ノロウイルスの患者の看護の仕方とは?ノロウイルス対策⑫
今回は、ノロウイルス対策の3段構えの目標の3段階目、病気からのスムーズな回復を促すための看護法について、考えてみたいと思います。
ノロウイルスの患者に対する適切な看護法とは?
ノロウイルスには、抗ウイルス剤のような特効薬が存在しません。
したがって、
人体の免疫がウイルスに打ち勝ち、身体からウイルスをすべて追い出してしまうまでの間は、
なるべく、症状がラクに経過してすみやかに回復へと向うように手助け、
人体の免疫力が十分に働きやすいようにサポートしてあげること、
が、看護の目標となります。
そして、そのために重要なのが、
水分補給、身体の保温と体力の温存、そして心理的なサポートということになります。
ノロウイルスの患者に対する水分補給の方法とは?
ノロウイルスは下痢や嘔吐、38℃程度の発熱などを引き起こすので、症状の進行にともなって、体内の水分が不足しやすくなります。
水分が不足してくると、
体内の循環も悪くなり、体力の消耗や、免疫力が十分に働けなくなることにもつながります。
さらに、脱水症状にまでなると、
熱中症などの場合と同様に、直接、命にも関わってきます。
したがって、
ノロウイルスの患者の看護では、水分をなるべく頻繁に補ってあげることが最重要になります。
1時間に1回は、コップ半分くらいの水分を補給させるイメージで、
特に、下痢や嘔吐があったときは、具合がある程度落ち着き次第、
失った分の水分を補うようなイメージで、水分をしっかりとってもらうようにするとよいでしょう。
このとき、
水分補給は、冷たい水でおこなうと、お腹がびっくりしてしまい、良くないので、
50℃から70℃くらいの熱すぎない白湯などを、
ゆっくり、少しずつ飲むようにして、水分を補うとよいでしょう。
生理的食塩水や経口補水液での水分補給の仕方は?
ノロウイルスの患者の、下痢や嘔吐などの症状が強く、水分が急激に失われている可能性があるときには、
生理的食塩水や経口補水液(ORS)など、より身体が吸収しやすい形で水分補給をおこなう方がいいでしょう。
[su_box title=”生理的食塩水のつくり方” style=”soft” box_color=”#0c06ec” title_color=”#e5fefe”]
⑴ 500ml入りのペットボトルに、
塩4.5グラム(小さじ1杯弱)を入れる。
⑵ ペットボトル一杯に、水または白湯を入れれば、
生理的食塩水のできあがり。[/su_box]
[su_box title=” 経口補水液(ORS)のつくり方” style=”soft” box_color=”#0c06ec” title_color=”#e5fefe”]
⑴ 500ml入りのペットボトルに、
塩1.5グラム(小さじ4分の1杯)と、
砂糖20グラム(大さじ2杯強)を入れる。
⑵ ペットボトル一杯に、水または白湯を入れれば、
経口補水液(ORS)のできあがり。[/su_box]
栄養補給を兼ねながらの水分補給の仕方は?
そして、少し症状が治まって落ち着いてきたら、
薄めのホットはちみつレモンや、梅干しをまぶしたおかゆなどで、
なるべく胃腸に負担のかからない形で、
栄養補給も兼ねながら、水分補給をおこなうといいでしょう。
この段階でも、病気の時は、
水分補給も栄養補給も、とにかく、こまめに、少量ずつおこなうのがよいでしょう。
例えば、はちみつレモンの場合でしたら、
大きなマグカップ一杯にドカッと一気に作ってしまうのではなく、
分量は小さめのマグカップ一杯分か、大きめのマグカップだったら半分強くらいのイメージで作った方がいいかもしれません。
また、レモンや梅干しには抗菌作用もあり、
病身にはスッと清涼感のある風味が気分的にもよいとはいえ、
酸っぱ過ぎるのは病み上がりの胃腸に刺激が強すぎるので、
香りづけ程度の気持ちで、
入れるのはやや少なめにしておく方がいいでしょう。
具体的な分量で言うと、例えば以下のような分量になるでしょうか。
[su_box title=”薄めのホットはちみつレモンのつくり方” style=”soft” box_color=”#ec1e06″ title_color=”#faff2e”] お湯:180ml(小さめのマグカップ一杯分)
はちみつ:大さじ1杯
レモン果汁:大さじ2分の1杯
[/su_box]
ティースプーンなどでよく混ぜて持って行ってあげると、
病気の患者さんにとって、栄養・水分補給とともに、
ホッと一息つく気分転換にもなり、心理的にも良い効果があると思われます。
看病するときに重要な身体の保温と体力の温存の仕方とは?
これはノロウイルスに限ったことではありませんが、
病気からのスムーズな回復のためには、水分補給のほかに、
身体の保温と体力の温存が重要になります。
人間の免疫力の中核を担うリンパ球は、体温が37℃以上になると活性化し、
反対に、ウイルスの活動は、体温が上がるほど低下するので、
39℃を超えるような高熱にでもならない限り、
身体を温かくしておくことは免疫力にプラスとなり、病気からの回復をスムーズにします。
カイロや大量の布団の重ねがけなどで無理やり汗をかかせるのは、
かえって体力消耗につながってしまう可能性もあるので、あまりお勧めできません。
しかし、部屋を軽く暖めたり、首周りを中心に暖かい服装をしておくことで、
身体を保温し、冷やさないでおくことは、
免疫力向上のメリットが大きいと考えられます。
また、ウイルスと戦い、身体を回復させるためには、
前提として十分な体力の維持が必要となるので、
患者にはなるべく安静にしてもらい、できる限り体力の温存をはかってもらうことが大切です。
病気の患者を看護するときは、物理的な看護や介助と同じくらい、患者への心理的なサポートが重要になります。
次回のシリーズ「ノロウイルス対策⑬」は、ノロウイルス患者を看護する際の心理的なサポートの仕方について、考えてみたいと思います。
まとめ
ノロウイルスの患者を看護するうえで重要なのが、水分補給、身体の保温と体力の温存です。
1時間に1回は、コップ半分くらいの、熱すぎない白湯を、ゆっくり、少しずつ飲むようにして、水分を補うとよいでしょう。
下痢や嘔吐などの症状が強く、水分が急激に失われている場合は、生理的食塩水や経口補水液(ORS)など、より身体が吸収しやすい形で水分補給をおこないます。
少し症状が治まって落ち着いてきたら、薄めのホットはちみつレモンや、梅干しをまぶしたおかゆなどで、栄養補給も兼ねながら水分補給をおこなうといいでしょう。
また、身体の保温と体力の温存も重要です。
部屋を暖めたり、暖かい服装をしてもらうことで身体の保温をはかることと、患者にはなるべく安静にしてもらい、できる限り体力の温存をはかってもらうことが大切です。