猛毒御三家に分類される毒キノコの英語における三つの別名とは?ラテン語の学名の由来とそれぞれの毒キノコの具体的な特徴
前回の記事でも書いたように、毒キノコの分類される200種類以上の様々なキノコの種類のなかでも、食中毒によって死に至る危険性もある猛毒を持つ毒キノコの代表的な種類としては、
担子菌類に分類されるドクツルタケ、タマゴテングタケ、シロタマゴテングタケ、ニガクリタケ、コレラタケ(ドクアジロガサ)、ドクササコ、ニセクロハツ、タマシロオニタケといった毒キノコの種類と、
子嚢菌類に分類されるカエンタケ、シャグマアミガサタケといった毒キノコの種類が挙げられることになるのですが、
こうした全部で10種類の猛毒を持つ毒キノコの種類のなかでも、はじめに挙げたドクツルタケ、タマゴテングタケ、シロタマゴテングタケと呼ばれる三種類の毒キノコは、
猛毒御三家などとして、こうした猛毒を持つ毒キノコの中でも、特に毒性の高い毒キノコの種類として位置づけられることになります。
「破壊の天使」の異名を持つドクツルタケの特徴とラテン語の学名の由来
こうした猛毒御三家として並び称される三つの猛毒のキノコの種族は、そのすべてがテングタケ属に分類されるキノコの種類であり、
こうした日本語においてはテングタケ属と呼ばれるキノコの種族の区分は、ラテン語における正式な学名ではAmanita属(アマニータ属)として区分されることになります。
そして、このうち、
はじめに挙げたドクツルタケ(毒鶴茸)と呼ばれる毒キノコの種類は、ラテン語における学名ではAmanita virosa(アマニータ・ウィローサ)と呼ばれることになるのですが、
こうしたドクツルタケのラテン語の学名に含まれているvirosa(ウィローサ)という単語は、ラテン語においてはもともと毒液や粘液のことを意味していたvirus(ウイルス)という言葉と同じ語源を持つ言葉として位置づけられることになります。
そして、
こうしたドクツルタケあるいはアマニータ・ウィローサと呼ばれる毒キノコは、一見すると美しくも見えるなめらかな表面をした真っ白な傘を広げた姿をしているものの、
その無味無臭の純白のキノコを食べた者の体内は猛毒によって徐々に蝕まれていき、腹痛や嘔吐や下痢といった食中毒の症状がいったん治まったのち、適切な治療がなされなかった場合には、
胃腸からの出血や、肝機能や腎機能が破壊されていくことによって確実に死に至ることになるといったことから、
英語ではDestroying Angel(デストロイング・エンジェル)、すなわち、「破壊の天使」という異名でも呼ばれることになるのです。
「死を呼ぶ傘」の異名を持つタマゴテングタケの特徴と日本名の由来
そして、
その次に挙げたタマゴテングタケ(卵天狗茸)と呼ばれる毒キノコの種類は、ラテン語における学名ではAmanita phalloides(アマニータ・ファロイデス)と呼ばれることになるのですが、
こうしたタマゴテングタケと呼ばれる毒キノコは、キノコの柄や襞(ひだ)の部分は、ドクツルタケと同じような白い色をしているものの、キノコの傘の表面の部分は黄色または暗緑色をしていて、
はじめは卵状の形をしていたキノコがやがてまるで卵からふ化するかのように傘を開いていくという形で成長していき、成長した後になっても根元の部分がそうした卵状の形をした白い壺のような組織に包まれているため、日本語ではこうしたタマゴテングタケという名前が付けられたと考えられることになります。
そして、
こうしたタマゴテングタケあるいはアマニータ・ファロイデスと呼ばれる毒キノコは、前述したドクツルタケと同様の食中毒の症状を引き起こすことによって、適切な治療がなされなかった場合には、食べた人を確実に死へと導いていくことになるので、
英語ではDeath Cap(デス・キャップ)、すなわち、「死を呼ぶ傘」という異名でも呼ばれることになるのです。
「愚か者のキノコ」の異名を持つシロタマゴテングタケの特徴とラテン語の学名の由来
そして、
最後に挙げたシロタマゴテングタケ(白卵天狗茸)と呼ばれる毒キノコの種類は、ラテン語における学名ではAmanita verna(アマニータ・ウェルナ)と呼ばれていて、
このキノコのラテン語における学名のうちに含まれているverna(ウェルナ)という単語は、もともとラテン語において「春」のことを意味するvernum(ウェルヌム)といった言葉から派生した単語であると考えられるように、
こうしたシロタマゴテングタケあるいはアマニータ・ウェルナと呼ばれる毒キノコは、春のヨーロッパの森林地帯においてよく見られてきた毒キノコの種類であると考えられることになるのですが、
日本においては、ヨーロッパとの気候の違いなどから、春よりはむしろ夏から秋にかけて多く見られる毒キノコの種類であると考えられることになります。
そして、
シロタマゴテングタケは、全体が白い色をしているという点ではドクツルタケに、それ以外のキノコ自体の構造といった点ではタマゴテングタケによく似た特徴を持った毒キノコの種類であると考えられ、そうした両者の毒キノコと同じように、間違って食べてしまった人を猛毒によって死に至らしめることになると考えられることになるのですが、
こうしたシロタマゴテングタケあるいはアマニータ・ウェルナと呼ばれる毒キノコは、そうしたぽかぽかと暖かくなってきてついつい注意が散漫になりがちな春の季節などに、ついうっかりして食べてしまいたくなるといったことへの戒めの意味も込めて、
英語ではThe fool’s mushroom(ザ・フールズ・マッシュルーム)、すなわち、「愚か者のキノコ」という異名でも呼ばれることになるのです。
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以上のように、
日本においては猛毒御三家などとして並び称されるドクツルタケ、タマゴテングタケ、シロタマゴテングタケと呼ばれる三種類の毒キノコの種類は、英語においてはそれぞれ、
ドクツルタケは「破壊の天使」(Destroying Angel)
タマゴテングタケは「死を呼ぶ傘」(Death Cap)
シロタマゴテングタケは「愚か者のキノコ」(The fool’s mushroom)
という三つの異名を持つ猛毒のキノコの種類としても位置づけられることになるのです。
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次回記事:動物性の自然毒の代表的な種類とは?①テトロドトキシを原因とする食中毒の具体的な症状および毒素としての性質と予防対策
前回記事:毒キノコに分類される代表的な20種類のキノコとは?担子菌類と子嚢菌類に分類される代表的な毒キノコの種類のまとめ
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