ソクラテスと実存主義の関係とは?ソクラテスの生きた真理から実存主義における主体的真理へ

19世紀のキルケゴールやニーチェといった思想家に始まる現代哲学の思想運動の一つである実存主義existentialismエグジスタンシャリズム)とは、

ひとことで言うと、

人間の実存、すなわち、現実に存在する人間の主体的なあり方を哲学の中心におく思想ということになります。

そして、

そうした実存主義の思想においては、

万人に共通する固定的な普遍的真理客観的真理ではなく個々の人間自身における個別的真理主体的真理こそが重視され、

そうした個々の人間における生きた真理としての主体的真理を探究することが現代哲学における新たな目標として定められていくことになります。

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ソクラテスにおける普遍的真理の探究と実存主義における個別的真理の探究の違い

それに対して、

紀元前5世紀古代ギリシアの哲学者であるソクラテスの思想は、それが主知主義の哲学であると言われるように、

それは、実存主義においては否定的な形で扱われることが多い、万人に共通する普遍的な知普遍的な真理としての正義といった概念をどこまでも深く掘り下げて探究し、それを追い求めていく思想であったと考えられることになります。

つまり、

ソクラテスの思想では、普遍的真理を重視して、それを追求していくことが哲学の最たる目的とされているのに対して、

キルケゴールやニーチェに始まる実存主義の思想では、そうした普遍的・客観的真理によっては捉え尽くされない個別的・主体的真理を探究することを目指すという点で、両者の思想の方向性は大きく異なっていると考えられるということです。

このように、

ソクラテスの思想実存主義の思想は、一見すると真理の探究のあり方について正反対のことを言っている思想であるようにも見えるのですが、

そうした両者の思想にはどのような共通点があり、どのような点において、古代ギリシアのソクラテスの思想が現代哲学の実存主義の思想へとつながっていったと捉えられることになるのでしょうか?

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ソクラテスにおける生きた真理から実存主義における主体的真理へ

ソクラテスの思想を特徴づける要素としては、普遍的真理を重視する態度と並んで、エレンコスと呼ばれる真理へと迫っていく哲学探究の方法論が挙げられることになります。

エレンコスelenchos)とは、賢者や知恵者と呼ばれているような様々な人々と対話し、彼らの考えを問答法によって論駁していくことによって、自他の知を深く吟味していくというソクラテスの哲学探究のあり方のことを示す概念ですが、

このように、

ソクラテスは、賢者や知恵者と呼ばれる人々から優れた知識を聞いても、そのようにして受動的に得られた知に満足することはなく、

彼らとの対話と論争を通じて自他の知の吟味をするエレンコスによって、そうした知について常に自分の頭で深く考え続けていくことによってのみ真理へと迫っていくことができると考えていたということです。

そして、

こうした人から教えられた知識をそのまま鵜呑みにせずに、自分の頭で考えて深く吟味したうえで、その知を普遍的真理の探求へとつなげていくというソクラテスの哲学探究のあり方は、

先人たちの思想や社会において正しいとされる既存の価値観をそのまま踏襲するのではなく、

自分の頭で考え自らの手で自分にとって正しい主体的な真理を見いだしていくという現代哲学における実存主義の思想にもつながっていくと考えられることになります。

つまり、

哲学探究の営みは、人から教えられた知識をそのまま鵜呑みにする固定的な知識の受容によってなされるものではなく、

自分の頭で主体的に考え抜いたうえで得られる生きた真理にこそ哲学探究の本当の価値があるとした点において、

ソクラテスの思想実存主義の思想の両者には大きな共通点があると考えられるということです。

そして、そういう意味では、

ソクラテスは、上から与えられた借り物の知識で満足するのではなく、自分の頭で納得のいくまで深く考え自らの力によって体得された生きた真理にこそ価値をおき、そうした生きた真理をどこまでも追求し続ける哲学探究の営みに自らの人生のほとんどすべてを捧げたという点において、

ソクラテスは、そうした生きた主体的真理を追究する哲学である実存主義の哲学の先駆者であったとも考えられることになるのです。

・・・

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