心理学における適応的防衛と不適応的防衛のあり方の違いとは?②意識化の度合いという観点から見た両者の区別、防衛機制とは何か?㉙

前回の記事で書いたように、現実の社会において生じる様々なストレス状況から自分自身の心を守る自我の防衛機制のあり方は、

そうした心の機能が働くことによって現実における社会生活がよりスムーズに営まれるようになっていく適応的な防衛のあり方と、

そうした心の機能が働くことによってかえって健全な社会生活が妨げられてしまうことになる不適応的な防衛のあり方という二つの区分へと分類することができると考えられることになります。

そして、最も分かりやすい基準としては、

一般的に、比較的単純な働きを持った防衛機制の機能が用いられ、その影響範囲も小規模なものにとどまる場合には、それは適応的防衛として機能する場合が多く、

それに対して、防衛機制の機能がより複雑な働きのあり方へと移行し、その影響範囲も大規模なものになっていくようになると、本人の現実における社会生活に悪影響を及ぼす不適応的防衛へと進展していってしまう危険性が高くなると考えられることになるのですが、

こうした適応的防衛と不適応的防衛の両者を区別するための具体的な指標のあり方としては、その他にもさらにいくつかの基準を挙げていくことができると考えられることになります。

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防衛機制のそれぞれの種類における意識化のレベルの差異

人間の心における様々な防衛機制の種類を分類していく基準としては、前回取り上げた機能の単純性影響範囲の大小といった基準のほかに、

そうした防衛機制が働く際の心の働きの意識化の度合いといった観点も一つの基準として挙げることができると考えられることになります。

心理学における防衛機制の働きは、一般的には、意識や自我にとって不都合な観念や衝動などを意識のレベルに悪影響を与えない形で処理しようとする心の働きとして定義されることになるので、

それは基本的には本人の意識や自我にとっては無自覚的な無意識のレベルにおいて機能することが多い心の働きであると考えられることになるのですが、

様々な防衛機制の種類同士の間には、それぞれの心の働きの意識化あるいは無意識化のレベルに差異が存在すると考えられ、

例えば、

「合理化」や「知性化」といった心の働きにおいては、かなり意識化の度合いが高いレベルにおいて、防衛機制の働きが進展していくことになると考えられることになります。

心理学において合理化とは、自らの心の内に存在する満たされない欲求や不安などに対して合理的な説明を与えることによって自分自身を納得させようとする心の働き、

知性化とは、自分自身の心の内で遮断された感情を知性的な働きによって観念化して整理していくことによって論理的な形で理解していこうとする心の働きとしてそれぞれ定義されることになりますが、

こうした合理的説明や論理的理解を形成することを通じて自分自身の心を守ろうとする防衛機制の働きにおいては、そうした説明や理解を可能とする意識のレベルにおける知性や理性の働きが深く関与していくことになるので、

それは、必然的に通常の防衛機制の働きよりも意識化される傾向の強い防衛機制のあり方として位置づけられることになるのです。

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意識化の度合いという観点から見た適応的防衛と不適応的防衛の区別

そして、

こうした「合理化」や「知性化」といった心の働きに代表されるような意識化の度合いが高い防衛機制のあり方においては、

防衛機制によって生じた認知の歪みが自分自身の意識や自我にとってもある程度十分に自覚されていくことになり、

自分自身の心の内部における認識のあり方と、現実の世界における実際の状況との間に修復不可能な致命的な解離が生じてしまう危険性も比較的低くなると考えられることになるので、

そうした防衛機制の働きは、本人の現実における社会生活に致命的な悪影響を及ぼす不適応的防衛へと進展していってしまう傾向が比較的低い防衛機制のあり方として位置づけられることになると考えられることになります。

つまり、そういった意味では、

意識化の度合いが高い、すなわち、意識の領域において比較的はっきりと自覚されていく形で働く防衛機制の働きは、

本人の現実における社会生活にあまり強い悪影響を及ぼすことのない、どちらかというと本人の円滑な社会生活をサポートする傾向が強い心の働きとして捉えることができるのに対して、

意識化の度合いが低い、すなわち、無意識の領域の奥底において深く潜伏していく形で働く防衛機制の働きにおいては、

社会生活を営む主体となる意識や自我といった心の領域が、そうした自我の防衛機制の働きのあり方を十分に把握したり適切な形でコントロールすることが難しくなってしまうことによって、

そうした心の働きが進展していくにしたがって、本人の現実社会に対する適応がより難しくなっていってしまうと考えられるというように、

一般的に言って、

意識化の度合いが高い防衛機制の働き、すなわち、意識的な防衛機制の働きほど、長期にわたって適応的防衛の範囲にとどまり続ける傾向が強く、

それに対して、

意識化の度合いが低い防衛機制の働き、すなわち、無意識的な防衛機制の働きほど、不適応的防衛へと進展していってしまう傾向が強い心の働きとして捉えられることになると考えられるのです。

・・・

次回記事:心理学における適応的防衛と不適応的防衛のあり方の違いとは?③特定の防衛機制の選好によって引き起こされる認知の歪みの偏り方、防衛機制とは何か?㉚

前回記事:心理学における適応的防衛と不適応的防衛のあり方の違いとは?①単純性と複雑性および部分性と全体性という観点から見た両者の区別、防衛機制とは何か?㉘

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