スピロヘータという名称のラテン語と古代ギリシア語における由来と細長い螺旋状の形状をした菌体の構造の仕組み、らせん菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑤
前回までの一連の記事では、らせん菌(螺旋菌)と呼ばれる細菌のグループに分類される代表的な細菌の種類のうち、
カンピロバクターや、ピロリ菌に代表されるヘリコバクター、さらには、ビブリオ属に分類されるコレラ菌やナグビブリオといった消化器系の症状を中心とする細菌感染症の原因となる代表的ならせん菌の種類について順番に取り上げてきましたが、
こうしたらせん菌と呼ばれる細菌のグループには、その他にも代表的なものとして、スピロヘータと呼ばれる非常に細長い螺旋状の形状をした細菌の種類も分類されることになります。
スピロヘータにおける細長い螺旋状の形状をした菌体の構造の仕組み
まず、冒頭でも述べたように、
スピロヘータ(Spirochaeta)とは、幅0.1~0.5マイクロメートルであるのに対して、長さは5~500マイクロメートルにまでおよぶような細長い螺旋状の形状をしたグラム陰性の嫌気性らせん菌に分類される細菌の種族であり、
菌体の両端を一直線に結ぶような形で伸びている鞭毛(べんもう)または軸糸(じくし)と呼ばれる組織を軸として細長い細胞体全体がぐるぐると絡みついていくことによって、そうした細長い螺旋状の形状をした菌体の構造が形成されていくことになると考えられることになります。
そして、
こうしたスピロヘータと呼ばれる細菌の種族は、これまでの記事で取り上げてきたカンピロバクターやヘリコバクターといったその他のらせん菌に分類される代表的な細菌の種類と比べても、
最大で100倍以上の長さとなるような、非常に長大な長さを持った細菌の種類が分類されることになるというように、様々な形状をした多様な細菌の種類のなかでも、極めて特徴的な細菌の種族として位置づけられることになると考えられることになるのです。
スピロヘータという名称のラテン語と古代ギリシア語における由来
そして、
こうしたスピロヘータと呼ばれる細菌の種族のことを表す名称自体の由来は、
古代ギリシア語におけるspeira(スペイラ)、そして、それがラテン語へと派生してできたspira(スピーラ)という単語に求められることになるのですが、
ラテン語において、こうしたspira(スピーラ)という単語は、「コイル状に編み上げた髪」あるいは「とぐろを巻く蛇」といった渦巻や螺旋状の形をした事物を意味する名詞として用いられていた単語であると考えられることになります。
そもそも、
こうしたスピロヘータや、カンピロバクター、ヘリコバクターといった細菌の種類を代表とするらせん菌という細菌のグループのことを表す名称自体が、英語においては、spirillum(スピリルム)と呼ばれているように、
もともとは、こうしたラテン語におけるspira(スピーラ)という単語から派生してできた言葉であると考えられることになり、
さらに言えば、
英語において、「螺旋」や「渦巻き」のことを意味するspiral(スパイラル)という単語自体が、
こうしたラテン語におけるspira(スピーラ)、そして、その形容詞の形あたるspiralis(スピーラーリス)という単語に直接的に由来する言葉であるとかんがえられることになるのですが、
そういった意味では、
スピロヘータ(Spirochaeta)と呼ばれる細菌の種族は、上述したような細菌の名称自体の語源学的な意味に基づいて考えた場合、
カンピロバクターやヘリコバクターといった他の様々な細菌の種類が分類されることになるらせん菌と呼ばれる細菌のグループのなかでも、
そうしたらせん菌と呼ばれる細菌のグループを特徴づけているとぐろを巻いたヘビや針金をぐるぐると巻いたコイルのような形状を最も特徴的な形で体現している、言わば、
the King of Kings、あるいは、the Lord of Lords、ならぬ、
the spirillum of spirillums、あるいは、the spiral of spirals、すなわち、「らせん菌の中のらせん菌」とも呼ぶべき細菌の種族として位置づけられることになると考えられることになるのです。
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次回記事:梅毒トレポネーマの具体的な特徴とラテン語における学名と梅毒という呼称の由来、らせん菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑥
前回記事:ナグビブリオとコレラ菌の違いとは?血清型に基づく両者の区別とナグビブリオという病原菌の名称の由来、らせん菌に分類される代表的な細菌の種類とは?④
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