プラトンにおける想起説とイデア論と魂の不死の三位一体の関係、プラトンの想起説⑦

前回までの一連のシリーズで書いてきたように、プラトンの中期対話篇である『パイドン』においては、

現実の世界における何らかの経験をきっかけとした連想を通じて、以前には知っていたが、今はすでに忘れてしまっていた知識を改めて思い出す想起(アナムネーシス)と呼ばれる知のあり方についての議論が進められていくことになります。

そして、こうした『パイドン』における想起説の議論では、想起と呼ばれる認識のあり方に基づいて、人間の魂の内にイデアとも呼ばれる普遍的な観念についての知が存在するというイデアの実在性の論証が行われ、

今度は、普遍的な観念としてのイデアの実在性に基づいて、そうした普遍的な観念を有する主体である人間の魂が不死であることの証明がなされるという形で議論が進んでいくことになるのですが、

こうしたプラトンの思想における「想起説」と「イデア論」そして「人間の魂の不死」という三つの概念の間には、それぞれの思想が互いに互いを根拠づけ合うという三位一体の関係があると考えられることになるのです。

スポンサーリンク

プラトンにおける想起説とイデア論と魂の不死の三位一体の関係

プラトンにおける想起説とイデア論と魂の不死の三位一体の関係

前回までの一連のシリーズでは、プラトンの中期対話篇であるパイドンから、想起説に関わる主要な箇所を適宜引用していく形で議論の流れを追ってきましたが、

こうしたパイドンにおける想起説の議論は、この物語の登場人物としてのソクラテスが語る以下のような言葉によってしめくくられることになります。

これらの実在(イデア)が存在することと、われわれの魂がわれわれが生まれる以前にも存在することは、同じ必然性のもとにあり、

これらの実在が存在しなければ、われわれの魂もまたうまれる以前に存在しないのである。

(プラトン『パイドン』76E)

つまり、『パイドン』のこの箇所においては、

想起説の議論を通じて、イデアが実在することと、魂が不死であることが、一方が肯定されれば、他方も必然的に肯定されるという不離一体の関係にあることが語られていると考えられることになります。

そして、

こうした「イデアの実在」と「魂の不死」という二つの概念に、両者の存在を根拠づける理論である「想起説」が加えられることによって、

三者の間には、互いに互いを根拠づけるという関係が成立していると考えられることになるのですが、

こうした「想起説」と「イデア論」そして「魂の不死」という三者の間の関係について、より正確に捉えるとするならば、こうした三つの概念は、

想起説に基づいてイデアの実在性が論証され、イデアの存在に基づいて人間の魂の不死が証明され、さらに、人間の魂が不死であることによって想起説が根拠づけられるという三者の間を循環する三重の根拠づけの関係において成立していると考えられることになります。

つまり、上記の三つの概念は、

まず、想起と呼ばれる知のあり方が、その連想の系列をたどっていくことによって、最終的にイデアについての知識へとたどり着くとする想起説によって、普遍的な観念あるいは生得観念としてのイデアの実在性が論証され、

次に、そうした現実の世界における物理的な経験だけに還元することができない普遍的な観念としてのイデアの存在によって、そうしたイデアについての知を想起する主体である人間の魂の不滅性が証明され、

そしてさらに、そうしたイデアについての知を想起することを可能とする魂の不滅性に基づいて、想起説が根拠づけられるという

三つの概念が円環を結ぶような三位一体の関係において成立していると考えられることになるのです。

 

スポンサーリンク

・・・

以上のように、

プラトンの中期対話篇『パイドン』における想起説の議論では、

想起説によってイデア論が根拠づけられ、イデア論によって魂の不死が根拠づけられ魂の不死によって想起説が根拠づけられるという三つの概念が円環を結ぶような循環構造において議論が成り立っていると考えられることになります。

そして、こうした三者の間の議論の循環構造は、決して、議論全体が循環論法のような誤謬推理へと陥ってしまっているということを意味しているわけではなく、

むしろ、こうした円環を結ぶ三つの議論の一つ一つを吟味していくことによって、三つの概念のそれぞれについての理解が深められていくというように、三つの思想は互いに切り離すことのできない一体の関係にあり、

そういう意味では、「想起説」と「イデア論」と「魂の不死」という三つの思想は、一つの真理を互いに異なる三つの観点から解き明かすという三位一体の関係において成立していると捉えることができると考えられることになるのです。

・・・

初回記事:プラトンの初期対話篇『メノン』における知の探究のパラドックスと想起説の議論①、プラトンの想起説①

前回記事:『パイドン』の想起説に基づく魂の不死および不滅性と永遠性の証明、プラトンの想起説⑥

プラトンのカテゴリーへ

スポンサーリンク

このページの先頭へ