ワイル病およびレプトスピラ症の具体的な特徴と病名の由来、スピロヘータに分類されるその他の代表的な細菌の種類③、らせん菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑨
前々回と前回の記事では、らせん菌と呼ばれる細菌のグループに区分されることになるスピロヘータと呼ばれる細菌の種族なかでも、
ボレリアと呼ばれる細菌の種類によって引き起こされることになるライム病や回帰熱といった細菌感染症の具体的な特徴について、順番に詳しく考察してきましたが、
今回の記事では、それに引き続いて、
レプトスピラと呼ばれる細菌の種類によって引き起こされることになるレプトスピラ症やワイル病といった細菌感染症の具体的な特徴について詳しく考察していきたいと思います。
レプトスピラの具体的な特徴と病名および病原体の名称の由来
まず、
こうしたレプトスピラ症やワイル病といった感染症の病原体となるスピロヘータの一種として位置づけられることになる
レプトスピラ(Leptospira)とは、幅0.1マイクロメートル、長さ6~20マイクロメートルほどの大きさをした細長い螺旋状の形状をしたグラム陰性の好気性らせん菌に分類される細菌の種類であり、
こうしたレプトスピラと呼ばれる細菌は、自然宿主にあたるネズミなどの保菌動物の尿によって汚染された水などを通じて経口感染するケースのほかに、
そうした汚染された水や湿った土壌などに生息している病原菌が皮膚の表面に目に見えるような傷口がない場合でも経皮感染してしまうケースもあると考えられることになります。
そして、
こうしたレプトスピラを病原体とする細菌感染症であるレプトスピラ症は、主に、中南米や東南アジアなどといった熱帯や亜熱帯の地域において感染の流行が見られることになるほか、日本国内においては、沖縄県などにおいて散発的な感染が報告されていて、
レプトスピラ症においては、3日から2週間くらいの潜伏期間の後に、発熱や頭痛、筋肉痛といった風邪に似た症状が引き起こされることになり、軽症の場合はそのまま治癒していくことになるのですが、
重症化するケースでは、黄疸や肝機能障害、腎機能障害、さらには、皮下出血や粘膜からの出血といった症状が引き起こされることによって命に関わるケースもあるため、
こうした地域に滞在する際には、河川の利用や水辺でのレジャーなどの際に、注意を払うことが必要な感染症の種類として位置づけられることになると考えられることになります。
ちなみに、
こうしたレプトスピラ症という病名、そして、その病原体にあたるレプトスピラ(Leptospira)という細菌の名称の由来は、
ラテン語において「薄い」「ほっそりとした」といった意味を表す形容詞であるleptus(レプトゥス)と、
同じくラテン語において「螺旋」や「渦巻き」のことを意味する名詞であるspira(スピーラ)という二つの単語が合わさってできた言葉であると考えられることになります。
つまり、
上述したような感染症の原因となる病原体が、「螺旋状の形」をしたスピーラ(spira)、すなわち、スピロヘータ(Spirochaeta)に分類される細菌の種類のなかでも、
特に、細胞体の形状が「細長い形」をした細菌の種類であるために、こうした
レプトスピラ(Leptospira)という名前が付けられることになったと考えられることになるのです。
ワイル病と出血熱との関係と「ワイル病」という病名自体の由来
そして、
こうしたレプトスピラと呼ばれるスピロヘータの一種にあたる細菌の種類によって引き起こされる感染症であるレプトスピラ症のなかでも、
上述したような黄疸や皮下出血などといった重症化した症状が見られるケースについては、特に区別されて、黄疸出血性レプトスピラ病、または、ワイル病という感染症名でも呼ばれることになるのですが、こうした
ワイル病(Weil Disease)と呼ばれる重症型のレプトスピラ症の病態においては、発症してからすぐに、高熱と全身の筋肉痛、そして、眼球の結膜部分の充血といった症状が現れたのち、
発症から1~2週間ほど経過したのちに、前述した黄疸や肝機能障害、腎機能障害といった症状が引き起こされるケースがあるほか、
最悪のケースでは、エボラ出血熱などにおいて見られるような全身の粘膜や皮膚からの出血といった症状が引き起こされるケースもあると考えられることになります。
ちなみに、
こうしたワイル病と呼ばれる病態については、1907年に、この感染症の病原体となるレプトスピラと呼ばれる細菌が発見される以前の1886年の時点において、すでに、
ドイツの内科医であったアドルフ・ヴァイル(Adolf Weil)によって感染症の症例がはじめて報告されていて、
つまりは、病原体の発見以前に、感染症の存在自体の発見がなされていたと考えられることになるのですが、
こうしたワイル病と呼ばれる病名自体の由来は、
そうした感染症の症例自体の発見者にあたるヴァイル博士の名前の英語読みにあたる「ワイル」という名前にちなんで、こうした「ワイル病」という病名が付けられることになったと考えられることになるのです。
・・・
次回記事:腸管スピロヘータ症と豚赤痢の具体的な特徴と病名の由来、スピロヘータに分類されるその他の代表的な細菌の種類④、らせん菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑩
前回記事:回帰熱の具体的な特徴と病名の由来とは?スピロヘータに分類されるその他の代表的な細菌の種類②、らせん菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑧
「生物学」のカテゴリーへ
「医学」のカテゴリーへ