カエサルの氏族名ユリウスとローマ神話の主神ユピテルとの関係とは?ギリシア神話の英雄アエネアスの息子ユルスと神の末裔
前回の記事で書いたように、共和政末期の古代ローマにおいて皇帝にも並ぶ絶大な権力を持つ統治者として君臨していたユリウス・カエサル(Julius Caesar)の名は、その後、
ラテン語で7月のことを意味するJunius(ユーニウス)という月の名称や、英語で7月のことを意味するJuly(ジュライ)という単語の大本の由来ともなっていくことになるのですが、
その一方で、
こうしたカエサルの氏族名にあたるユリウス(Julius)という言葉は、ギリシア神話やローマ神話において登場する英雄アエネアスや、
さらに、そうしたローマ神話における主神ユピテルとも関係のある言葉としても位置づけられていくことになります。
ギリシア神話の英雄アエネアスとカエサルの氏族名であるユリウスの関係
そもそも、
こうしたカエサルの氏族名にあたるユリウス(Julius)という言葉は、直接的には、
ギリシア神話において登場するトロイアの英雄アエネアスの息子であったアルバ王アスカニオスの息子、あるいは、そうしたアスカニオス自身の別名でもあるとされているユルス(Julus)の名に由来していると考えられていて、
ギリシア神話とそれに続くローマ神話の物語においては、
トロイア戦争による祖国トロイアの滅亡後に、息子であるアスカニオスと共にヨーロッパ各地を放浪した英雄アエネアスは、現在のローマが位置するイタリア中部のラティウムの地へと流れ着き、
この地で、ラテン人の王女であったラヴィニアと結婚してラティウム王となることによって、のちの時代のローマ建国へとつながる礎が築かれていったと語られていくことになります。
そして、
その後、アエネアスの子孫たちは、ラティウムの南東の地にあったアルバ・ロンガに都を築いていくことによって、アルバ王とも呼ばれ、のちのローマを含むラティウムの地を統治していくことになり、
ローマの建国者であるとされているロムルスも、そうしたアエネアスの子孫にあたるアルバ・ロンガの王家の末裔として位置づけられていくことになるのですが、
つまり、そういった意味では、
カエサルの氏族名にあたるユリウス(Julius)という言葉は、直接的には、彼らが、
ローマ神話においてローマ建国の礎を築いた伝説上の英雄であるとされているアエネアスの息子あるいは孫にあたるユルス(Julus)の子孫にあたる人々であるということを示す氏族名であったと考えられることになるのです。
ローマ神話の主神ユピテルとカエサルの氏族名であるユリウスの関係
また、その一方で、
こうしたJulius(ユリウス)という言葉は、ラテン語における語源学的な意味に基づく解釈においては、Jovilios(ヨウィリオス) という単語の短縮形にあたる言葉としても位置づけられていて、
ラテン語においてJovilios(ヨウィリオス) とは、ローマ神話の主神であるJupiter(ユピテル)の別名にあたるJovis(ヨウィス)から派生してできた言葉であり、
それは、一言でいうと、
ローマ神話の主神にあたるユピテルに属する人々、つまり、そうしたローマ神話における主神ユピテルの末裔にあたる人々のことを意味する言葉としても解釈していくこともできると考えられることになります。
つまり、そういった意味では、
カエサルの氏族名にあたるユリウス(Julius)という言葉は、
ローマ建国の礎を築いた伝説上の英雄であるとされているアエネアスの息子あるいは孫にあたるユルスの子孫であることを示すと同時に、
ローマ神話の主神にあたるユピテルの末裔にあたる人々であるということを示していると解釈していくこともできるというように、
こうしたユリウスという氏族名は、カエサルが生きていた共和政末期から帝政期にかけての古代ローマの時代においては、
ローマ神話における伝説上の英雄や最高位の神々の名前にも連ねられていくことになるような非常に高貴な氏族名として位置づけられていくようになっていったと考えられることになるのです。
・・・
次回記事:英語で8月を意味するAugustの由来とは?ローマ帝国の初代皇帝オクタウィアヌスの尊称とユリウス暦の月の名前の位置づけ
前回記事:英語で7月を意味するJulyの由来とは?カエサルの名にちなんだユーリウスと第5番目の月のことを意味するクィンティリス
「古代ローマ史」のカテゴリーへ
「ギリシャ神話」のカテゴリーへ
「ローマ神話」のカテゴリーへ
「語源・言葉の意味」のカテゴリーへ