と「ロマンス」ではだいぶ違う言葉のようにも聞こえてしまいますが、
アルファベット表記だけを見て比べると、
ラテン語の”romanice“から”i“を取ると、そのまま英語の”romance”(ロマンス)になるので、両者の単語が極めて近しい関係にあることがわかります。
つまり、
ロマンス諸語における「ロマンス」(Romance)という言葉の語源は、
ラテン語の副詞であり、「ローマで作られたように、ローマ風に」という意味を持つ
“romanice“(ロマニケ)という言葉にあると考えられるということです。
ちなみに、
ロマンス(romance)と言うと、
一般的には、ロマンス小説や恋のロマンスというように、
恋愛や、空想的な冒険物語のようなものを指して使われることも多い言葉ですが、
こうした意味で使われるロマンス(romance)という言葉も
その原義は、「ロマンス語で書かれたもの」という意味になるので、
それは、上述したように、もともとは、ローマ人のことを表すラテン語の単語に起源を持つ言葉ということになります。
中世や近代に生きたヨーロッパの人々の目から見ても
古代世界において栄華を極めたローマ人たちの生活は、
一つの理想であり、憧れの姿でもあったので、
言わば、
「ローマで作られたように、ローマ風に」という意味を持つ
ラテン語の”romanice“(ロマニケ)という言葉の意味そのままに、
ローマの貴族たちの洗練された文化や彼らが送っていた優雅な生活といったイメージで、恋愛や空想物語という意味としてのロマンスという言葉が語られるようになっていったと考えられるのです。
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以上のように、
英語、ドイツ語、オランダ語、デンマーク語といった言語に代表される
ゲルマン語派は、ゲルマン民族に由来する概念であり、
それに対して、
フランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語といった言語に代表される
ロマンス諸語は、ローマ人のことを表すラテン語の単語に起源を持つ概念であると考えられることになります。
そして、
西ヨーロッパ系の言語が、こうしたゲルマン民族と古代ローマ人という二つの民族にルーツを持つ言語として捉えられるように、
ヨーロッパ全体の歴史の流れにおいても、
ローマ人の洗練された文化とゲルマン人の力強い文化という
二つの文化が融合していく形で
その後の中世・近世・近代ヨーロッパ社会、そして、
現代までつながっていくヨーロッパの国々が形成されていったと考えられることになるのです。
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