寄生という言葉の日常的な文脈と生物学的な定義における意味の違いとは?生物学の片利共生としての日常的な意味の寄生の定義
寄生という言葉は、日常的な意味においては、
自分の力で自立して生活せずに、他の人物や社会に頼って生きてい行くことを指してこうした言葉が用いられることが多いと考えられることになりますが、
こうした日常的な意味、あるいは、社会的な意味における寄生という言葉は、そうした言葉の本来の意味である
生物学的な意味における寄生と呼ばれる概念の定義とは、少し異なった意味で用いられている言葉であるとも考えられることになります。
寄生という言葉の生物学的な定義と日常的な文脈における意味の差異
詳しくは「寄生の定義とは?外部寄生と内部寄生と細胞内寄生の違いとそれぞれに分類される寄生者となる生物の具体例」の記事などにおいて考察してきたように、
寄生という言葉は、厳密な意味における生物学的な定義においては、
異なる種類の生物同士が一緒に生活していくなかで、一方の生物だけが利益を受けて、もう一方の生物は不利益や損害を受けている生活形態のあり方のことを意味する概念として定義されることになります。
つまり、
こうした生物学的な意味における寄生とは、一義的には、
ダニやシラミやノミといった害虫や、アニサキスやマラリア原虫などの病原体となる寄生虫などに代表されるように、
寄生者となる生物の側が宿主となる生物から一方的に利益を搾取していくというだけではなく、そうした宿主となる生物に対して不利益や損害を一方的に与える関係性のあり方のことを指して、
こうした生物学的な意味における寄生という言葉が用いられていると考えられることになるのです。
生物学における片利共生としての日常的な意味における寄生の定義
そして、それに対して、
日常的な意味、あるいは、社会的な意味において用いられている寄生という言葉には、そうした宿主となる生物に対して不利益や損害を一方的に与えるといった生物学的な定義に基づく寄生という言葉の意味が少し抜け落ちてしまっているケースがあると考えられ、
例えば、
そうした日常的な意味における寄生という言葉の用い方の具体的な例としては、親元に寄生して生活を送っている独身の子供といった意味で、パラサイト・シングルといった言葉が用いられることがあります。
そして、
こうしたパラサイト・シングルと呼ばれるような社会的な意味における寄生生活の場合には、寄生者となる独身の子供の側は、確かに、洗濯や食事の用意といった衣食住の大部分を宿主となる親に依存して生活していると考えられることになりますが、
通常の場合は、こうしたパラサイト・シングルと呼ばれるような寄生生活の場合においても、自分の収入の一部は親に渡していたり、簡単な家事や日常的な作業を協力して行ったりすることは比較的多く見られると考えられることになるように、
一般的には、
そうしたパラサイト・シングルと呼ばれるような社会的な意味における寄生生活を通じて、宿主となる人物の側に、積極的に大きな損害や不利益だけを一方的にもたらしているようなケースは非常に少ないと考えられることになります。
ちなみに、
そうした宿主となる相手に対してとくに際立った損害や不利益などを与えることがないものの、そうした相手から一方的に利益を得ているといった関係性のあり方は、
生物学的には、片利共生と呼ばれる共生関係の一種として分類される関係性のあり方として定義されることになるのですが、
つまり、そういった意味では、
こうした日常的な意味あるいは社会的な意味における寄生という言葉の用いられ方は、厳密には、生物学的な意味における寄生の定義と必ずしも一致しているわけではなく、
むしろ、
そうした生物学における片利共生と呼ばれる共生関係のあり方のことを指して、こうした寄生という言葉が用いられているとも捉えることができると考えられることになるのです。
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次回記事:胎児は母親に寄生していると言えるのか?短期的な意味における片利共生と長期的な意味における相利共生としての両者の関係
前回記事:寄生と共生の違いとは?両者に区分される全部で八つの生活形態の種類と不利益や損害といった観点に基づく具体的な特徴の違い
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