古代オリンピックの円盤投げの具体的な特徴とは?宗教的な儀式としてのオリンピックを象徴する聖なる競技としての円盤投げ
古代ギリシアのオリンピアの祭典を中心とする古代のオリンピックにける五種競技のうちには、短距離走・走幅跳(走り幅跳び)・やり投げ・円盤投げ・レスリングという五つの種目が含まれていたと考えられることになるのですが、
こうした古代オリンピックの五種競技における走幅跳・やり投げ・円盤投げという三組の競技のうち、
前々回の記事で取り上げた走幅跳と、前回の記事で取り上げたやり投げに続く、最後に挙げた円盤投げの競技は、具体的にどのような手順で行われていたと考えられ、
そうした古代オリンピックにおける円盤投げと、現代の円盤投げの競技との間には、具体的にどのような特徴の違いあったと考えられることになるのでしょうか?
古代オリンピックの円盤投げにおける具体的な競技の特徴とは?
そうすると、まず、
現代の円盤投げにおいては、男子の場合は直径22cmで重さ2kg、女子の場合は直径18cmで重さ1kgの、金属の縁枠がはめ込まれた木製の円盤が用いられることになり、
競技者は、直径 2.5mのサークル内において一回転半ほど回転して遠心力を利用して勢いをつけてから円盤を投げて、その飛距離を競っていくことになりますが、
それに対して、
古代オリンピックの円盤投げの競技において用いられていた円盤は、現代よりもだいぶ大きくて重いものが多かったと考えられ、
具体的には、直径16~35 cm、重さ1.25 kg~5.7 kgにもわたる様々な大きさや重さの円盤が用いられていて、円盤の材質としては石製または金属製のものが競技に用いられていたと考えられ、
例えば、直径33cmで重さ5kgにもおよぶ青銅製の円盤などが用いられることもあったと考えられることになります。
そして、
こうした古代オリンピックの円盤投げの競技においては、競技者が円盤を投げる場所は、現代のようなサークルすなわち円形の形状ではなく、後方が開けた形状をしていたと考えられ、
競技者たちの円盤の投げ方も、現代のように競技者自身が一回転半ほど回転しきることはなく、半回転ほど回るとすぐに円盤を放つような投法が用いられていたと考えられることになるのです。
宗教的な儀式としての古代オリンピックを象徴する聖なる競技
そして、
こうした古代オリンピックの円盤投げの競技において用いられていた円盤は、前回の記事で取り上げたやり投げの場合とは異なり、戦争で用いられる武器というよりは、宗教的な儀式などにおいても用いられる献げ物や祭物としての意味合いが強かったと考えられ、
実際に、こうした古代の円盤投げの競技に用いられていたと考えられる青銅製や石製の円盤のなかには、
動物や鳥、儀式や競技を行う人間の姿が描かれた彫刻によって装飾された円盤や、宗教的な儀式において用いられていたと考えられる聖なる言葉や歌が刻まれた円盤、さらには、都市国家同士の条約や休戦協定などが刻まれた円盤なども数多く見つかっていて、
そういった意味では、
前述したような直径30cm以上、重さ5kgにもおよぶような青銅製の大型の円盤などのなかには、競技において実際に投げられることはなく、そうした宗教的な儀式の象徴となる装飾品として用いられていた円盤もあったとも考えられることになります。
そして、以上のように、
古代オリンピックの円盤投げの競技は、単に重い円盤を遠くに投げる距離を競うという力比べや距離比べの競技であったというだけではなく、
こうした古代のオリンピックが行われた古代ギリシアにおけるオリンピアの祭典が、その起源としては、ギリシア神話の主神にあたるゼウスへと捧げられた聖なる祭典であったと考えられることになるように、
それは、宗教的な儀式としての古代オリンピックを象徴する競技としても位置づけられる聖なる競技であったとも考えられることになるのです。
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次回記事:古代オリンピックの五種競技の具体的な競技内容とは?短距離走・走幅跳・やり投げ・円盤投げ・レスリングの五種目の特徴
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