ソドミー法の言葉の由来とは?「ユダの手紙」における堕天使の悪徳と不自然な欲望についての記述

ソドミー法Sodomy Law)とは、古来から主に同性愛者に対して適用されてきた、社会通念上不自然とされる欲望を満たす行為に対する法律規定のことを意味する概念であり、

このソドミーという言葉自体は、旧約聖書に記されている死海南岸にあったと考えられる古代都市であるソドムSodomの町の名に由来する言葉ということになります。

旧約聖書の「創世記」において、ソドムの町は、同じくヨルダン川の流域にあった古代都市であるゴモラの町と共に、悪徳がはびこる悪しき人々が多く住む町であるとされていて、

彼らの行為が神の大いなる怒りに触れたことにより、天から降り注ぐ硫黄の火によって焼き尽くされ、滅ぼされてしまったとされているのですが、

それでは、神の手によってソドムの町が滅ぼされてしまった理由と、ソドムという言葉が同性愛と結びつけて捉えられることになっていった理由はどのようなところにあると考えられることになるのでしょうか?

死海Dead Sea)とは、中東、現在のヨルダンとイスラエルとの国境地帯に位置するヨルダン川の流域にある塩湖であり、その塩分濃度の高さから湖の内部には生物はほとんど存在しないとされています。

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旧約聖書「創世記」におけるソドムの町の罪についての二つの記述

旧約聖書の「創世記」において、ソドムとゴモラの町が滅ぼされこととなった罪に関しては、例えば以下のように記されています。

ソドムの住人は邪悪で、主に対して多くの罪を犯していた。」(『旧約聖書』、「創世記」、13章13節)

「主は言われた。ソドムとゴモラの罪は非常に重い、と訴える叫びが実に大きい。わたしは降(くだ)って行き、彼らの行跡が、果たして、わたしに届いた叫びのとおりかどうか見て確かめよう。」(「創世記」、18章20節~21節)

このように、「創世記」の記述からだけでも、ソドムとゴモラの町に住んでいた人々は多くの罪を犯していて、その罪のために町ごと滅ぼされてしまうことになったということは分かるのですが、

上記「創世記」における二つの記述のいずれについても、ソドムやゴモラという二つの町については、「住民は邪悪」であり、「彼らの罪は非常に重い」といった漠然とした形で記されているだけで、

その罪が具体的にどのようなものであったのか?ということに関する記述については全くと言っていいほど見つけることはできません。

つまり、

「創世記」における聖書の記述からだけでは、ソドムの町の住民たちのいかなる行為が町ごと滅ぼされるだけの大罪とみなされたのか?ということについてはほとんど分からず、そうしたことについて直接的には一切語られていないと考えられることになるのです。

それでは、

ソドムとゴモラの町が滅ぼされてしまった具体的な理由について、いかにして推し測ることができるのか?というと、

それは、上記の記述の前後における「創世記」の内容との整合性や、新約聖書における記述なども含めた聖書全体の記述を通して読み解かれていくことになります。

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新約聖書「ユダの手紙」における堕天使の悪徳と不自然な欲望についての記述

ソドムとゴモラの町が滅ぼされる原因となった罪について、より具体的な形で踏み込んで記述している聖書の箇所としては、

例えば、新約聖書の「ユダの手紙」における以下のような記述が挙げられることになります。

主は民を一度エジプトの地から救い出し、その後、信じなかった者たちを滅ぼされたのです。

一方、自分の領分を守らないでその住まいを見捨ててしまった天使たちを、大いなる日の裁きのために、永遠の鎖で縛り、暗闇の中に閉じ込められました。

ソドムやゴモラ、またその周辺の町は、この天使たちと同じくみだらな行いにふけり不自然な肉の欲の満足を追い求めたので、永遠の火の刑罰を受け、見せしめにされています。

(『新約聖書』、「ユダの手紙」、1章5節~7節)

ここで言う「自分の領分を守らないで、その住まいを見捨ててしまった天使たち」というのは、

神から離反し、その支配に逆らうことによって、世界に善なる徳ではなく、悪徳をはびこらせる悪しき存在へと堕落してしまった天使、すなわち堕天使のことを指す表現であると解釈されることになります。

そして、この部分の聖書の記述では、

ソドムやゴモラの町の人々も、そうした堕天使たちが振りまく悪徳を彼らと同じように身につけ、これを行ったので、

そのために「永遠の火の刑罰」、すなわち、天から降り注ぐ硫黄の火によって町ごと焼き尽くされ、その魂も地獄の業火のもとで焼かれるという永遠の刑罰を受けることになったと説明されているということです。

堕天使や悪魔が司り、それぞれが分有する悪徳というと、まずは、

色欲暴食強欲怠惰憤怒嫉妬傲慢といったキリスト教における七つの大罪がイメージされることになりますが、

上記の「ユダの手紙」における記述の後半部分でも、やはり、こうした七つの大罪の内の一つにあたる「みだらな行い」、「肉の欲」、すなわち、色欲についての批判がなされているということになります。

そして、

この「ユダの手紙」における記述では、色欲についての言及は、単なる「肉の欲」ではなく、わざわざ「不自然な肉の欲」と書かれているので、

一般的には、「ユダの手紙」におけるこの部分の記述に基づいて、ソドムとゴモラの町が滅ぼされる原因となった罪の最たるものは色欲であり、

しかも、それは、単なる通常の意味の色欲ではなく、通常とは異なる欲望のあり方に根差した「不自然な肉の欲」、すなわち、

古来から、社会通念上不自然とされる欲望に根差す行為として扱われてきた同性愛のことを断罪する表現であると解釈されることになるのです。

・・・

以上のように、

ソドムとゴモラの町の滅亡の顛末について記されている旧約聖書の「創世記」自体の記述からだけでは、

これらの町が滅ぼされる原因となった大罪の内容については、具体的に知ることはほとんどできないと考えられることになります。

しかし、

新約聖書の「ユダの手紙」における記述などについても参照することによって、

ソドムとゴモラの町の人々が犯した罪は、神に逆らう堕天使たちが犯した大罪に相当する罪であり、

その中でも、七つの大罪の内の一つである色欲にあたる罪がその最たるものとして挙げられていると考えられることになります。

そして、その色欲としての罪が、単なる肉の欲ではなく、わざわざ「不自然な肉の欲」と記されていることから、

それがキリスト教的世界観に基づく当時の社会通念上は、不自然とされる欲望に根差す行為であるとされてきた同性愛のことを意味する表現であると解釈されることとなり、

以上のような聖書の解釈に基づいて、その罪の大きさから神によって滅ぼされたソドムの町の名が同性愛者のことを断罪する意味で使われるソドミー法といった言葉の由来となっていったと考えられることになるのです。

・・・

次回記事ソドム滅亡の具体的な顛末①パンを食べ地に足をつく天使と数百年を生きる超人たちが生きた時代

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