星占いにおける黄道十二宮のことを十二星座の名前で呼ぶのは間違いなのか?
前回の記事で書いたように、星占いや占星術などにおいては、おひつじ座やおうし座といった実際の天球上に位置する星座そのものというよりは、
天球上における太陽の運行に基づく春分点を基点として定められた白羊宮や金牛宮といった黄道十二宮と呼ばれる十二の領域の配置のあり方に基づいて占いが行われていくこと考えられることになるのですが、
それでは、
こうした星占いや占星術の土台となる黄道十二宮の配置のあり方のことを指して、一般的な表現としても用いられているように、おひつじ座やおうし座といった星座の名前に基づく表現を用いていくのは、
そうした天文学や西洋占星術などにおける黄道十二宮の配置のあり方に基づく厳密な意味においては、間違った表現として位置づけられてしまうことになるのでしょうか?
黄道十二宮と十二星座がそのまま直接的には対応づけられない理由
そうすると、まず、詳しくは前回の記事で書いたように、
西洋占星術においては、
天球上の太陽の通り道にあたる黄道を中心とする帯状の領域にあたる黄道帯を春分点を基点として30度ずつに区切っていくことによって定められていくことになる天球上の黄道帯における黄道十二宮と呼ばれる十二の領域の区分のあり方にしたがって、
例えば、
春分の時期にあたる3月21日から4月19日までの30日の期間に生まれた人は、黄道十二宮における白羊宮の生まれの人、
その次の 4月20日から5月20日までの31日の期間に生まれた人は、黄道十二宮における金牛宮の生まれの人
としてそれぞれ区分されていくことになると考えられることになります。
そして、
実際の天球上における星座の位置との関係においては、
こうした十二宮の最初の領域にあたる白羊宮には、それに対応する星座にあたるおひつじ座ではなく、その西隣の星座にあたるうお座が位置しているというように、
現在の天球上における十二宮と十二星座との位置関係については、実際には、両者の間にかなり大きなずれが存在すると考えられることになるため、
そういった意味では、
こうした西洋占星術における白羊宮や金牛宮といった黄道十二宮の区分のあり方のことを指して、それをおひつじ座やおうし座などといった星座の名前を用いて呼び表すことは、
それがもし実際の天球上における星座そのものの存在のことを念頭に置いて用いられている表現であるとするならば、
それは、こうした天文学や占星術の分野における厳密な意味においては、あまり正確な表現とは言えないとも考えられることになるのです。
英語とラテン語における十二宮と十二星座の呼び名の関係
それでは、
こうした西洋占星術における白羊宮や金牛宮といった黄道十二宮の区分のあり方を指して、慣用的な表現として広く用いられているように、おひつじ座やおうし座といった星座の名前に基づく表現を用いていくこと自体が完全に間違いであると言い切れるのか?というと、必ずしもそういうわけでもなく、
こうした黄道十二宮における白羊宮や金牛宮といった領域の区分のあり方を意味する言葉と、十二星座におけるおひつじ座やおうし座といった星座の名前そのもののことを意味する言葉との関係については、
例えば、英語においては、
日本語における白羊宮とおひつじ座は両方ともAries(エアリーズ)、
日本語における金牛宮とおうし座は両方ともTaurus(トーラス)
というまったく同じ単語が用いられることになり、
こうした英語における表現の大本の起源となったラテン語においても、Aries(アリエス)とTaurus(タウルス)というように英語とは異なる発音になるとはいえ、基本的には英語の場合と同じように十二宮と十二星座のそれぞれにはまったく同じ単語があてられていくことになると考えられることになります。
そして、このように、
長い歴史を通じて西洋占星術の探求が行われてきたヨーロッパ諸国の言語においては、基本的には、黄道十二宮と十二星座のことを意味する表現としては、どちらの場合もまったく同じ言葉が用いられていくことになると考えられることになるのですが、
そういった意味では、
日本語の表現においても、こうしたおひつじ座やおうし座といった言葉を、天球上における実際の星座そのものの存在のことを直接的に意味する言葉としてではなく、この言葉を
英語やラテン語の表現において黄道十二宮の領域の区分のあり方を意味する言葉として用いられているAriesやTaurusといった単語を日本語へとそのまま訳した表現として用いている場合には、そういった表現も必ずしも間違いとは言えないと考えられることになります。
つまり、
星占いや占星術の土台となる白羊宮や金牛宮といった黄道十二宮の配置のあり方のことを指して、おひつじ座やおうし座といった表現を用いるときに、
こうしたおひつじ座やおうし座といった本来は実際の天球上における星座の名前のことを意味する言葉を、あくまでも、そうした星座そのもの天球上における実際の位置とは無関係に、
黄道十二宮と呼ばれる天球上の黄道帯における形式的な領域の区分のあり方において定められた十二の領域のそれぞれを象徴する単なる識別記号のような言葉として用いる場合には、
それは天文学や占星術の分野における厳密な意味においても正しい表現として位置づけていくことができると考えられることになるのです。
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次回記事:十二支と東西南北の方位との対応関係とは?天球上における十二支の配置に基づく方位と月の位置づけ
前回記事:十二星座と十二宮の違いとは?天球上における両者の位置関係の大きなずれと具体的な定義と特徴の違いとへびつかい座
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