意識・前意識・無意識と自我・超自我・エスの具体的な対応関係とは?②両者の間に存在するより複雑な構造を持った力動的で立体的な三項対立の対応関係の構図

前回の記事で書いたように、「意識・前意識・無意識」「自我・超自我・エス」というフロイトの心理学理論において登場する人間の心に関する二つの階層構造のモデルの間には、

単純に捉えれば、意識≒自我前意識≒超自我無意識≒エス(イド)、という対応関係が成立していると解釈することができると考えられることになります。

しかし、その一方で、

こうした両者の心理学的な階層構造のモデルの間に存在する根本的な相違点についてより詳しく考察していくとするならば、

そこには、より正確な意味においては、

前回取り上げたシンプルで直接的な一対一の対応関係としての両者の概念同士の関係よりは、もう少し複雑な構造をもった対応関係を見いだすことができると考えられることになります。

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「意識・前意識・無意識」と「自我・超自我・エス」の間に存在する少し複雑な構造を持った力動的な対応関係

意識・前意識・無意識と自我・超自我・エスの間の力動的な対応関係

詳しくは前々回の記事で書いたように、「意識・前意識・無意識」と「自我・超自我・エス」という二つの心理学的な階層構造のモデルの間に存在する具体的な相違点としては、

前者の「意識・前意識・無意識」という三つの領域において人間の心を捉えようとする階層構造のモデルにおいては、

人間の精神における自覚のレベルに応じて領域の区分がなされていくという静的な観点から人間の心の階層構造が捉えられているのに対して、

後者の「自我・超自我・エス」という三つの部分において人間の心を捉えようとする階層構造のモデルにおいては、

それぞれの心の部分が持つ具体的な心の働きや役割の方に焦点が当てられて区分がなされていくことになるという動的な観点から人間の心の階層構造が捉えられているといった点が挙げられることになります。

そして、

こうした自我・超自我・エスと呼ばれる三つの心の部分が持つ力動的な構造のあり方についてより厳密な形で図示しようと試みる場合、

「意識・前意識・無意識」と「自我・超自我・エス」という二つの階層構造のモデルの間には、上図において示したような少し複雑な構造を持った対応関係を見いだすことができると考えられることになるのです。

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意識から無意識へと至る心のグラデーションと自我・超自我・エスの間の三項対立の構図

前回書いたように、自我とは、それが現実おける自覚的な行動や選択を決定づける役割を担う心の部分である以上、意識の領域を中心に活動する心の部分として位置づけられることになると考えられることになるのですが、

その一方で、こうした自我と呼ばれる心の部分は、現実において実際に行動に移すのは望ましくない様々な欲求や衝動が無意識の領域からのぼってきた場合、それらの無意識的な欲求や衝動を抑圧する働きを担う心の部分であるとも捉えられることになるので、

自我は、こうした力動的な観点においては、意識の領域を中心に活動を広げると同時に、無意識の領域において抑圧の力を及ぼす役割も担う心の部分として捉えられることになります。

そして、それと同様に、

そうした心の奥底に存在する本能的な欲求や衝動を司るエスと呼ばれる心の部分も、それが自我に対して強い衝動突きつけてくる場合には、無意識の領域を超えて、意識の領域にかなり近いところまでその影響力を行使してくることになると考えられることになるので、

エスの場合については、それは無意識の領域を中心に活動を広げると同時に、意識の領域対しても強い影響力を及ぼす心の部分として捉えられることになります。

そして、それに対して、

超自我と呼ばれる心の部分については、それがエスの部分において生じる本能的な欲求や衝動を道徳的な命令や規範によって規制する形で自我の部分へと伝えるという役割を担っているという点において、前意識の領域を中心に活動を広げる心の部分であると同時に、

超自我は、こうした自我とエス(イド)との間の橋渡し役を担う心の部分であるという意味においては、前掲した図においてに示したような自我とエスの両者を結ぶアーチ型のようなイメージとして捉えることができるとも考えられることになるのです。

・・・

以上のような一連の考察に基づいて、「意識・前意識・無意識」「自我・超自我・エス」という人間の心に関する二つの階層構造の間のより厳密な形での対応関係について考えていくと、

まず、人間の心の内部においては、心の表層における自覚的な意識の階層から、その奥底に存在する無自覚的な無意識の階層へとグラデーションのような形で心の領域が広がっていて、

そうした全体的な心の領域の内部において、意識を中心に活動を広げて無意識の領域へも抑圧の力を及ぼす自我と、無意識の領域から意識の領域へと本能的な欲望や衝動を突き上げてくるエス(イド)と呼ばれる心の部分、

そして、そうした自我とエスの両者の間の橋渡しの役目を担う心の部分である超自我という三つの心の部分の間において三項対立の構造が生じていると考えられることになります。

つまり、

こうした意識・前意識・無意識の三層構造のモデルから、自我・超自我・エスの三部分のモデルへの移行の過程においては、

はじめは意識から前意識を経て無意識へと至るという静的な観点において捉えられていた人間の心の階層構造のあり方が、自我・超自我・エスという力動的で立体的な三項対立の関係において改めて捉え直されていくという形で、

フロイトの心理学理論における人間の心の階層構造の捉え方自体が大きく変化していっているとも解釈することができると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:エス(イド)とは何か?①心身医学の祖であるゲオルク・グロデックによる心理学的な概念としてのエス(Es)の概念の導入

前回記事:意識・前意識・無意識と自我・超自我・エスの具体的な対応関係とは?①両者の概念同士の間の最もシンプルで直接的な一対一の対応関係

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