四旬節でキリストの苦難を思う祈りの期間が40日間続く理由とは?①新約聖書におけるキリストの荒野での40日の修行と断食
「四旬節(レント)とは何か?英語において春の訪れを意味するキリスト教における40日におよぶ祈りの期間」の記事で書いたように、
キリスト教においては、イエス・キリストの十字架の死からの復活を祝う復活祭の前に、そうしたキリストの苦難を思って自らの罪を悔い改めて心身を清めていく聖なる期間として、
四旬節(しじゅんせつ)と呼ばれる日曜日を除く40日間にわたって行われる祈りの時が持たれていくことになります。
それでは、そもそも、
こうした四旬節と呼ばれるキリストの苦難を思って行われる祈りの期間がこのようにちょうど40日間におよぶ期間とされていることには具体的にどのような理由があると考えられることになるのでしょうか?
新約聖書におけるキリストの荒野での40日間の修行と断食についての記述と四旬節と呼ばれる祈りの期間との関係
そうすると、まず、
新約聖書の記述において、こうした40日という期間がイエス・キリストの苦難といった出来事と直接的に関連づけられて語られている箇所としては、
マタイによる福音書やルカによる福音書などにおいて記されているイエスの荒野の修行と断食の場面が挙げられることになり、
そのなかでも、例えば、
新約聖書のルカによる福音書のなかでは、具体的には以下のような記述において、
イエスが荒野での断食と悪魔からの誘惑という苦難を乗り越えて、神の教えを世の人々へと告げ知らせていく伝道活動の道へと進んでいくまでの経緯が語られていくことになります。
・・・
イエスは聖霊に満ちて、ヨルダン川からお帰りになった。そして、荒れ野の中を“霊”によって引き回され、四十日間、悪魔から誘惑を受けられた。その間、何も食べず、その期間が終わると空腹を覚えられた。…
悪魔はあらゆる誘惑を終えて、時が来るまでイエスを離れた。イエスは“霊”の力に満ちてガリラヤに帰られた。その評判が周りの地方一帯に広まった。イエスは諸会堂で教え、皆から尊敬を受けられた。
(新約聖書「ルカによる福音書」4章 1節~15節)
・・・
つまり、
こうした新約聖書のルカによる福音書などにおける記述のなかでは、
イエス・キリストが聖霊によって導かれて神の教えを世に知らしめていく伝道活動へと赴いていくまでには、
荒野での四十日間の修行と断食、そして、悪魔からの誘惑との戦いといった大いなる試練と苦難を乗り越えていくことが必要だったということが語られていると考えられることになります。
そして、そういった意味では、
こうした四旬節と呼ばれる祈りの期間がちょうど40日間におよぶ期間とされている直接的な理由としては、
こうした新約聖書のマタイによる福音書やルカによる福音書などにおける記述のなかで書き記されているイエス・キリストの荒野での40日間の修行と断食の期間に合わせて、
復活祭の前にそうしたキリストの苦難を思って行われていくことになる40日間におよぶ祈りの期間の長さが定められていくことになっていったと考えられることになるのです。
・・・
次回記事:荒野での40日の修行にはじまり十字架の死からの復活と40日間の神の国の教えに終わる伝道者としてのイエスの生涯、四旬節でキリストの苦難を思う祈りの期間が40日間続く理由とは②
このシリーズの前回記事:四旬節(レント)とは何か?英語において春の訪れを意味するキリスト教における40日におよぶ祈りの期間
前回記事:安息日は土曜日か日曜日か?旧約聖書と新約聖書の記述に基づくユダヤ教とキリスト教における安息日の位置づけの違い
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