心理学における適応的防衛と不適応的防衛のあり方の違いとは?③特定の防衛機制の選好によって引き起こされる認知の歪みの偏り方、防衛機制とは何か?㉚

前々回前回(の記事で書いてきたように、自我が様々なストレス状況から自分自身の心を守ろうとする心の働きである防衛機制のあり方は、

そうした防衛機制の働きが機能していく際に生じる現実における社会生活への適応のあり方に応じて、適応的防衛と不適応的防衛という二つの区分へと分けることができると考えられ、

両者を区別する具体的な基準としては、それぞれの防衛機制の機能の単純性と複雑性、そうした心の働きが及ばす影響範囲の広さ、それぞれの防衛機制の種類における意識化のレベルの差異といった点などを主要な基準として挙げることができると考えられることになるのですが、

両者を区別するための指針となる基準をさらにもう一つ挙げていくとするならば、

個人個人の心が無意識のうちに好んで用いることになる防衛機制の種類の単一性と多様性といった観点を挙げることができると考えられることになります。

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防衛機制の種類に応じた認知の歪み方の違いとは?

以前にも述べたように、防衛機制と呼ばれる心の働きが機能するときには、そうした自我の自己防衛的な心の働きによって、自我や意識といった社会生活を営む主体となる心の領域が様々なストレス状況から直接的に深刻なダメージを受けることが回避されていくことになる代わりに、

その反動として、現実の状況に対する認知の歪みが生じてしまうことになると考えられることになります。

そして、例えば、

「抑圧」や「情動分離」といった防衛機制の働きの場合には、自我や意識に悪影響を及ぼす可能性のある感情や衝動が無意識の領域のうちへと押し込められたり隔離されたりしていくことによって、直接的に意識の領域から排除されていくという形で認知の歪みが生じていくことになるのに対して、

「合理化」と呼ばれる防衛機制の働きの場合には、自我や意識にとって不快な現実の状況に対して、自分にとって都合の良い言い訳となるような合理的な説明を付け加えていくことによって、間接的な形で不満や不安の軽減が行われていくといった形で歪みが生じていくことになるというように、

そうした防衛機制の働きが機能していく際に生じる認知の歪み方は、それぞれの防衛機制の種類に応じて異なった特徴を示す形で現れていくことになると考えられることになるのです。

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特定の防衛機制の選好によって引き起こされる認知の歪みの偏り方

そして、このように、

防衛機制の種類によって、そうした心の働きが機能していく際の認知の歪み方に大きな違いが生じていくということは、同じようなストレス状況に対応して同程度の規模の認知の歪みが生じた場合でも、

そうした認知の歪みが一つの防衛機制の働きが繰り返し用いられることによって引き起こされている場合と、複数の防衛機制が少しずつ働くことによって引き起こされている場合とでは、認知の歪み方に質的な差異が徐々に生じていくことになると考えられ、

そういった意味では、一般的に、

同じ防衛機制の働きを多用すればするほど、自らの心の内部において生じる認知の歪みの偏り方が大きくなっていき、それに伴って、現実における社会生活を健全な形で営んでいくことが次第に難しくなっていくことになると考えられるのに対して、

互いに異なった性質を持った複数の防衛機制の働きが少しずつバランス良く用いられていくケースでは、それぞれの防衛機制の働きによってもたらされる認知の歪み方が現実における実際の状況との間の致命的な齟齬をきたさないような一定の範囲内に収められる形でコントロールされていく可能性が高くなると考えられることになります。

つまり、以上のような考え方に基づくと、

トータルとしては同程度の規模の認知の歪みを引き起こす防衛機制の力が働く場合においても、

単一の防衛機制の働きが選好されて集中的に用いられていくケースでは、そうした心の働きによって引き起こされる認知の歪みの偏り方が深刻な域へと達していってしまうことによって不適応的防衛へと進展していってしまう危険性が高いと考えられるに対して、

多様な防衛機制の種類がバランス良く分散して用いられていくケースでは、そうした心の働きが現実の社会生活に対して深刻な悪影響を及ぼさない適応的防衛の範囲にとどまる可能性がより高まっていくことになると考えられるのです。

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次回記事:防衛機制の具体的な種類と分類のまとめ、心理学における代表的な二十四種類の防衛機制の定義、防衛機制とは何か?㉛

前回記事:心理学における適応的防衛と不適応的防衛のあり方の違いとは?②意識化の度合いという観点から見た両者の区別、防衛機制とは何か?㉙

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