カビ毒による食中毒の原因となる代表的な化学物質の種類とは?②黄変米の原因となる化学物質とその他の代表的なカビ毒
前回の記事に引き続いて、カビ毒による食中毒の原因となる代表的な化学物質の種類と、それぞれの種類のカビ毒によって引き起こされることになる具体的な中毒症状などについて一つ一つ取り上げていくと、
前回取り上げたアフラトキシン、オクラトキシン、トリコテセン、パツリンといったカビ毒の種類に続いて、
黄変米と呼ばれる変質米の原因となった以下のようなカビ毒の種類も挙げていくことができると考えられることになります。
黄変米の原因となる代表的なカビ毒の種類
太平洋戦争後の日本では、戦後の食糧難に対応するための緊急処置として、ビルマ(現在のミャンマー)などを中心とする東南アジア諸国から大量の米を輸入したうえで、国民への配給が行われていましたが、
こうした1950年代初頭に輸入された外国産の米のなかに、黄変米(おうへんまい)と呼ばれるカビ毒に汚染された変質米が多く検出されたため、
健康被害への懸念から、黄変米の配給停止を求める市民運動が激化していくことになり、十数万トンにも及ぶ輸入米が廃棄される事態へと至るといった黄変米事件とも呼ばれる社会問題が進展していくことになりました。
そして、
こうした黄変米と呼ばれる変質米の原因となる具体的なカビ毒の種類としては、シトリニン、シトレオビリジン、シクロクロロチン、イスランジトキシン、ルテオスカイリン、ルブロスカイリン、ルグロシンといったカビ毒の種類が挙げられることになり、
このうち、
⑤シトリニン(Citrinin)と呼ばれる化学物質は、腎細尿管上皮変性を引き起こすことによって腎臓障害を引き起こすカビ毒の種類、
⑥シトレオビリジン(Citreoviridin)は、肝臓障害のほかに、中枢神経にも作用することによって、手足の麻痺や呼吸困難を起こす危険性のあるカビ毒の種類としても位置づけられることになります。
また、そのほかの、
⑦シクロクロロチン(Cyclochlorotin)、⑧イスランジトキシン(Islanditoxin)、⑨ルテオスカイン(Luteoskyrin)、⑩ルブロスカイリン(Rubroskyrin)、⑪ルグロシン(Rugulosin)といった化学物質は、すべて肝臓障害を引き起こすカビ毒の種類として位置づけられていて、
そのなかでも、ペニシリウム属のカビによって産出されるカビ毒の一種であるルテオスカインは、肝臓がんなどを誘発する原因ともなる発がん性物質としても位置づけられることになるのです。
その他の代表的なカビ毒の種類
また、これまでの記事では取り上げてこなかったその他の代表的な種類カビ毒の種類としては、
ステリグマトシスチン、ルブラトキシン、麦角アルカロイド、フモニシン、ゼアラレノンといったカビ毒の種類が挙げられることになり、
このうち、
⑫ステリグマトシスチン(Sterigmatocystin)と呼ばれる化学物質は、トウモロコシや米、小麦や大麦といった穀類を汚染する肝臓や肺に対して毒性を示すカビ毒の種類であり、
⑬ルブラトキシン(Rubratoxin)は、トウモロコシを中心とする穀類を中心とする汚染が懸念される肝臓や腎臓に対して毒性を示すカビ毒の種類として位置づけられることになります。
また、その次に挙げた
⑭フモニシン(Fumonisins)は、トウモロコシや干しぶどうなどへの汚染が問題となる肝臓や腎臓に対する毒性や、生後4週間くらいまでの新生児における神経系の正常な形成を阻害する危険性もある示すカビ毒の種類としても位置づけられることになり、
⑮ゼアラレノン(Fumonisins)は、トウモロコシを中心とする穀物における汚染が問題となる人体における正常なホルモンの作用を阻害する内分泌かく乱物質として位置づけられることになるほか、
こうしたゼアラレノンによって汚染されたトウモロコシが家畜の飼料として用いられた場合には、豚などの家畜における不妊や流産などを誘発するカビ毒の種類としても位置づけられることになります。
そして、最後に挙げた
⑯麦角アルカロイド(Ergot Alkaloid)は、ライ麦や小麦といった麦類を中心とする穀物に寄生するカビの一種である麦角菌(ばっかくきん)によって生産されるカビ毒の一種であり、
こうした麦角アルカロイドと呼ばれるカビ毒が食品を通じて人体に取り込まれた場合には、麦角中毒と呼ばれる中毒症状を引き起こすことによって、
循環器系や神経系に対して様々な毒性が示されることになり、感覚異常や血管収縮さらには、そうした中毒症状による急激な血流の低下によって、意識障害やけいれん、さらには、手足の壊死といった症状が現れる危険性があるほか、
こうした中毒症状が妊婦に現れた場合には、血管の収縮にともなう子宮収縮によって流産などを引き起こす危険性もあると考えられることになるのです。
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次回記事:自然毒による食中毒の原因となる代表的な植物や動物の種類とは?キノコとカビを原因とする食中毒の分類のされ方の違い
前回記事:カビ毒による食中毒の原因となる代表的な化学物質の種類とは?①アフラトキシン、オクラトキシン、トリコテセン、パツリン
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