スタディオン走とは何か?古代の短距離走の具体的な競技の手順と古代バビロニアとギリシア神話におけるスタディオンの由来
スタディオン走とは、古代ギリシアにおけるオリンピアの祭典、すなわち、古代オリンピックにおいて行われていたとされる古代の短距離走にあたる競技であり、
この競技は、紀元前776年に行われた第一回のオリンピアの祭典、すなわち、古代オリンピックの第一回大会において行われた唯一行われた最初のオリンピック競技として位置づけられることになるのですが、
それでは、こうしたスタディオン走と呼ばれる古代の短距離走においては、具体的にはどのような形で競技が行われていたと考えられることになるのでしょうか?
古代バビロニアとギリシア神話におけるスタディオンの由来
そうすると、まず、
こうした古代ギリシア語におけるスタディオン(stadion)という言葉は、もともと、古代バビロニアに起源をもつ距離の単位のことを意味する言葉であり、
それは、太陽の上端が地平線に現れてから太陽の下端が地平線を離れるまでの間に人間が歩く距離、すなわち、
朝の日の出の時に太陽が完全に姿を現すまでの2分ほどの間に普通の人間が歩くことができる距離を基準とした距離の単位のことを意味する言葉であったと考えられることになります。
そして、
古代ギリシア神話においては、古代オリンピックが行われていたギリシアの古代都市オリンピアにおけるスタディオンの長さを定めたのは、
ギリシア神話における最大の英雄にして、主神ゼウスの息子であるともされている半神半人の英雄ヘラクレスであったとされていて、
彼が息を止めたまま走ることのできた距離、または、ヘラクレスの足の大きさを600倍にした長さが、そうしたオリンピアにおける1スタディオンの距離として定められたとも語られていくことになります。
いずれにしても、
こうしたスタディオンと呼ばれる距離の単位は、人間が2分間に歩く距離、あるいは、人間の足の大きさの600倍の長さといった、個人の身体能力や体の大きさに応じて値が大きく変化していってしまう、相対的な単位であったと考えられ、
アテナイやデルポイといったギリシアの諸都市、さらには、エジプトやバビロニアなどといった世界の各地において、こうした1スタディオンにあたる距離は、150~210mくらいまでの様々な値が用いられていたと考えられることになります。
そして、
古代オリンピックが行われていた古代都市オリンピアでは競技場の遺跡における検証から、約192 mの距離の長さが、そうした1スタディオンにあたる距離として用いられていたと考えられることになるのですが、
そういった意味では、
スタディオン走と呼ばれる陸上競技においては、競技に参加する選手たちは、その名の通り、1スタディオンの距離、
すなわち、古代オリンピックが行われていた古代都市オリンピアで用いられていた距離の長さを基準とすると約192 mの直線距離を走る速さを競っていたと考えらえることになるのです。
スタディオン走における競技の手順と女性や子供も参加した競技会
そして、
こうした古代のオリンピックにあたるオリンピアの祭典において行われていた運動競技は、基本的には、神々に対して捧げる神聖なる競技として位置づけられていて、
男神であるゼウスを祀るオリンピアの祭典に参加する競技者は、成人男子に限られたうえで、基本的には、衣服をまとわない全裸の状態で競技に挑むことになっていたと考えられることになるのですが、
そうした古代オリンピックにおけるスタディオン走と呼ばれる現代の200m走に近い短距離走の陸上競技においても、選手たちは基本的には、全裸の状態でスタート地点に横一線に並んでいくことになり、
スタートラインに敷かれた石畳の上に掘られた二本の溝の部分につま先をかけ、足をわずかに曲げて、腕を真っ直ぐに前に伸ばした状態で準備を整えたうえで、
立ったままスタートを切る、言わば、スタンディングスタートの状態で、審判の号令と同時に競走を開始することになっていたと考えられることになります。
また、その一方で、
こうしたオリンピアの祭典以外の場で行われていたスタディオン走においては、成人男子とは別に、女性や子供の短距離走が行われていたケースもあったと考えられ、
その場合には、少年は成年男子の2分の1、女性は6分の5といった短縮された距離で競走が行われていたと考えられ、
競技の勝利者には、オリーブの冠と、ギリシア神話の主神ゼウスの妻にあたる女神ヘラへと捧げられた供物の牛の一部が贈られることなどもあったと考えられることになるのです。
優勝者に対して与えられた特別な名誉と「コロイボスオリンピック」
また、例えば、
キリスト教の聖典にあたる新約聖書の記述においても、
「あなたがたは知らないのですか。競技場では走る者はみな走るけれども、賞を受けるのは一人だけです。あなたがたも賞を得るように走りなさい。」
(新約聖書「コリントの信徒への手紙一」9章24節)
といった記述があるように、
こうした古代のオリンピックなどにおける競技の祭典においては、現代のオリンピックのように銀メダルや銅メダルなどといった2位や3位についた競技者が表彰を受けることはあまりなかったと考えられるのですが、
その代わりに、例えば、
紀元前776年に行われた古代オリンピックの第一回大会は、こうした最初のオリンピックにおけるスタディオン走の優勝者であったエリスのコロイボスの名を冠して、「コロイボスオリンピック」とも呼ばれていくことになったように、
1位になった競技者に対しては、特別な賞と名誉が与えられることになっていたと考えられることになるのです。
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次回記事:ディアウロス走とは何か?ギリシア語の語源に基づく具体的な意味と古代の中距離走としての競技の具体的な特徴
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